筧昌也:脚本、監督 2008年 113分 伊坂幸太郎:原作
金城武 小西真奈美 富司純子
光石研 石田卓也 村上淳 田中哲司 吹越満
☆☆☆☆ (試写)
何となく、原作の雰囲気も伝わるような・・・未読ですが、そんな感じ。伊坂節にあふれてました。
普通の言葉をつかって、ちょっと斜めなフリをして、すごくまっとうなものの見方をしているセリフが連発されて。気持ちよかったー。
■死神役の金城武が、浮世離れした(ヘンな人ってことじゃないですヨ)雰囲気をぽわんと漂わせているのが、ちょこっと賢い犬のようでかわいらしいのでした。この死神は犬と一緒に仕事しているし、本人も犬っぽい。
無垢な目で見られたら、素直になってしまうわ。
金城武の演技って、熱演一歩手前(演技派と感じたことがなく・・・ケホケホ)という印象があったんですが、今回はその雰囲気がかえって死神に合ってます。とても良い低い声で、イントネーションの起伏が少なめの話し方、うんうん、浮世離れしてて良いです。
彼の仕事は、ターゲットが死ぬべきかどうか(=使命を果たしたかどうか)を判定すること。実行か、見送りか。千葉は判定のためにターゲットの話を聞いてみます。
ターゲットと話をするわりに、相手とは一定の距離を保っていて、そのクールすぎず熱くもなく、という距離感がにくい!
それからターゲットの住む世界、時代に合わせて服装や髪形が変化。金城武3変化。
どれもサマになっているけど、ヤクザ(光石研)に合わせたときの雰囲気がアントニオ・バンデラスだよなぁぁ 色気抜きのバンデラス・・・
死ぬことは、当たり前だけど大切なこと。太陽みたいに。
誰にでも訪れる死。死神のターゲットの三人は、それぞれ「生」の輝きを見せてくれます。死だけを、生だけを見ることはできません。光と影みたいに、対になって両方がくっきりと見えるのです。
作品も、死神の仕事へのスタンスのように、観客に押し付けるでもなくクールにふるまうでなく、ほんのり胸の奥底が温かくなる仕上がりでした。
生きろと声高に言わなくとも、死ぬな、と言わなくとも、生きてる輝きが元気をくれる。ここにはさりげない優しさがあります。
■3つの時代に生きるターゲットが登場、それぞれを表現するのに「音楽」ミュージック、が使われてます。
ミュージックをこよなく愛している死神(たち)が、CDショップの視聴用ヘッドフォンでふんふんふん♪と音楽を聴いている様子が、たまらなく幸せそうでしたー。金城武がやたらかわいく頭を左右にふりながら聴いてる様子といったら。うう。かわいい。
そして、嶋田久作氏をその向こうにみたときには笑いました・・・・彼は死神っぽいな。
■みにくくない。
自分は「醜い」と言った藤木(小西真奈美)に、「見難くない。よく見える」と答える死神千葉。ねー、こういうのが小憎らしいわけだ。分かってて、はぐらかしたとも思えないくらいの天然炸裂です。いいキャラだ。
階段を落ちかける藤木を庇って下敷きになった時とかー、白手袋をはめた手で藤木の手を引いて街を駆け抜けるとかー、ヤクザに捕まって携帯番号を機械っぽく言うとことかー、見事すぎるボウリングのフォームとかー、いやもうかわいいシーンばかり。
見た目が良いってことがあまり関係のないところで、良さが発揮されているあたりも、私の好みでして。きゃー
■絵も音楽もキマっている。
偶然っぽいものは全然なくて、隅々まで監督の目が行き届き、ピタリとはめてきたなぁという映像でした。音楽も気づいたら流れてた?という奥ゆかしいもので、好印象。
■小西真奈美と富司純子
小西真奈美の藤木という役は、幸薄い人生に見舞われていて死にたくなったこともあった人だけど、だからこそ生きる気持ちが実は強い。人の死の近くにいたらから、幸福について意志的に行動できたんだと思います。
富司純子の役は、死神(千葉)が来たことを分かった上で、最後にしたいことが分かっていて、それを実行する強さのある人。最近見る映画には本当によく出演してますが、美しい人ですよねぇ・・・ 娘にも負けないきりりとした存在感にあふれてました。
■試写会に、筧監督と小西真奈美が舞台挨拶に♪
知らなかったのよー、だから後方席に座ってしまった。残念! でも、目を必死に見開いて見た小西真奈美はとてもかわいかったです。見たことないくらいの小顔・・・細いけどがりがりって感じじゃないのも、いいですよね。
役の「藤木一恵」名義で劇中歌を歌ってます。CD(Sunny Day)も発売だそう。歌は、あの声なのでかわいらしく。
監督も思ってたより若い方のようで、これからが楽しみ。
原作を読んだとき、「オレのためにある本だ!」と思ったらしい。自分が考えていることが書いてある、と思ったとか。思い立ってから3年かかって仕上がったとのことでした。