2017/12/31

2017 観劇まとめ

1月 「フランケンシュタイン」
2月 「クリエ・ミュージカル・コレクション」
   「ビッグ・フィッシュ」
3月 「クリエ・ミュージカル・コレクション」
4月 「紳士のための愛と殺人の手引き」
   「ハムレット」
   「王家の紋章」
6月 「レ・ミゼラブル」
10月「リチャード3世」
11月「レディ・ベス」
   「ダディ・ロング・レッグズ」
12月「ペール・ギュント」

Live
5月 斉藤和義 雨に歌えば 弾き語りツアー
7月 札響ポップスコンサート ※ゲスト・新妻聖子
9月 新妻聖子 コンサートツアー2017

ストプレのほうが心に残る’17でした。2月に引っ越しもあったし、3月には保護猫を引き取ったこともあって、ぐいぐい見に行かなかったですね。

心に残ったものというと、今年・・・じゃないのに、´16ラストだった「貴婦人の訪問」のほうが印象深いのでした。新作は楽しい軽めの作品になったせいかもしれません。
「王家の紋章」は出演者の熱を感じるので見てるときは楽しいのに、作品をもう一度見たい気持ちになりにくいのが問題。基本、ひとの恋愛に興味ない。恋愛感情より、国王としての苦悩とか国民への愛とか、親子兄弟の絡む情とかが好みなので。だから、同じエジプトなら「アイーダ」が好きですね。

「ダディ」と「クリコレ」Music of the Nightに泣きました。次はいつですか。

ダディは、原作も大好きだったので、見たかったものでした。お二人のキュートさがクリエに満ち、客席も恋の行方を応援しちゃいますね。ジャービーぼっちゃまがこんなに素敵だったなんて、と改めて原作も読み直し。はぁ可愛い!

ちなみに、7-8月は観劇がなかったものの、NHKドラマ「定年女子」で祐一郎さまのご尊顔を拝すことができたので、たいへん心うきうきの期間です。寂しくなかった。

今年ラストの「ペール・ギュント」はとても良かったです。浦井くんの魅力があふれていて、中継したなら放送もぜひー!!

あんまり見てないよと思って書き出したら、結局それなりに上京してました。来年も楽しく観劇したいと思っています。

みなさま良いお年を! ワンワン!



『ペール・ギュント』12/20 2幕は知性が誕生・・・

2幕冒頭、怪しい商売(武器とか麻薬関係)で財をなしたペール・ギュントがマスコミに囲まれてるところから。分かりやすい成金ぽさ全開で良いわ―! 
マルシアや趣里ちゃんも別の役で登場するので、そのへんも楽しかったです。

それにしても、1幕では下半身しか使ってなさそう(言い過ぎ)だったのに、休憩してる間に頭脳が使えるようになっていたなんて。ITバブル長者のようなチャラチャラしてて中身のなさ(偏見)が素敵な浦井ペールです。
もちろん可愛い女の子をホテルに連れ込むはしてると思う・・・

そして、(つながりが見えなかったけれど)預言者となって、娘を誘惑しようとして金品を巻き上げられて彷徨うのでした。
ただ、舞台が現代っぽかったのよね。スイスの銀行とかゲイマン諸島とかに隠し金がありそうだけどなぁと思ったよ。ね。
ま、おとぎ話みたいなハナシだからいいか。

それから、精神病院に行ったのだっけ? そこに入ってる人より、管理してるらしい男のほうがオカシかったのですが、それを恐れているぺールが新鮮。死ぬの嫌なんですね。知らなかった。ふつうのひとみたい・・・

失ってはまた財を成して、最後の旅は飛行機のファーストクラス。莉奈ちゃんのスーツ姿を見るのがすきなので、とても眼福でした。
謎の乗客から声をかけられ、混乱するペール。と、急に飛行機にトラブルがおき、莉奈ちゃんと酸素マスクを取り合い、最後に渡さなかったために彼女は死んでしまいます。

運だけはとてもいいペール、事故では死なず、また一文無しとなって街を彷徨っていると、最後はボタン作りの人に会います。ぺールをボタンにする人だそうです。天国にいけず、ボタンになっちゃうの。

悪いことはしたけど、それほど酷くはないと主張して、待ってくれと懇願。次の十字路まで、と言ってもらい、さてどうするか。

記憶があいまいだけど、ボタン作りさんと(だったよね)浦井ペールがダンスするシーンがありました。浦井くんのこういうダンスはあまり見たことがなかったかも。長い手足が引き立っていて、もっとよく見たかったな。

