2017/12/31

2017 観劇まとめ

1月 「フランケンシュタイン」
2月 「クリエ・ミュージカル・コレクション」
   「ビッグ・フィッシュ」
3月 「クリエ・ミュージカル・コレクション」
4月 「紳士のための愛と殺人の手引き」
   「ハムレット」
   「王家の紋章」
6月 「レ・ミゼラブル」
10月「リチャード3世」
11月「レディ・ベス」
   「ダディ・ロング・レッグズ」
12月「ペール・ギュント」

Live
5月 斉藤和義 雨に歌えば 弾き語りツアー
7月 札響ポップスコンサート ※ゲスト・新妻聖子
9月 新妻聖子 コンサートツアー2017

ストプレのほうが心に残る’17でした。2月に引っ越しもあったし、3月には保護猫を引き取ったこともあって、ぐいぐい見に行かなかったですね。

心に残ったものというと、今年・・・じゃないのに、´16ラストだった「貴婦人の訪問」のほうが印象深いのでした。新作は楽しい軽めの作品になったせいかもしれません。
「王家の紋章」は出演者の熱を感じるので見てるときは楽しいのに、作品をもう一度見たい気持ちになりにくいのが問題。基本、ひとの恋愛に興味ない。恋愛感情より、国王としての苦悩とか国民への愛とか、親子兄弟の絡む情とかが好みなので。だから、同じエジプトなら「アイーダ」が好きですね。

「ダディ」と「クリコレ」Music of the Nightに泣きました。次はいつですか。

ダディは、原作も大好きだったので、見たかったものでした。お二人のキュートさがクリエに満ち、客席も恋の行方を応援しちゃいますね。ジャービーぼっちゃまがこんなに素敵だったなんて、と改めて原作も読み直し。はぁ可愛い!

ちなみに、7-8月は観劇がなかったものの、NHKドラマ「定年女子」で祐一郎さまのご尊顔を拝すことができたので、たいへん心うきうきの期間です。寂しくなかった。

今年ラストの「ペール・ギュント」はとても良かったです。浦井くんの魅力があふれていて、中継したなら放送もぜひー!!

あんまり見てないよと思って書き出したら、結局それなりに上京してました。来年も楽しく観劇したいと思っています。

みなさま良いお年を! ワンワン!



『ペール・ギュント』12/20 2幕は知性が誕生・・・

2幕冒頭、怪しい商売(武器とか麻薬関係)で財をなしたペール・ギュントがマスコミに囲まれてるところから。分かりやすい成金ぽさ全開で良いわ―! 
マルシアや趣里ちゃんも別の役で登場するので、そのへんも楽しかったです。

それにしても、1幕では下半身しか使ってなさそう(言い過ぎ)だったのに、休憩してる間に頭脳が使えるようになっていたなんて。ITバブル長者のようなチャラチャラしてて中身のなさ(偏見)が素敵な浦井ペールです。
もちろん可愛い女の子をホテルに連れ込むはしてると思う・・・

そして、(つながりが見えなかったけれど)預言者となって、娘を誘惑しようとして金品を巻き上げられて彷徨うのでした。
ただ、舞台が現代っぽかったのよね。スイスの銀行とかゲイマン諸島とかに隠し金がありそうだけどなぁと思ったよ。ね。
ま、おとぎ話みたいなハナシだからいいか。

それから、精神病院に行ったのだっけ? そこに入ってる人より、管理してるらしい男のほうがオカシかったのですが、それを恐れているぺールが新鮮。死ぬの嫌なんですね。知らなかった。ふつうのひとみたい・・・

失ってはまた財を成して、最後の旅は飛行機のファーストクラス。莉奈ちゃんのスーツ姿を見るのがすきなので、とても眼福でした。
謎の乗客から声をかけられ、混乱するペール。と、急に飛行機にトラブルがおき、莉奈ちゃんと酸素マスクを取り合い、最後に渡さなかったために彼女は死んでしまいます。

運だけはとてもいいペール、事故では死なず、また一文無しとなって街を彷徨っていると、最後はボタン作りの人に会います。ぺールをボタンにする人だそうです。天国にいけず、ボタンになっちゃうの。

悪いことはしたけど、それほど酷くはないと主張して、待ってくれと懇願。次の十字路まで、と言ってもらい、さてどうするか。

記憶があいまいだけど、ボタン作りさんと(だったよね)浦井ペールがダンスするシーンがありました。浦井くんのこういうダンスはあまり見たことがなかったかも。長い手足が引き立っていて、もっとよく見たかったな。

一体どのシーンだったっけ。基本的に分かりやすい表現、演出で進む中に、抽象的なダンスシーンがあるのがポイントというか、ペールの翻弄されてつつ何かを掴んでいくような不思議なダンスでした。

ところで、子供向けのペール・ギュントでは、ラストは2通りに分かれてました。1、ソールヴェイと仲良く暮らしました。2、ソールヴェイの腕の中で死にました。

どっちなのかなーと思って見ていたら、えー、上記のどちらでもなかった! ボタンになったのか、ならなかったのかも、私にはわかりませんでした。

友達や家族にペールがいたら困るけど、演劇のテーマで見ている分には飽きない人でした。善悪の判断基準を持たず、自分の得になるかどうかだけが軸ってすごい。悪にもなるし善でもあるし、邪気がないのに悪魔っぽくて。

胸を出すのが必要なのかしら・・・と疑問しかなかったけれど、その他はまぁ・・・楽しかったです。小難しい風にしないのも、明快でしたし。

意外と観劇おさめとしては面白かったですね。何より、2017年も浦井くんの役柄が広くて、ますます楽しみに。

2017/12/30

『ペール・ギュント』12/20 濃いめで明瞭 1幕は下半身の導きのまま

@世田谷パブリックシアター
(日韓文化交流企画 世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演)

【原作】ヘンリック・イプセン 
【翻訳】クァク ボクロク
【上演台本・演出】ヤン ジョンウン 
【上演台本翻訳】石川樹里【美術】乘峯雅寛 【照明】小笠原純 
【音楽】国広和毅 【音響】尾崎弘征【衣裳】原まさみ 
【ヘアメイク】鎌田直樹 【ムーブメント】木佐貫邦子
【演出助手】城田美樹 キム ジミン 【舞台監督】北条孝

【出演】浦井健治 趣里 万里紗 莉奈 梅村綾子 辻田暁 岡崎さつき
浅野雅博 石橋徹郎 碓井将大 古河耕史いわいのふ健 今津雅晴 
チョウ ヨンホ キム デジン イ ファジョン キム ボムジン 
ソ ドンオ ユン ダギョン マルシア

【演出】ヤン・ジョンウン

原作を読むひまがなく、児童用に絵本になったものと、簡易版に直してあるものを2冊目を通してから行きました。子供用でも途中がヒドイので、どうやらペールはひどい奴だな、という認識でした。グリークのペール・ギュント組曲も有名なので知ってました。こんなろくでなしのための組曲だったとは!

