2007/08/10

『鹿男あをによし』万城目学

☆☆☆☆



デビュー作『鴨川ホルモー』では文章のくみたてよりも、物語のオモシロさでどんどん読み進んだ記憶があるのだけれど、2作目の『鹿男あをによし』では、すっかり文章がすっきりして、物語を上からきちんと見下ろせているようなオトナな筆に。手練れてきたの? すごい成長した感じ。



大学の狭い世界で身動きがとれなくなった27歳、男。東京から奈良の女子高へ臨時教員としてリフレッシュと言う名の小さな左遷・・・・?



そして彼は選ばれる。春日大社の美しい鹿の運び屋に。とても大事な「目」を狐の運び屋から預かって、鹿に渡すのだ。それを期限内に渡さねば、しっぽを捕まえてるナマズの押さえが緩み、とんでもないことが起こってしまうから。



読み終わるのが残念と思うくらい楽しく読んだ。鹿島大明神の地元関東からやってきた男が、大事な役目を負わされるとか、
舞台になる高校の教師たちの名前が都(長岡、藤岡、大津・・・)から取ってるとか、
主人公がまさに『坊っちゃん』状態で、山嵐のようなお友達もいるし、マドンナもいるし、赤シャツっぽいのもいるとか、
大事な「目」の正体がなかなかわからなくてじりじりしていたら、実は卑弥呼まで関係してるとか、
くすぐられるアイテムが散りばめられていて、たまらんっ



出てくるものすべてに意図があって、ラスト付近でぱちんぱちんとうまくピースが嵌って、絵がどんどん出来てくるあたりも、上手くなったな!と驚く。



私も運び屋になるなら、春日大社の神鹿にご指名いただきたい。あとは鼠か狐。鹿が一番キレイだもん。話するにも目線が近いし。



さらに加わるのが、女子高校の対抗戦。しかも剣道! 和ですね。
高校生のとんがった感じ、一生懸命なところがさわやかに書かれている。わー、青春☆



自分からと、デジタル機器を通してしるしをつけられた姿が見えるってのも面白かった。鏡に映るのは「鹿男」首から上がまさに鹿、だそうだ。イヤだろうよ・・・
フィルムには写らないのに、デジカメには写ってしまうのは機械の発達に神たちがついて来れてないから、って。へりくつっぽいけど、人間ぽい神でよろしいこと。



ただ運ぶだけかと思ったら、日本の存続のための大事な大事な任務だったというのがびっくりのスケールでした。 でもこの場合の日本、には北海道は入ってなさそうです。奥州までだろうなぁ



主人公がすっかりひと皮むけて終わるところなど、きれいにまとめられました。正攻法。



奈良の鹿だけがおじぎしてエサをねだるのは、この鹿ちゃんが教えたらしい。奈良に行ったら、気をつけてみてみよう。





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