一体どのシーンだったっけ。基本的に分かりやすい表現、演出で進む中に、抽象的なダンスシーンがあるのがポイントというか、ペールの翻弄されてつつ何かを掴んでいくような不思議なダンスでした。

ところで、子供向けのペール・ギュントでは、ラストは2通りに分かれてました。1、ソールヴェイと仲良く暮らしました。2、ソールヴェイの腕の中で死にました。

どっちなのかなーと思って見ていたら、えー、上記のどちらでもなかった! ボタンになったのか、ならなかったのかも、私にはわかりませんでした。

友達や家族にペールがいたら困るけど、演劇のテーマで見ている分には飽きない人でした。善悪の判断基準を持たず、自分の得になるかどうかだけが軸ってすごい。悪にもなるし善でもあるし、邪気がないのに悪魔っぽくて。

胸を出すのが必要なのかしら・・・と疑問しかなかったけれど、その他はまぁ・・・楽しかったです。小難しい風にしないのも、明快でしたし。

意外と観劇おさめとしては面白かったですね。何より、2017年も浦井くんの役柄が広くて、ますます楽しみに。

2017/12/30

『ペール・ギュント』12/20 濃いめで明瞭 1幕は下半身の導きのまま

@世田谷パブリックシアター
(日韓文化交流企画 世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演)

【原作】ヘンリック・イプセン 
【翻訳】クァク ボクロク
【上演台本・演出】ヤン ジョンウン 
【上演台本翻訳】石川樹里【美術】乘峯雅寛 【照明】小笠原純 
【音楽】国広和毅 【音響】尾崎弘征【衣裳】原まさみ 
【ヘアメイク】鎌田直樹 【ムーブメント】木佐貫邦子
【演出助手】城田美樹 キム ジミン 【舞台監督】北条孝

【出演】浦井健治 趣里 万里紗 莉奈 梅村綾子 辻田暁 岡崎さつき
浅野雅博 石橋徹郎 碓井将大 古河耕史いわいのふ健 今津雅晴 
チョウ ヨンホ キム デジン イ ファジョン キム ボムジン 
ソ ドンオ ユン ダギョン マルシア

【演出】ヤン・ジョンウン

原作を読むひまがなく、児童用に絵本になったものと、簡易版に直してあるものを2冊目を通してから行きました。子供用でも途中がヒドイので、どうやらペールはひどい奴だな、という認識でした。グリークのペール・ギュント組曲も有名なので知ってました。こんなろくでなしのための組曲だったとは!

実際、舞台上のペールはひどかった。悪人ではないのに、人を思いやることがなく自分中心で気分のままにその場その場で生きてる人物でした。

インタビューなどで、 「自分探し」というワードをよく出していたので、今頃自分探し?と疑問でした。少し前の「本当の自分」ということではなくて、生き方を探す旅、うーん、生きることは旅、という言葉のほうが私にはしっくり来た感じです。

ペールがあまりにも(特に1幕)何も考えず「今」自分が有利・得になることしか判断基準がなく、下半身の赴くままに生きていたので、これは「自分」と「他人」の区別すらついてないのでは・・・ どこに「自分探し」が?と疑問符だらけ。

最初に、資産のある村の花嫁を結婚式で奪って楽しんだあとは、もう飽きたってことでポイ。戻れないから自分と結婚してくれとすがる花嫁を足蹴! ひどい。そして花嫁は自分を抱いてくれと服を脱いで上半身裸。え、脱ぐの。それがもう、恥じらいとか1ミリもないモノでしかないオッパイなので、色気の欠片もないの。 
  ペールを誘うならもう少し可愛いほうが・・・と思ったが、そもそもペールがろくでなしなので、どんな色気を出しても結果は同じかもしれませんね。

あと、オッパイ出してたのはトロール王の娘。こちらも下半身の声のままに、楽しそうなペールだった。若干かわいくて、チラッと見せちゃうよと胸を開けてたのでした。

デスメタルなのかしら、ズドーンギュイーンのギターに合わせ、トロールたちとオムツ姿の尻尾を振ったり、たばこを吸う浦井ペール。なかなか悪い男もいい・・・素敵。
サルエルパンツというか、モモンガパンツを履いてぶらぶら歩く浦井くん。ふふふ、ほんとに素敵で! ろくでなしなのに、頬が緩んでしまっていたな。役としては、ちゃんと無邪気で無計画なろくでなしでしたよー。