実際、舞台上のペールはひどかった。悪人ではないのに、人を思いやることがなく自分中心で気分のままにその場その場で生きてる人物でした。

インタビューなどで、 「自分探し」というワードをよく出していたので、今頃自分探し?と疑問でした。少し前の「本当の自分」ということではなくて、生き方を探す旅、うーん、生きることは旅、という言葉のほうが私にはしっくり来た感じです。

ペールがあまりにも(特に1幕)何も考えず「今」自分が有利・得になることしか判断基準がなく、下半身の赴くままに生きていたので、これは「自分」と「他人」の区別すらついてないのでは・・・ どこに「自分探し」が?と疑問符だらけ。

最初に、資産のある村の花嫁を結婚式で奪って楽しんだあとは、もう飽きたってことでポイ。戻れないから自分と結婚してくれとすがる花嫁を足蹴! ひどい。そして花嫁は自分を抱いてくれと服を脱いで上半身裸。え、脱ぐの。それがもう、恥じらいとか1ミリもないモノでしかないオッパイなので、色気の欠片もないの。 
  ペールを誘うならもう少し可愛いほうが・・・と思ったが、そもそもペールがろくでなしなので、どんな色気を出しても結果は同じかもしれませんね。

あと、オッパイ出してたのはトロール王の娘。こちらも下半身の声のままに、楽しそうなペールだった。若干かわいくて、チラッと見せちゃうよと胸を開けてたのでした。

デスメタルなのかしら、ズドーンギュイーンのギターに合わせ、トロールたちとオムツ姿の尻尾を振ったり、たばこを吸う浦井ペール。なかなか悪い男もいい・・・素敵。
サルエルパンツというか、モモンガパンツを履いてぶらぶら歩く浦井くん。ふふふ、ほんとに素敵で! ろくでなしなのに、頬が緩んでしまっていたな。役としては、ちゃんと無邪気で無計画なろくでなしでしたよー。

1幕のラストでは、ずっとペールに愛情を注いでくれた母が亡くなります。マルシアがストプレ初めてって意外すぎたのですが、とても堂々とした母で良かったです。神様にお祈りしたことが通じたのかな。ペールが帰ってきたし、ピンチには鐘を鳴らしたし。

で、ソールヴェイ(趣里ちゃんが可愛くて可愛くて、細くて小柄なのに目を引きます)に君だけは違う・・・、待っててくれと言い残して去っていくのでした。

もちろん、全然帰って来ないんですけど、いつ帰ってくるとは言ってないし、嘘はついてないんですね。ソールヴェイは待っていることを不幸とは思っていないと答えいて、確かに心の満足は側にいるかどうかだけじゃないよねと深く感銘を受けてました(私の夫もほとんど外国にいるので、気持ち分かる!)

1幕は、ほんとに未来もなにもなくて、ただ今を瞬発的に反応だけで生きてるペールですが、母の死とソールヴェイによって、家を建てるという目標を立てます。家かぁ・・・君に最も必要ないものじゃ? 流浪の男の夢は「家」
母の死、実家がなくなったことで、亡き母やソールヴェイに守られるような還るべき家を目指したのかなと思いました。

2017/12/18

『ダディ・ロング・レッグズ』11/14 宝物になりました

@シアタ―クリエ

ジャーヴィス・ペンドルトン/井上芳雄
ジルーシャ・アボット/坂本真綾

脚本・演出/ジョン・ケアード

1か月前の公演を思い出すと、じわーっと涙が出そう。温かくて素敵な作品を見れたことに感謝しかない。全国公演してくれないかな、日本中じゅうで見てもらいたい。

『あしながおじさん』は原作が大好きだったものの、本はもう手元にないし、最後に読んだのは中学生かな?ってくらい前のこと。でも、ラストのジュディの驚き、「ぼくだって気づかなかったの?」のジャービーぼっちゃまの言葉は忘れられません。素直に読んでいたので、ほんと気づかなかった!って思ったものだよ。

で、舞台を見終わって気づいたのは、読んでいた私が子供だったこともあって、ジュディ(=ジルーシャ)側からしか考えなかったんだなぁということ。舞台化にあたり、ジュディの手紙でしか分からないジャーヴィスの「今」も同時に見れるのが素晴らしく素敵・・・

このたび原作をジャーヴィスの視点もいれて読み直すと、本当に舞台と同じように嫉妬したり邪魔したり! 意外と子供っぽいわ。
原作を読み解いて脚本にしたジョン・ケアードに拍手を送りたいです。
読んでた当時、ジュディのこともっと子供のように思っていて、おじさまをすごいおじさまだと思ってました。14歳離れてるって、小学生にとっては大きすぎました。今じゃ全く気にならない年齢差なのが分かるけれども(私も9歳離れてるけど気にならない)。

二人しかいないので、出ずっぱりのお二人は大変でしょうが、大変さを感じさせないキャリアがあります。音楽もシンプルで穏やか、歌声も美しくて。私が見たいものはこういうものだ・・・

ジルーシャは努力できるし前向きでユーモアがあるし、本人もいうけど美人で。女性がはばたく新しい世界に向かっているところが明るくて、応援するしかない可愛い子です。原作と同じように、読者や観客の応援をたくさんもらいながら、大学に通い、自分の人生を歩き始めます。

舞台上で着替えるのも、工夫して生活してるジルーシャらしくて良かったですね。夏服、冬服。作業着スタイル。きちんとしてて可愛かった。

ジャーヴィスはというと、育った家の考えに反発して社会事業をしているけれど、自分自身を広げるのに臆病になっている男性。大変な失恋をして、のくだりは可笑しすぎてお腹がよじれました。芳雄くん可愛さ天井知らずだったわ。そうだったのか・・・
スミスを名乗ってタイプライタをパチパチしてるのも、必死すぎて可愛すぎ。

お着換えは、お帽子なども変化させてました。もちろん知ってるけど、どんなポーズしても芳雄くんカッコいい。で、この役はチャーミングさがポイントなので、非常に愛嬌があるのね。カッコいいのに、普通の男の人っぽくて、そこも良かったな。

人と人が出会って、恋して、信頼しあって、向き合うまでの4年間。ああ、書いてて泣いてますよ私! キューン! 恋ならこういう恋がいいわね・・・

『レディ・ベス』11/13昼夜 3 褒めるとこしかなかった

まとめると、ほとんど祐一郎が出てくるときは祐一郎しかみてないのは変わらず。出てなくても、さっきの祐一郎は素敵だったとか思いめぐらしながら次のシーンをみていたりして、アスカム先生すてき。
いま心に残っているのは祐一郎が優しく強く大きくベスを導く姿ばかり。

ってか、ぜんぶ、褒めるとこしかなかったよ。DVD化ありがとうございます。

他の方のシーンも良かったなぁ・・・と思い出すものの、細かなところよりも、全体の動きや流れが良くなった演出変更だったよねってくらいです。
若手(若手とはいくつまでを指すのでしょうか)のWフェリペと綾ベスの成長がとても楽しみでした。ますますのご活躍を!

落ち着きすぎているのが悩みだったとか・・・(それが和樹の魅力となっていて良かったと思っていますけれど)の、加藤和樹と育三郎のWロビンは、3年の年月で両人ともに男ぶりがますます上がっていました。

初演は断然、和樹ロビン派であったのですが、今回の育三郎も捨てがたい。ちゃらけてるのは表面だけなんだなぁとスッと心に入ってきてくれました。3年前は気づかなくてゴメンよ。

ミュージカルってどんなのって聞かれたら、とりあえずベスのDVD見てもらいたい。TdVも良いと思うんだけど、映像化してくれないからさ。

2017/12/07

『レディ・ベス』11/13昼夜 2 ベスをめぐる人たち

@帝国劇場

■悪だくみコンビ
コメディ要素もあったガーディナーとルナールのやり取りから、可愛い要素は取り去られ、大司教としての立場、スペインの立場を守る代表者になっています。素晴らしきお二人なので、もっと歌ってほしいと思いつつ、この立場でソロは入れられないしね、残念。

「ベスを消せ」ではお口が臭い演出が消えました。好きでしたが、まぁベスには関係ないものね。
その代わり、本気の本気で暗殺しようとしてるのがダイレクトでした。あと、ルナールのほうが国力的にも立場が上なんだなっていうのも、ひしひしと。
一生懸命カトリックを守ろうとするのに、フェリペに邪魔される禅ガーディナーの立場の違いが面白くなりました。

圭吾さん、すごく衣装が重そう・・・(近くでみれて実感)あれでターンしてるのか。お戯れ中のフェリペと球を投げ合いしてて、落とすんじゃないかとハラハラでした。私なら歌いながらとか無理だと思われ。

