@帝国劇場
ジャン・バルジャン/福井晶一 ジャベール/岸祐二
ファンテーヌ/二宮 愛 エポニーヌ/唯月ふうか
マリウス/内藤大希 コゼット/生田絵梨花
テナルディエ/橋本じゅん マダム・テナルディエ/鈴木ほのか
アンジョルラス/上山竜治
ガブローシュ/廣田礼王恩 リトル・コゼット/采本珠彩
リトル・エポニーヌ/山崎瑠奈
指揮:若林裕治
冒頭、波がザバーンと映し出されて波音がするのをみて、そうだった、新演出ってこうだった。もう草むしり(ほんとは道路工事? 祐一郎バルジャンそんな感じだったから)もうしないんだった。
・・・とここですでに回顧気分に陥る。
良し悪しの問題じゃなくて、好みなんだろうというのは分かっているが、映画みてから新演出を見たので、だったら映画見ればいいのにねーとつい言いたくなる旧版好き。
盆がくるくるしてる奥へしゃーっと捌けていくジャベール(死体)好きだし、アンジョルラスは砦にひっかかってて欲しいし(拍手しないけど)、銀の燭台を1幕ラストで握りしめてほしいし!
福井バルジャンに会いたかったので、そこは満足。岸ジャベが想像以上に素晴らしかったのも良かったです。
福井さん、体育会系アニキなんですが、案外怒りや絶望は抑えめかなーと。
音楽のテンポが一定というか、タメたりしないんですね。そのせいで、燭台盗むまでも一気に流れてきて、司教に救われて生きなおす、までの流れ、見慣れてるはずの私ですが、少々気持ちが置いてけぼりになりました。観劇日の体調も関係するとは思いますが、どうでしょうか。
コゼットに対しても、父親というよりでかいアニキだなぁ 婚礼日のよぼよぼも、若いなと思って見てました。召された後、一気に壮年くらいにシャキッと若返ったのが可愛かったです。
コゼットへの愛情、ファンテーヌへの後悔と責任感、ジャベールへの理解・共感はとてもしみましたので、福井さんらしさ、はこれからどんどん作っていってほしいところです。砦ではかなり役立ってそうに見えます。
岸ジャベも、さぞ似合うだろうと思っての初見。体格も良いし、声の出し方もこれまでの警官としての儀礼感が大いにあふれるジャベに比べ、非常に普通の人間でした(褒めている!)
演出がリアル寄りに来てるので、ジャベールもこういう風に変化するのかしら。特別な人じゃなくて、その運命のなかにあってもがく人、という感じ。よりどころを見失ってからの自殺への流れも理解できてしまう、素晴らしい演技でした。いいわー。
女性たち、たち。全体的に細めなメンバでしたか。ふうかちゃん元気で良かった。いじらしいエポニーヌでした。
ファンテーヌは声も細めながら、コゼットを育てる母の逞しさを奥に秘めてました。
コゼットはアイドルの生田さんかーと思ってみてましたが、この役は、正直にかわいく音程を外さなければ大きく失敗しないはずなので、そのなかでしっかりやっていた感じ。可愛いマリウスをリードしてお家を切り盛りできるやり手マダムになれると思われます。
マリウス、バルジャン屋敷に忍び込むときの、ぴょーんターンは全員やってるのですか? びっくりした。この人でいいの?コゼット? と心配になるわ。
生き残るのも分かる純真なボンボンでした。子供っぽいかな。
アンジョルラス、上山さんは大きいのね・・・ 舞台映えするのに、あの死がカットされるのがもったいないなぁ マリウスラブ度はそんなに激しく出てませんでした。
それより、グランテールのガブローシュ愛は分かりやすくなった気も。菊地まさはるさん、ちょいちょいガブちゃん可愛いのを好演。死んで悲しい。弾薬放り投げるのも好きだったのに・・・残してほしかったわぁぁぁー
テナルディエは橋本じゅんさん、宿屋をやめてからのほうがじゅんさんらしさが出ていて良かったです。わりといい子にしてたな。宿屋のとこは手拍子なかったのですが、何となく手拍子したい気分にならなかった。なんでだろう。うん、ここまでもスルスル水のように物語が流れてくるからだなー。
テナ妻、けっこう夫のこと好きなのか? って思うような雰囲気があって不思議。なんだかんだ、お似合いなのだった。二人ともキレイというか、見た目じゃなくて、神様なんか知らないという倫理観がない感じが薄いの。
演出が変化してるのは時代の流れなのかのう?
でも、音楽は変わらず美しかった。ここが見どころですよーという間もなく、ずんずん話が展開していきました。
バルジャンが神の国へ、のシーン。ライトの使い方の違いかもしれないんですが、余韻にひたる時間がすくなく。祐一郎バルジャンの死に方が美しかったことを思い出します。ほんとに召された感すごかったし、天国に行くのだなって。
新演出では、司教が迎えに来て、バルジャンがお辞儀するの・・・・なので、肉体感が払しょくできない。会社の偉い人にお辞儀してるみたいに見えるので(何せ福井さん死んだらおじいちゃんから壮年に戻って元気そうだし)、あのシーンもうちょっと麗々しさというか、荘厳さを付け足してください。
私の好きな旧版は、いつまでもこの心のなかで輝くでしょう。しくしく。
これはこれで悪くない。でも悪くないっていうだけ。