1幕のラストでは、ずっとペールに愛情を注いでくれた母が亡くなります。マルシアがストプレ初めてって意外すぎたのですが、とても堂々とした母で良かったです。神様にお祈りしたことが通じたのかな。ペールが帰ってきたし、ピンチには鐘を鳴らしたし。

で、ソールヴェイ(趣里ちゃんが可愛くて可愛くて、細くて小柄なのに目を引きます)に君だけは違う・・・、待っててくれと言い残して去っていくのでした。

もちろん、全然帰って来ないんですけど、いつ帰ってくるとは言ってないし、嘘はついてないんですね。ソールヴェイは待っていることを不幸とは思っていないと答えいて、確かに心の満足は側にいるかどうかだけじゃないよねと深く感銘を受けてました(私の夫もほとんど外国にいるので、気持ち分かる!)

1幕は、ほんとに未来もなにもなくて、ただ今を瞬発的に反応だけで生きてるペールですが、母の死とソールヴェイによって、家を建てるという目標を立てます。家かぁ・・・君に最も必要ないものじゃ? 流浪の男の夢は「家」
母の死、実家がなくなったことで、亡き母やソールヴェイに守られるような還るべき家を目指したのかなと思いました。

2017/12/18

『ダディ・ロング・レッグズ』11/14 宝物になりました

@シアタ―クリエ

ジャーヴィス・ペンドルトン/井上芳雄
ジルーシャ・アボット/坂本真綾

脚本・演出/ジョン・ケアード

1か月前の公演を思い出すと、じわーっと涙が出そう。温かくて素敵な作品を見れたことに感謝しかない。全国公演してくれないかな、日本中じゅうで見てもらいたい。

『あしながおじさん』は原作が大好きだったものの、本はもう手元にないし、最後に読んだのは中学生かな?ってくらい前のこと。でも、ラストのジュディの驚き、「ぼくだって気づかなかったの?」のジャービーぼっちゃまの言葉は忘れられません。素直に読んでいたので、ほんと気づかなかった!って思ったものだよ。

で、舞台を見終わって気づいたのは、読んでいた私が子供だったこともあって、ジュディ(=ジルーシャ)側からしか考えなかったんだなぁということ。舞台化にあたり、ジュディの手紙でしか分からないジャーヴィスの「今」も同時に見れるのが素晴らしく素敵・・・

このたび原作をジャーヴィスの視点もいれて読み直すと、本当に舞台と同じように嫉妬したり邪魔したり! 意外と子供っぽいわ。
原作を読み解いて脚本にしたジョン・ケアードに拍手を送りたいです。
読んでた当時、ジュディのこともっと子供のように思っていて、おじさまをすごいおじさまだと思ってました。14歳離れてるって、小学生にとっては大きすぎました。今じゃ全く気にならない年齢差なのが分かるけれども(私も9歳離れてるけど気にならない)。

二人しかいないので、出ずっぱりのお二人は大変でしょうが、大変さを感じさせないキャリアがあります。音楽もシンプルで穏やか、歌声も美しくて。私が見たいものはこういうものだ・・・

ジルーシャは努力できるし前向きでユーモアがあるし、本人もいうけど美人で。女性がはばたく新しい世界に向かっているところが明るくて、応援するしかない可愛い子です。原作と同じように、読者や観客の応援をたくさんもらいながら、大学に通い、自分の人生を歩き始めます。

舞台上で着替えるのも、工夫して生活してるジルーシャらしくて良かったですね。夏服、冬服。作業着スタイル。きちんとしてて可愛かった。

ジャーヴィスはというと、育った家の考えに反発して社会事業をしているけれど、自分自身を広げるのに臆病になっている男性。大変な失恋をして、のくだりは可笑しすぎてお腹がよじれました。芳雄くん可愛さ天井知らずだったわ。そうだったのか・・・
スミスを名乗ってタイプライタをパチパチしてるのも、必死すぎて可愛すぎ。

お着換えは、お帽子なども変化させてました。もちろん知ってるけど、どんなポーズしても芳雄くんカッコいい。で、この役はチャーミングさがポイントなので、非常に愛嬌があるのね。カッコいいのに、普通の男の人っぽくて、そこも良かったな。

人と人が出会って、恋して、信頼しあって、向き合うまでの4年間。ああ、書いてて泣いてますよ私! キューン! 恋ならこういう恋がいいわね・・・

『レディ・ベス』11/13昼夜 3 褒めるとこしかなかった

まとめると、ほとんど祐一郎が出てくるときは祐一郎しかみてないのは変わらず。出てなくても、さっきの祐一郎は素敵だったとか思いめぐらしながら次のシーンをみていたりして、アスカム先生すてき。
いま心に残っているのは祐一郎が優しく強く大きくベスを導く姿ばかり。

ってか、ぜんぶ、褒めるとこしかなかったよ。DVD化ありがとうございます。

他の方のシーンも良かったなぁ・・・と思い出すものの、細かなところよりも、全体の動きや流れが良くなった演出変更だったよねってくらいです。
若手(若手とはいくつまでを指すのでしょうか)のWフェリペと綾ベスの成長がとても楽しみでした。ますますのご活躍を!