ガーディナーがワイン飲むかの場面での圭吾さんの、いちおうフォロー、でも失敗したあとの変わり身が早くて最高です。

死にそうになっていく禅さん、ほんとに死にそうで息が詰まりました。「人を呪わば穴二つ・・・」と唱えてしまう。

ワイングラス、Wフェリペ王子は前回よりたくらみに気づいたなっていう雰囲気を感じました。

古川くんは、全体的にひょうひょうとした感じなのではっきりはしないけど、ひょうひょうとしてるのは表面上だけなのね、というのは分かっているので、おそらくこの王子なら気づいただろうと思われます。

平方王子は、顔つきがピンと来たぞになったので間違いないな。分かっててお勧めしてますのお顔でした。楽しい。そのあと、ベスにクールに対応されて若干悲し気になるのも可愛い王子でした。ここも、初演のときは女性として、という視線があったように思うけれど、今回はそこまでのものは感じませんでした。この人がエリザベス、という関心で見ている感じでしょうか。

■アン・ブーリン
いいわーという感想しかないくらい良かったです。はー、素敵だった。衣装が(当時の肖像画のまま)素敵なのはもちろん、声、仕草、ぜんぶ素敵・・・ 
セットの大きな丸い環をバックに静かに立つアン・ブーリン。絵になりすぎて、絵だった。
ねぇ。アン・ブーリンのコスプレしたいんですけど。

ベスの心の声であり、母の亡霊のようでもあり、そのどちらでもあるような立ち位置であったと思います。
「陛下だけに愛を捧げた」ベスが母に向ける態度や言葉を、より向き合おうとしていく様子が描かれたため、同じ立場に置かれた母子二人が重なっていくようで、それが憎んだ母を理解していく過程となっているのですね。
初演のときも、「愛」を語っていたはずなのに受けるベスの表現が少し変わるだけでこんなに違うものかー(セリフでは同じなのに不思議)

これまで、人づてに聞いてきたであろう母の評判を排して、自分と母の関係を見つめ直す過程が、大人になる道のひとつになった
「愛」と一言でいっても、ヘンリー8世への愛もあったし、そして何より幼いベスへの愛ですよね。何もしてやれないけど、見守っているのあたりで、胸が熱くなります。ぐすん。

2017/11/20

『レディ・ベス』11/13昼夜 アスカム先生登場だけで泣く

@帝国劇場


レディ・ベス/花總まり ロビン・ブレイク/加藤和樹
メアリー・チューダー/吉沢梨絵 フェリペ/平方元基
リトル・ベス/斉藤栄万 リトル・メアリー/桑原愛佳


レディ・ベス/平野綾 ロビン・ブレイク/山崎育三郎
メアリー・チューダー/未来優希 フェリペ/古川雄大
リトル・ベス/山田檸音 リトル・メアリー/桑原愛佳

ロジャー・アスカム/山口祐一郎 キャット・アシュリー/涼風真世
アン・ブーリン/和音美桜
シモン・ルナール/吉野圭吾 ガーディナー/石川禅

いつぶりだったか、昼は最前列(上手際のA列)
オペラなしで見える、見えるー! 照明とか床のキレイさは見れませんが、美しい人々を見上げました。

昼公演の冒頭、目の前のアスカム先生が歌い始めると感情が高ぶってしまい、目に涙がにじんで先生のお顔が良く見えません。必死にこらえる私。何でベスの生い立ちを説明してるだけなのに、泣けてくるのか自分でもさっぱり訳が分からないのですけれど。
・・・祐一郎が歌ってるだけでうれし泣き。
お美しすぎて、日ごろ磨いた妄想パワーを発揮しているのかと自分を疑ってしまいました。たぶん、あの日見た祐一郎は本物!

夜は1階A席センターだったので、全体をまんべんなく鑑賞。美しい照明も楽しめました。アン・ブーリンが登場する場面では、いつも絵画のようで見惚れます。アン・ブーリンのコスプレ写真撮ってみたい。

■演出の流れがまっすぐ
今回の公演は前回から歌詞と演出が手直しされ、新曲も追加されました。見終わっての感想は、より“女王となる”ベスの成長譚として見やすくなった、です。
アスカム先生がベスの思想に大きな影響を与え、国王へと導いたことも、よりまっすぐ伝わるようになりました。

愛か天命かという二者一択にみえて、終わってから見直せば、なるべくして成った宿命のような流れを補強したのかなと感じました。占星術のイメージともうまく合います。

それぞれのキャストが前回とはまた違った姿を見れたのも良かった。アスカム先生はかもす雰囲気がすっごい若くなった。現役の颯爽とした学者、見たところ40歳くらいじゃないかと思ったんですが。若いわ。キャット様と共にベスを親代わりのように見守って導いていきます。

■ヘンリー8世より威厳がある、アスカム先生問題
祐一郎だから仕方ないのか。ヘンリー8世はセリフもないしマイムだけなので、威厳といっても難しい?
ベスが(おそらく)世界一の王だと崇拝するヘンリー8世、ちょっと仮装大会じみて見えて、その前で静かに歌う祐一郎の大きさに負けていた。たぶん前側に立ったのが悪かったの。ごめんねヘンリー8世。祐一郎が大きすぎて。

思うに、アン・ブーリンの登場のときみたいに、暗くして夢っぽく演出したほうが仮装大会っぽさが払拭できるのではないかと。

そして若いんですけど、どうしたの。キャット様とパリ―チーム・ベス体制

■ベスを演じる
花ベスと綾ベスを比べてみると、なのですが。今回は綾ちゃんのほうが素のままで作品に合っています。若く自分が何者であるかを見つけるヒロインとしては、ご自身の舞台俳優としての成長とベスの成長が無理なく合致しました。

初演時、張りつめた懸命さで、慣れて余裕が出ればもっと良いベスになれそうと感じましたが、それを今見せてもらったと思います。自信がついたのかな。若さを演じなくても、そのままで良いのも強みでした。今だからこそ、という役に出会ったということですね。

花總ベスは、初演時にはキャリアの重みが発揮され、王女とした育ち、女王となるべくして成った女性を可憐に演じていましたが、20歳そこそこのこれから世界に出ていく女性を演じる時に、テーマである自分が何者かを探す、という部分は想像以上に大変なのかも、と。
意識的に「若い女性」を目指していたと思うのです。戴冠に向かってキリリとしていく過程が難しそうでした。かといって可愛らしく品があって、言うほど違和感はないのですけれど。綾ちゃんがはまった分、そこが見えたという感じでしょうか。

あと、相手役のロビンの成長も大きかったんじゃないかなー。今回は加藤さんとの組で見たんですが、和樹の成長、いちじるしいです。器の大きな男になってたので、花ベスもロビンに合わせてもう少し器の大きさを醸しても良かったかもしれませんね。可愛さの度合いは演出家のせいかもしれませんし。たぶんそうだな。

とはいえ、花總さんのコントロールされた演技は好きなの。セリフでも歌でも声音を変えてしまうところとか。

お二人とも持ち味が十分出せているので、2回見てそれぞれ満足。

アン・ブーリンへの憎しみも、父母は半分ではないのかなと感じる私は、産みの母に向かって「インバイ!」って、ひーひどいと思うのですが、父の血筋はたいそう自慢するのに、母親をののしるってどういう気持ちなんでしょう。それだけ分かってなかったと言いたいのかしら

女王となるか、愛を取るか。迷って先生に相談する場面。花ベス、綾ベスともに(綾ちゃんのほうがより強く思いましたが)心の底では決まっていたものを、後押ししてもらっているように見えました。相談して、アスカム先生の口から聞きたいことをきいて、自分の道を選び取ったのだな、と。かといってアスカム先生を妄信している訳でなく、アスカム先生は自分は国を治めるべき人間か、という理解への手助けをしていたのですよね。

「心は君に」がなくなったのですねー。もう結婚なんてしない♪の歌詞がどうでしょうかこれ?だったので、新曲の流れのほうが“女王を選ぶ”ベスと“愛しているけれどベスの決断を送り出すロビン”となって、良かったです。

ベスが結婚しない、のは愛の問題というより国政の問題もあるし、ロビンも恋なんてしないとか言っても人生長いから恋するよねと思ってたの・・・(たぶんベスもそう思ってたんじゃないかなと勝手に想像)

■フェリペの二人、男子の成長を素直に感じる。

平方くん、前回はセクシー出ないね・・・と真面目な歌いぶりを見守ってた私ですが、3年の間に緩急とか相手役との呼吸とか、かなりの成長を見せてくれました。嬉しい。男ぶりがぐんと上がって、かつセクシーです!

色事で遊んでいるけれど、心の中はクールヘッド=スペインのためを考える王子であることが分かります。
どうも前回は、スペイン父王やルナールにつかわれているだけ、という感じに見えましたが、今回は理解した上で自らスペインの駒となり生きているフェリペでした。とても良かった。平方くんは、いま自分の味を見つけて磨いているところなのねー。

古川くん、私が見た日は本調子でなかったのでしょうか。どうもいまいちハッとするようなキラメキが感じにくくて。弱かったです。何か迷いでもあるのかしら。頑張って!
玉突きシーンはいまいちと思ったものの、大司教にワインを勧めるシーンは良かったです。あ、そうか、この日は歌がダメだったのですね。M!では歌で引っ張っていかねばならないので、どうなるのか少々心配です。繊細な芸術家風なのか、繊細な不良風なのか。

あと、あまりに顔が小さすぎてメガネを疑いたくなりました。禅さんと圭吾さんの迫力ある衣装やメイクに挟まって、上品に立っていると、舞台の遠近感がゆらぎます。顔はりんごくらいしかないんじゃないですかね。そして背も高いし。

2017/11/10

『リチャード3世』10/25夜 おもしろいけど、面白くなるには教養が必要

@東京芸術劇場プレイハウス

グロスター公リチャード、リチャード三世/佐々木蔵之介
アン夫人/手塚とおる マーガレット/今井朋彦 
エリザベス/植本純米(植本潤改メ)

クラレンス公ジョージ/長谷川朝晴 バッキンガム公/山中崇

リヴァース伯、サー・ジェイムズ・ティレル/山口馬木也
サー・ウィリアム・ケイツビー/河内大和 
グレイ卿/土屋佑壱 サー・リチャード・ラドクリフ/浜田学 
サー・ロバート/ブラッケンベリ/櫻井章喜

ヘイスティングズ卿/八十田勇一 エドワード四世/阿南健治
ロンドン市長、ジョン・モートン(イーリーの司教)/有薗芳記
ヨーク公夫人/壤晴彦

代書人/渡辺美佐子


小姓/兒玉拓真
皇太子エドワード/塙智成ヨーク公リチャード/福島歩友

演出/シルヴィウ・プルカレーテ

2012年の鵜山版(岡本健一さんがリチャード3世役)見たから大丈夫だろうと思ってたところに、先に見た方が口々に「あらすじをおさらいしておけ」と言うので、あわてて詳細あらすじを読み直して行った。これが良かった、皆さんアドバイスありがとう!

シェイクスピアと言えば膨大なセリフ、言葉言葉言葉!ですが、プル版は言葉は後ろへひっこんで、役者の肉体が全面に出ています。代書人以外はすべて男性が演じているし、「演技する」ことがより強調されている。

プログラムに、役者が「リチャード3世」で演技して遊んでいる、というのがあったのです。なるほど。

というわけで、基本的でオーソドックスな「リチャード3世」をよく知っている人ほど、より楽しめるのではと。

その点で、私は可哀想に一度見たきりのほぼ初心者なので、楽しそうだ、ということが分かるけれども、どの点が楽しいのか、掴み切れないのでした。楽しいけど、自分の中で深く広がっていかないのね。

もし「レ・ミゼラブル」超訳お遊び版があったら、すごいオリジナルとの差がわかってウフフってなれると思うんですよね。そういう感じなんじゃないかなと想像してみました。

コンクリート(印刷された布)に囲まれた空間。陽が差すこともない。窓もないので、とても閉塞感がある。登場人物たちは布の間か、扉から出入りする。

演出がルーマニアの方ということで、この寒々しい感じがそうなのか。
ヴァンパイア・・・チャウシェスク・・・とダークなイメージが浮かぶ。これは病院だな。暗くてじめじめ。小さなころに入院してた旧市立病院に似てるわー。

冒頭は現代風な白シャツに黒パンツ。ビニールとテープでぐるぐるにされる人物、音楽が鳴っていて、遊んでいるうちにいつの間にかリチャード三世が始まっていく感じ。

セリフは聞いたことのあるシェイクスピアだが、いまいちキリっとしない。が、女装ロングドレス姿のアン、エリザベスが動き回ると、それらしく見えてくる。

植本エリザベスは気品ある王妃(スキンヘッドに白塗りがイケてる)

手塚とおるアンは美脚で美鎖骨の美人。手塚さんってクセの強い役をテレビなどでは良くみかけるので、あんな美人になるとは思わず。友人いわく筋肉のついた二の腕はたくましかったらしいのですが、後方席のため美シルエットでした。

グロスター公が言い寄る場面は楽しみなところです。きゃーくらのすけえろい! 
あなたが美しすぎるから、殺したのだ。このセリフに案外説得力が生まれるとおるアンでした。役者ってこわい。

今井マーガレット、長いコート着てるので足がうまく見えなかったわ・・・たぶん筋肉。女装感すらない、しっくり。でも意外とあっさり通り過ぎていくので、もっと呪いまくってても良かった。最終的にはマーガレットの呪いが実現するわけですよね、ほとんど削除状態でした。お願い、もっと呪って!

グロスター公はせむしのフリ、足が悪いフり、を採用。戴冠したころには、もうフリもしなくなってたような。あくまでも油断させるためのフリ。

王冠を手にした時の、自分からビニール袋に包まれるのは、これまでの死体でビニールぐるぐるの人がいたので、あ、もうすぐ死体感がすごい。破滅へ自ら進んでいくのでした。

王冠を目指して殺しまくって嘘つきまくってきた元気な彼だが、途端に目的を失って悲しそうでした。そして誰もいなくなった。

佐々木蔵之介は、細い体が嘘つきっぽくてすごく良い。悪人の迫力というよりも、冒頭からなんだか空虚さがある。

王冠がほしいのも、そこにあるからといった程度で、権力そのものに興味がなさそうだし、鍋から直接食べ物をかっこんでいる姿も、味なんかどうでも良さそう。
意味なんかなくてただ悪をなして生きてるので、悪をなす目的をなくすと弱い人間に見えてくるのか。

周囲を恐怖や言葉や報酬で支配していくリチャードの魅力、ちょっと薄かったかな。佐々木蔵之介の魅力は十分なのですが。

追記:
その後、BBC制作「リチャード3世」(「ウィリアム・シェイクスピア12タイトル名作選」)を図書館で借りて鑑賞してみました。

カットしたセリフもないようですし、これが基本とすると、今回のプルカレーテ版はものすごく、アレンジ効いてるのが分かりました。これ見てからだったら、もっと楽しさあったな。残念、知識なかった私。

女性たちの呪いバトルと慰めあい、男性たちの権力になびいたり墓穴ほったりの応酬。これを知った上でカットされアレンジされたものを見ると、きっと欠けてる部分を自分で補いながらそうきたか!とか思えたに違いない。

DVDでも光り輝くリッチモンド伯が登場したときは、浦井くん思い出したよ。照明も衣装もきらめいてて、そういう演出になるのが多いのか。

そして、かえすがえすも体調不良で観劇できなかった(前日に諦めて飛行機もキャンセル)「ヘンリー6世」見ておけば!! この12名作選には入ってないんだよねー。ツタヤとかでこういうのあるのかな。文字より映像のほうが人物区別できて楽だし。

2017/07/11

『レ・ミゼラブル』6/29夜 するするとラストまで流れた

@帝国劇場

ジャン・バルジャン/福井晶一 ジャベール/岸祐二
ファンテーヌ/二宮 愛 エポニーヌ/唯月ふうか
マリウス/内藤大希 コゼット/生田絵梨花
テナルディエ/橋本じゅん マダム・テナルディエ/鈴木ほのか
アンジョルラス/上山竜治
ガブローシュ/廣田礼王恩 リトル・コゼット/采本珠彩
リトル・エポニーヌ/山崎瑠奈

指揮:若林裕治

冒頭、波がザバーンと映し出されて波音がするのをみて、そうだった、新演出ってこうだった。もう草むしり(ほんとは道路工事? 祐一郎バルジャンそんな感じだったから)もうしないんだった。
・・・とここですでに回顧気分に陥る。

良し悪しの問題じゃなくて、好みなんだろうというのは分かっているが、映画みてから新演出を見たので、だったら映画見ればいいのにねーとつい言いたくなる旧版好き。
盆がくるくるしてる奥へしゃーっと捌けていくジャベール(死体)好きだし、アンジョルラスは砦にひっかかってて欲しいし(拍手しないけど)、銀の燭台を1幕ラストで握りしめてほしいし!