落ち着きすぎているのが悩みだったとか・・・(それが和樹の魅力となっていて良かったと思っていますけれど)の、加藤和樹と育三郎のWロビンは、3年の年月で両人ともに男ぶりがますます上がっていました。

初演は断然、和樹ロビン派であったのですが、今回の育三郎も捨てがたい。ちゃらけてるのは表面だけなんだなぁとスッと心に入ってきてくれました。3年前は気づかなくてゴメンよ。

ミュージカルってどんなのって聞かれたら、とりあえずベスのDVD見てもらいたい。TdVも良いと思うんだけど、映像化してくれないからさ。

2017/12/07

『レディ・ベス』11/13昼夜 2 ベスをめぐる人たち

@帝国劇場

■悪だくみコンビ
コメディ要素もあったガーディナーとルナールのやり取りから、可愛い要素は取り去られ、大司教としての立場、スペインの立場を守る代表者になっています。素晴らしきお二人なので、もっと歌ってほしいと思いつつ、この立場でソロは入れられないしね、残念。

「ベスを消せ」ではお口が臭い演出が消えました。好きでしたが、まぁベスには関係ないものね。
その代わり、本気の本気で暗殺しようとしてるのがダイレクトでした。あと、ルナールのほうが国力的にも立場が上なんだなっていうのも、ひしひしと。
一生懸命カトリックを守ろうとするのに、フェリペに邪魔される禅ガーディナーの立場の違いが面白くなりました。

圭吾さん、すごく衣装が重そう・・・(近くでみれて実感)あれでターンしてるのか。お戯れ中のフェリペと球を投げ合いしてて、落とすんじゃないかとハラハラでした。私なら歌いながらとか無理だと思われ。

ガーディナーがワイン飲むかの場面での圭吾さんの、いちおうフォロー、でも失敗したあとの変わり身が早くて最高です。

死にそうになっていく禅さん、ほんとに死にそうで息が詰まりました。「人を呪わば穴二つ・・・」と唱えてしまう。

ワイングラス、Wフェリペ王子は前回よりたくらみに気づいたなっていう雰囲気を感じました。

古川くんは、全体的にひょうひょうとした感じなのではっきりはしないけど、ひょうひょうとしてるのは表面上だけなのね、というのは分かっているので、おそらくこの王子なら気づいただろうと思われます。

平方王子は、顔つきがピンと来たぞになったので間違いないな。分かっててお勧めしてますのお顔でした。楽しい。そのあと、ベスにクールに対応されて若干悲し気になるのも可愛い王子でした。ここも、初演のときは女性として、という視線があったように思うけれど、今回はそこまでのものは感じませんでした。この人がエリザベス、という関心で見ている感じでしょうか。

■アン・ブーリン
いいわーという感想しかないくらい良かったです。はー、素敵だった。衣装が(当時の肖像画のまま)素敵なのはもちろん、声、仕草、ぜんぶ素敵・・・ 
セットの大きな丸い環をバックに静かに立つアン・ブーリン。絵になりすぎて、絵だった。
ねぇ。アン・ブーリンのコスプレしたいんですけど。

ベスの心の声であり、母の亡霊のようでもあり、そのどちらでもあるような立ち位置であったと思います。
「陛下だけに愛を捧げた」ベスが母に向ける態度や言葉を、より向き合おうとしていく様子が描かれたため、同じ立場に置かれた母子二人が重なっていくようで、それが憎んだ母を理解していく過程となっているのですね。
初演のときも、「愛」を語っていたはずなのに受けるベスの表現が少し変わるだけでこんなに違うものかー(セリフでは同じなのに不思議)

これまで、人づてに聞いてきたであろう母の評判を排して、自分と母の関係を見つめ直す過程が、大人になる道のひとつになった
「愛」と一言でいっても、ヘンリー8世への愛もあったし、そして何より幼いベスへの愛ですよね。何もしてやれないけど、見守っているのあたりで、胸が熱くなります。ぐすん。