福井バルジャンに会いたかったので、そこは満足。岸ジャベが想像以上に素晴らしかったのも良かったです。

福井さん、体育会系アニキなんですが、案外怒りや絶望は抑えめかなーと。
音楽のテンポが一定というか、タメたりしないんですね。そのせいで、燭台盗むまでも一気に流れてきて、司教に救われて生きなおす、までの流れ、見慣れてるはずの私ですが、少々気持ちが置いてけぼりになりました。観劇日の体調も関係するとは思いますが、どうでしょうか。

コゼットに対しても、父親というよりでかいアニキだなぁ 婚礼日のよぼよぼも、若いなと思って見てました。召された後、一気に壮年くらいにシャキッと若返ったのが可愛かったです。
コゼットへの愛情、ファンテーヌへの後悔と責任感、ジャベールへの理解・共感はとてもしみましたので、福井さんらしさ、はこれからどんどん作っていってほしいところです。砦ではかなり役立ってそうに見えます。

岸ジャベも、さぞ似合うだろうと思っての初見。体格も良いし、声の出し方もこれまでの警官としての儀礼感が大いにあふれるジャベに比べ、非常に普通の人間でした(褒めている!) 
演出がリアル寄りに来てるので、ジャベールもこういう風に変化するのかしら。特別な人じゃなくて、その運命のなかにあってもがく人、という感じ。よりどころを見失ってからの自殺への流れも理解できてしまう、素晴らしい演技でした。いいわー。

女性たち、たち。全体的に細めなメンバでしたか。ふうかちゃん元気で良かった。いじらしいエポニーヌでした。
ファンテーヌは声も細めながら、コゼットを育てる母の逞しさを奥に秘めてました。

コゼットはアイドルの生田さんかーと思ってみてましたが、この役は、正直にかわいく音程を外さなければ大きく失敗しないはずなので、そのなかでしっかりやっていた感じ。可愛いマリウスをリードしてお家を切り盛りできるやり手マダムになれると思われます。

マリウス、バルジャン屋敷に忍び込むときの、ぴょーんターンは全員やってるのですか? びっくりした。この人でいいの?コゼット? と心配になるわ。
生き残るのも分かる純真なボンボンでした。子供っぽいかな。

アンジョルラス、上山さんは大きいのね・・・ 舞台映えするのに、あの死がカットされるのがもったいないなぁ マリウスラブ度はそんなに激しく出てませんでした。

それより、グランテールのガブローシュ愛は分かりやすくなった気も。菊地まさはるさん、ちょいちょいガブちゃん可愛いのを好演。死んで悲しい。弾薬放り投げるのも好きだったのに・・・残してほしかったわぁぁぁー

テナルディエは橋本じゅんさん、宿屋をやめてからのほうがじゅんさんらしさが出ていて良かったです。わりといい子にしてたな。宿屋のとこは手拍子なかったのですが、何となく手拍子したい気分にならなかった。なんでだろう。うん、ここまでもスルスル水のように物語が流れてくるからだなー。

テナ妻、けっこう夫のこと好きなのか? って思うような雰囲気があって不思議。なんだかんだ、お似合いなのだった。二人ともキレイというか、見た目じゃなくて、神様なんか知らないという倫理観がない感じが薄いの。

演出が変化してるのは時代の流れなのかのう? 
でも、音楽は変わらず美しかった。ここが見どころですよーという間もなく、ずんずん話が展開していきました。

バルジャンが神の国へ、のシーン。ライトの使い方の違いかもしれないんですが、余韻にひたる時間がすくなく。祐一郎バルジャンの死に方が美しかったことを思い出します。ほんとに召された感すごかったし、天国に行くのだなって。

新演出では、司教が迎えに来て、バルジャンがお辞儀するの・・・・なので、肉体感が払しょくできない。会社の偉い人にお辞儀してるみたいに見えるので(何せ福井さん死んだらおじいちゃんから壮年に戻って元気そうだし)、あのシーンもうちょっと麗々しさというか、荘厳さを付け足してください。

私の好きな旧版は、いつまでもこの心のなかで輝くでしょう。しくしく。
これはこれで悪くない。でも悪くないっていうだけ。




2017/05/23

『王家の紋章』4/21昼-2 1幕は良いので、2幕をどうにかしたらいい

1幕はスムーズに進行していくし、セットもエジプトらしさ、王宮らしさがアップ、奥行きと広がりのある世界になったので、良い。
ただし、2幕がどうも一本調子なところがあるので、そこをどうにかしませんか。

そういえば、初演の時にどうやってキャロルが再び古代にもどったのか謎よねーと思っていたのですが、再演ではわかりやすくセリフに入ってたので理解しました。キャロルは戻りたいと願ったら、自分で戻れたってことなんですね。
アイシス様が暗殺のためにキャロルを呼び戻しても良かったんですけど、愛の力ってことでした。

2幕でどうもね、って思ってるのは、イズミル王子の唐突感です。
キャロルに心奪われるのも、初演時よりは納得できるものの、2曲続いたり(同じシーン内で2曲あるとこ。キャロルを布でぐるぐるに拉致してのあたり)して、急にしつこいんです。

ここまでメンフィスとキャロルの二人の物語だったのに、突然いい曲をどーんと歌う! メンフィース!メイン取られてる!はやく歌いに来てー!と、思ってみつめてしまうのでして。一瞬でもいいから、奥のほうでキャロルはテーベで楽しんでるかなーと心配顔のメンフィス様を見せておくれ・・・

イズミル王子役のお二人はどちらも持ち味だして色気もあって良いので、脚本と構成の問題です。

それから、殺陣シーンね・・・ ダンスで表現しているので、一見したところではいまどちらが攻勢か、とかちょっとわかりにくいなぁと。

ダンスでのバトル表現自体は嫌いじゃないので、まぁそこは良いとしても、最後の最後、イズミルが退く流れがいまいちではないですか? 
2幕のストーリー上の大問題は、キャロル奪還ですよね? そこはもっとタメてタメで、ああ、メンフィス頑張れ的な山が欲しい。

あんなにキャロルがメンフィスの弱点だとわかっているのに、どうして簡単に逃げられちゃうんでしょうか?
(そこがダンスで表現されてるんだって言われたら、そうなのねーというしかない私ですけれど、1公演しか見れなかったので、そこが分かりにくいのはもったいないと思うのです)

それと、それと、アイシス様とイムホテップのお諫めシーンがカットなのは解せぬ!なぜじゃーーー!!

イムホテップがぽつり、と「聡明にして高貴なアイシス様も、恋をすればかくも愚かに」って突然言い捨てて去っていくなんて、ひどい。これじゃ、アイシスを軽んじて言い捨ててるようにしか聞こえません。アイシス様も宰相も品位が落ちるセリフになってしまって悲しいです。

初演にあった「お心をまげて」、と膝を折るイムホテップ祐一郎の姿がなにより美しかったし(映像に残してほしかったよ)、殺人もいとわない気位の高いアイシス様でさえ、イムホテップの助言を聞く、という関係がとても良かったのようー。
イムホテップの兄弟への深い愛情が伝わる名シーン、復活しろ。復活。

祐一郎ファンとしては、登場シーンが減ったのも当然切なかったんですが、せっかくのいいシーンをカットして代わりになにか良くなったかなと考えても、ここはカットしても上演時間が短くなった他の利点が思いつかない。

あとは最後に追加されたメンフィスとキャロルのデュエット。思ったより、ドヤ感すくなくてキャピキャピソングだったような(印象に残っていません)
ここで、帰還した船上のメンフィスに向けて、あとは本当にあなたの治世ですよ、と安心して去っていくイムホテップおじいちゃん祐一郎。

遠くから見守りますの合図だったよね。これはそんなに悪くない。だからこそですよ! ここまでエジプトを守ってきたイムホテップの偉大さを示すシーンを削ってはもったいないわ。ね、復活させましょう。あと今度のDVDには特典映像で入れといてくださいね。ね。

2017/05/03

『王家の紋章』4/21昼-1 いろいろ変更あり・・・

@帝国劇場
1階のA席センター、見やすかったな。初演は2階から照明が綺麗に見えてました。

新作かというくらい演出変更があったという噂の再演「王家の紋章」
宰相さまの出番が減ったぁぁぁという叫び声がTwitterで上がっており、どれどれという気持ちで拝見。

1、セットは格段に良くなりました。
奥行きがでるような背景画、エジプトらしさ満載のの柱たち。上下の移動もおおくなり、大変良いです。
初演のときは、帝劇のスケールを生かしきれてなかったものね。

2、演じ方に余裕が生まれてきたこともあり、メンフィスとキャロルの細やかな心情は情緒深くなりました。
ただし、そのほかの人物たちの場面がカットされたため、全体の情報量の厚みは減り、ストーリーはシンプルで分かりやすくなったものの、同時にますます薄っぺらい感が否めません。

3、イムホテップさまの! キュート場面がカット。
祐一郎ファンの嘆きの山。すふぃ・・くす?? ありません。

4、イムホテップさまの!
アイシスさまをお諫めする場面がカット。恋をするとかくもおろかに、とだけ言い置く残酷シーンに変更されました。ひどい。

5、ルカは踊らない。
テーベには同行しないくなって、ウナスはちょっと踊る。無表情のルカダンス好きでした。でもこれはカットでもまぁ・・・ね。

6、将軍もアイシスに告白しなくなった。まぁそうかもしれない。これは本筋に関係ないし、膨らませようもないエピソードだしなぁ
でも、松原さんがフラれるのも見たかったです。

7、ラストに二人のデュエットが追加。
意外と印象に残らない歌でした。ここにアイシスはいないよね?(記憶がない)

8、ライアン兄さんに話し相手ができてた。誰?
どんどん打ちひしがれていく慟哭のライアン兄さんに涙を禁じえませんね。おかわいそう!

9、映像化にあたって、新妻&平方のものが欲しかった。です。
新妻&宮野、宮澤&平方 で販売とのこと。オタクのパイが大きい二人を分けたのですね。はぁ

10、浦井メンフィスのDV的な演出が減りました。すごくいい。安心しました。
その分、細やかな気持ちの変化が素直にわかるので、気持ちよくキュンキュンできた。

『ハムレット』4/20夜 お・も・し・ろ・い!

@東京芸術劇場プレイハウス

舞台が斜めに飛び出た下手の角の正面という良いお席をいただいてました。ありがとうございますーーーっ
お陰で、かっこいいウッチーをデレデレしながら拝見しました。
衣装は少し日本風のイメージ、麻か綿、そして絹の質感。男性は墨色のようなダークな色合い、女性は白で。

ハムレット、フォーティンブラス/内野聖陽
オフィーリア、オズリック/貫地谷しほり
ホレイショー/北村有起哉
レアティーズ、役者/加藤和樹
ローゼンクランツ、バーナドー、役者、イギリス使節1/山口馬木也
ギルゼンスターン、マーセラス、役者、イギリス使節/今 拓哉
フランシスコー、レナルドー、役者、牧師/大重わたる

ヴォルティマンド、役者、水夫/村岡哲至
貴婦人、役者/内堀律子
役者、水夫2/深見由真
ボローニアス、墓堀の相棒/壤 晴彦
墓堀、役者、コーネリアス、隊長/村井國夫
ガートルート/浅野ゆう子
クローディアス、亡霊/國村 隼

演出:ジョン・ケアード

一言でいうなら、とても楽しかった。演劇の楽しさがつまったハムレットでした。
舞台の床と照明、小さな箱と大きめの台、舞台上下手に観客、上手に待機の役者と演奏者、

悲劇とくくられることを笑ってるような、今ここで生きているハムレットたちの生の人間らしさ、舞台と箱と照明、ほんの少しの壁に映る抽象的な映像で、400年分を飛び越えてきます。当時の時代性よりも、今の私たちに引き寄せる視点でした。

うだうだしがちな1幕は腰が少し痛くなりましたが、2幕は怒涛の展開であっと言う間です。

セリフを聞いてて、「見る」が何度も登場するんだなと発見(今頃) 
亡霊も、見る。目の前の人物を、見る。見られる。ハムレットは見かけと中は違うんだと繰り返してます。演じる人生、どれが自分か誰にもわからないじゃないか、と。
でも再婚した母の心のなかはおもんばからないんだよね。弱きもの、女、とか言っちゃって(ヒドイ)

対して、叔父クローディアスなどは見かけや態度が整えば問題ない、と思ている節がある・・・そう思ってるだろうから、再婚した母はつまり悪だと思ったってことかなー 
ここきっと評論されてるんだろうな、今度探してみよ。ありすぎて大変そうだ。

それに劇中劇も見られる自分、演じるわたし、を強化してますね。十分にもてなすことなんかないと言われる身分の役者たちが、「王」「王妃」になれる。
演じるということを重ねて強調しているのね。身分制がしっかりある時代に書かれたと思うと、身分を身にまとっているだけの「わたし」への興味があるのですね。

苦悩する(だけの)ハムレットではなくて、親近感のわく隣のお兄さんハムレットといった内野ハムレット。次期王、の風格もありつつ、学生らしきまっすぐさもあって見目麗しかった。
いかにも、な演技におちいらず、今ここで考えて出た言葉、のようにセリフを言うので、すごいのう・・・と惚れ惚れする。
活字を読んでる感じにセリフを言うパターンもあるけれど、いまここで、というリアルな感情を感じるような演技・演出でした。

ハムレットは父への敬愛の気持ちを母が踏みにじってしまった、という怒りと失望があって、亡霊に導かれ復讐の機会を待っているのですが、ねじれた父殺しの話になるんですね・・・ふーむ(ってどういうことなんだろう?面白いわー)
その心が、オフィーリアへの態度にも出てしまったのだろうか。贈り物や言葉をささげていたのに、彼女の心に触れようとしないんですよね。

その母を演じた浅野ゆう子、おお女優という綺麗な姿でした。背も高いので見栄えがいい。色気はなかったな。何か致し方ない理由があって叔父と結婚したのかなと思いたくなるほどで、それが「弱さ」なのでしょうか。

叔父の国村さんは、テレビや映画ではセリフ何を言ってるのかわからないランキング上位の方なので、心配してたのですが、きちんと聞こえました。マイクと相性悪いんですかね? 能のような風情の亡霊。父も父で自分を殺した弟に復讐しろといいながら、再婚した妻は憎まないあたり、え、優しい・・・?のか、ばかにしてんのか。

おじじコンビな國夫と壤さん。墓堀の場面は最高に笑えました。ああ、最高。二人とも70才前後ときいて、おじいちゃんの味わい・・・すてき。
國夫は役者の役のときの長セリフもびしーっとカッコいいし、墓堀のすっとぼけたじいちゃんぶりも良い。お二人ともありがとう!

今さん、ストプレで拝見するの初めてで勝手にドキドキしていたら、颯爽としてました。わりと若いひと、というのを自然に演じていたな。ウッチーもそうだけど、30歳程度っていう役どころで、ちゃんと30歳くらいの男子なのでした。山口馬木也さんとコンビになっていろいろ出てくれてました。

そしていい役もらったねの加藤和樹。最後、ハムレットに父と妹を死に追いやったと復讐に燃えるレアティーズです。
役者の役のとき、すごい跳ねてました。すごい。
終盤のハムレットとの試合、殺陣のするどさではウッチーに軍配。これはそういう演出というよりも、慣れの差かな? ウッチーのほうが腰が据わっててよかった。
自分で仕込んだ毒で死ぬんですが、あ、また死んでしまった・・・とか思いつつ。
帝劇でみると濃いめに入る和樹も、ここではさわやかな好青年なのだった。周囲が濃すぎなので。

精神を壊してしまったオフィーリア(貫地谷しほり)が歌ってるそばに寄り添って、一緒にやさしく歌ってあげてるレアディーズ和樹、夢のように美しかったです。この二人が並ぶと、リアル感が若干うすれました。
(ウッチーと貫地谷しほりちゃんが並ぶと、夢っていうより、ミツと勘助を思い出すでごいすー)

そしてそして、有起哉ですよ。顔ちっさいんだ!とウッチーと並んで気づきました。ウッチーの顔もでかいんじゃないはずですが、しゅっとしてますねー。
最後までハムレットを支える友人ホレイショー、死に瀕したハムレットを抱きかかえてくれるので、眼福です。出番は多くないが、ハムレットを見続けている人物として最初と、最後を締めています。

ストプレは素人観客なんですが、戯曲読んでる段階では気づかないことを見せられる驚きがいつもありますね。
え、こういうこと?(と演出家は捉えてたんだ!)とかね。

意図せずある結果をもたらしてしまうこととか、身体と心の関係とか、またも文学部魂が刺激される観劇となりました。シェイクスピア面白いから、こんなに上演されるんですねー。

2017/04/22

『紳士のための愛と殺人の手引き』4/20昼 市村正親エンタテイナ

@日生劇場

いろいろ殺されるダイスクイスの皆さま/市村正親 (8回死に、あとプラスワンで9役ってことでいいのかな)
殺すほうのダイスクイス。モンティ・ナバーロ/ウェンツ瑛士
モンティの恋人・愛人シベラ/シルビア・グラブ
モンティの妻になるフィービー・ダイスクイス/宮澤エマ
ミス・シングル/春風ひとみ

2014年トニー賞(作品賞など)の放送みてから、日本でも上演してほしいなぁと楽しみにしてた作品でした。

母が大富豪の出とわかったものの、けんもほろろに門前払いされ、復讐してダイスクイスを乗っ取ろうとするドタバタ劇なのですが、殺されるダイスクイス家のほとんどを市村正親ひとりで演じるのがミソ。

嫌なおっさんから、浮世離れしたおじさん、大根女優まで、市村さんの楽しそうな姿を堪能できました。・・・カテコでラインダンスの足上げして帰るとこなんか、実年齢を思うとくらくらしてくる元気さで。
しかも、意外とアドリブ少な目なのね? 脚本と音楽がきちんとできてるから、しっかり笑えます。

ほんの少しの悪意をもってあと一押しして死に至らしめるあたりが、血みどろじゃなくお洒落感あり。

ウェンツは私は初めて。だんだん出世してぱりっとしていくのが似合っています。声を張るタイプではないので、たまに音圧の強い市村さんにぐっと押し込まれてしまうのが、唯一の残念ポイントでしたが、やさしい青年がふと殺人者になってしまう浮遊感が似合ってましたね。
Wキャストの柿澤さんだと、もう少し復讐心がメラメラになってそうだ。

しょっぱなに出てくるミス・シングルが、あ、これはこういうタイプの・・・と体現する渾身のズレたおばさん役なのもよかった。すっかり楽しい気分になって、おお次はどうするのかなと見てました。春風さん、ナイス演技でした。

もう一人の柱が、恋人でのちに愛人、お金大好きのシベラ役のシルビア。
ウェンツと並ぶと若干の貫禄ながら、作品を支えてます。お金好きなだけで極悪人ではない憎み切れない女性で、そんな彼女が好きなモンティのことも、ああ憎めないダメな感じ、となる。

結婚するフィービーは、妻にするなら的な世間ずれしてない深窓の令嬢、どちらも離せないモンティ、の詰め切れてないところがチャームポイントかもしれないな。

最後に登場する謎の掃除夫(市村正親)とまたもバトルなのか? と思わせるラストのシメ方も、おや、お洒落。

インクでスケッチしたようなセットや、衣装もお洒落で、欠点ない。

日生よりもクリエで見たい可愛い作品でした。日生でも悪くないんですが、客席ともっと親密感がでたほうがより笑いが起きそうです。

2017/03/04

引っ越しました(市内)

1週間たったとこです。
ダンボールはほぼ片づけたものの、いい加減に荷物をつっこんでいる箇所がたくさんあるので、今後はこれらを徐々に整理していく・・・のね。

3.7畳の小部屋をもらったのですよ。本棚つけてもらって、カーテンはウィリアム・モリスの!(夢だった) 荷物入れるまえは、超ラブリーな部屋だったのよねー

でも、プログラムやら会報誌、雑誌を本棚に入れたとたんに
なぜかー

オタクみある部屋になってしまいましたぁぁぁーーー(かなしみ)

そうよ、あたしはミュージカル好きなんだもの。しょうがない・・・

額を選んだら、モリスのカーテンの横に「クロロック伯爵さま」ポスター掛けちゃうんだから!

引越し直前と、引超し後にクリコレ3にもお出かけできたし、上々だわ。

あと一人暮らし初めてからずーっといいお風呂の物件じゃなかったけど、今度のお風呂は暖かい~わーい
あーあーあーーーー♪ あーあーあぁぁぁー♪
サラは伯爵さまをここで待ってますっ

2017/01/29

『フランケンシュタイン』1/20昼 きっともっといい(もっと見れたらよかった)

こう・・・もっと完全にブロマンスみが! 強いのかなーと期待してました。んー、ジュリアいなくていい派だよ・・・いないほうがクッキリする。

僕は君に恋したって歌詞がありましたね。でも和樹(ちがった、アンリ)奥ゆかしいから、ビクターは自分のことで手一杯だったかもしれないね。しくしく

柿澤&加藤の組でいえば、ブロマンスじゃなくて、子供のままのカッキービクターとママのような包容力の和樹アンリでした。母性だった。
酒場のシーンの介抱の優しさよ。先日も書いたがもう一度。私も和樹アンリにやさしく介抱されたいーっ
抱きしめ方も綺麗だしねー。

さて、2幕。

怪物が逃げ出して数年、ビクターはジュリアと結婚してた。お父上も赦してくれたのですね。心が広いお父さまです。
しかし私の眼には、ビクターはジュリアに心を許しているのか、半信半疑でした。心配してるのは分かるのですが、友情的な関係に思えたのよね。ま、それでも結婚していいのですけれど、

嵐がやってきて、雷ぴかぴかー、そこへアンリが。喋れる! 生きてたのか、話せるのかと気になりつつ驚くビクター。懐かしさより畏れ。

そして、アンリだった怪物は辛かった日々を語りだすのでしたー

人さらいみたいな感じで捕まって、闘技場でひどい扱いを受ける。死にたくなかったら、相手を殺せと。焼きごて当てられる和樹。あああ

カトリーヌは娼婦みたいな扱いで生きてる娘、商売敵の男から怪物に毒を盛れば自由にしてやろうと言われ、飲ませちゃう。その弱さ、わかるだけにツライ。

それを飲む和樹の顔が嬉しそうで美味しそうで、泣けるわ。キュン死確実。

最も恐ろしいのは人間だっていう話なんだけど、恐ろしいっていうかその人たち病気だと思うよ。話が通じない人たちだったよね。

カッキーのジャック、ソシオパス(かサイコパスか・・・)壊れてました。2階席からだったけど、1階席の近くから見たら、けっこう怖いんじゃないかなと思った。
アッキ―は、舞台写真みてると 楽しそうな感じ?

1幕のキャストが違う役で登場するアイデア、面白いです。人間のなかの裏表みたいに見えるかもしれないし、「人間」とはなにかっていう問いにもなりそう。
闘技場で「怪物」と呼ばれる者が、最も人間らしさをもっているという皮肉。

そうして地獄の日々を、「創造主よ」と名前を呼ばずに渋い声で訴える怪物。

で、私には和樹怪物はアンリだった記憶を自分のものとしてないように見えたのでした。お話としては、記憶は戻ってるのね・・・うーん。
戻ってない、と感じながらラストを見ると、相討ちというか、殺させる自殺を完遂したのねというところ。生きる希望がないから、友人だった自分を殺させる復讐した。と。

記憶が自分自身のものとして戻っていたとしたら、かなしみ深くて叫んでしまいそう。1幕の和樹アンリのカッキービクターへの愛情の深さを思うとー。
自分の死も研究に役立ててほしいと思ったに違いないので、その結果(怪物となってしまった自分)に失望してるだろうし、申し訳なさすらありそうです。

でもって、この場合、なぜビクターへ復讐しようとしたか、がすごく愛憎がねじれた結果ということになるのですね。
こっちが正解な感じですかねー? 盛り上がるものね。

でも記憶がもどって、しかも話せるようになれたのなら、歩み寄ろうよって思ったわ・・・
その憎しみが素直に受け取れない・・・きつい。

北極にあんな薄着でたどり着いたビクターすごいなぁと感心しつつ。どうやって行ったの? すごいな。コホン。
たどり着く前に凍死しそう。
誰もいない世界で暮らしたいって、それは無理なことなのよね。人は他人を求めてしまう、それは愛か、憎しみか。

その場で決着つけない理由も、分かるけれど納得しきれないところではありました。原作がそうだとか?(そのうち確かめよう)
孤独に「生きる」ではなく、死ぬことを選ぶ怪物。人間らしく生きたいと思うと、死が浮かぶ哀しみ!

最後にビクターの叫び声を聞いた怪物は、アンリにもどって死ねたような気がしました。愛を取り戻したのだろう、と。哀しい。

端的に言うとかなり消化しきれないままでした。一回きりでは掴み切れませんし、日本版の行先もいろいろ手探りな部分もあるのかなと思います。

なかなか辛い物語なので、毎日見たい演目ではないけれど、うまく育てば長く上演可能な作品かも。

小西怪物も、アッキ―ビクターも素晴らしかったそうですし。ぜひぜひ、再演を!

お友達が、和樹和樹と叫ぶわたしにプレゼントしてくれました。

2017/01/21

『フランケンシュタイン』1/20昼 ぼっちゃんが悪いんだよぅ

ビクター、ジャック/柿澤勇人 アンリ、怪物/加藤和樹
エレン、エヴァ/濱田めぐみ
ジュリア、カトリーヌ/音月桂 ルンゲ、イゴール/鈴木壮麻
ステファン、フェルナンド/相島一之

リトル・ビクター/難波拓臣
リトル・ジュリア/寺田光

日帰りで見てきました。ほんとはWキャストのもう一方の組も見るつもりでチケット取ってたのですが、仕事の都合(二転三転して結局行けたという・・・間に合わなかったけど)で諦め、この日の日帰りに。


おもしろい、とか楽しい、とか言いにくい。うーん、こってり濃い

日本上演版としてオリジナルの韓国版とは違うところもあるそうです(どこが違うのかはまだ確認してない)ね、それでも「韓国」!と思わせる復讐への執念の度合に疲れました・・・ 

あとジュリアへの愛情がいまいち良くわかりません。カッキー自体は結婚後はジュリアへ愛情を見せていたものの、流れとしては何だか。

犬が暴力的になって復活したあたりで、結婚相手としてはヤバいのでは。大人は分かってくれないって本気なの。

女性は姉だけのほうが伝わりそうです。

孤独な自分を愛してくれる姉、殺されて怪物を憎む。シンプル。

音楽は、荘厳、美麗、というより普通? いい普通。

時代性や国の雰囲気はあまり反映されてませんでした。あ、そもそもどこの国の人なのか自信なくて。フランスの話でいいんですか。イギリスなんですか・・・ナポレオンが敵なの? 世界史わからぬ。
演者も絶叫歌唱が多いです。どうもどうも。その中では、和樹アンリの静かな歌いだし、断頭台前での歌などしみました。

1幕、ビクターとアンリの出会い。友情、断頭台へ上がって「怪物」となるまで。


エレンが弟ビクターの幼少期を回想するのはいいとして。

他にも繰り返し場面、思い出し場面が多用される構成です。

冒頭の怪物誕生シーン、1幕に同じシークエンスが繰り返されるのもったいない。怪物役の見せ場のような苦しみ場面なので、印象的です。冒頭だけでもわかったよ。全く同じ場面じゃないほうがいい。

おおき言うと、1幕全部が思い出し場面。そのなかに、エレンの回想シーンも組み込まれてる。

それから怪物が逃亡して、闘技場に捕まり、悲惨な目にあうなか、自分を生み出した原因を手帳で知り・・・も回想。

最後まで時間軸変えずに復讐するまでが一連の流れでも悪くないような。

なんとなくのイメージですけど、舞台ってリアルタイムな体験なので、順を追うほうが疲れない(わたし疲れすぎてゴメンよ)んじゃないかな。

回想させる必要があまり感じられませんでした。劇的にしようと思ったのかなー。

柿澤ビクターは「坊ちゃん」に相応しい甘ったれ末っ子風。切ない遂げられぬ役がほんとにお似合いのカッキー。堪能しました。

思いは純粋ながら、倫理観がズレてしまった。母の死について誰も納得させられなかったことが、本当に悲しいです。死んだ人より、いま目の前にいる人(和樹)を愛して!

ビクターを中心に、執事の壮麻さんとジュリアは共依存のよう。自分のふるまいでビクターをダメにしているのに、彼に仕える自分が好きなのね・・・
ジュリアはいらない。壮麻さんだけがぼっちゃんを支えてたのに、アンリが急に親友になってジェラシー、うん、ブロマンス風味つけるならこのほうがいい。

和樹アンリ。
見目麗しいアンリ。医者なのに助けられないなら死ぬ気でいたらビクターに助けられた。生命を生み出すことへの畏れから研究をやめたのに、ビクターに会って考えを改める・・・そ、そうなのか。カッキーにそんなカリスマあったかしら。やっぱり畏れててほしかったよ。

ビクターの殺しの罪を被り、断頭台へ進むアンリ。二都物語が脳裏に浮かびます。
和樹のシドニーもいいなぁ・・・
酒場で悪酔いしてるビクターを助けに来るのカッコよかったよねー。おしりが素敵だったのーっ オペラでロックオンしちゃった。
私も酔っぱらって介抱されたい。ちょっと怒られたい。

少し微笑んで死んでいったのって、やっぱり最高の実験台になろうってことだよね? それはそうなんだよね。
だからさ、怪物が創造主を恨む底に、そもそもお前も望んだんだってあるんだよね。誰も言わなかったけど、そういうことよね? 悲しいよう

プログラムに、「アンリの記憶をもった怪物」って書いてありますが、私がこの日見た感じでは、怪物にはその自覚はなかったように思います。
手帳から自分の誕生の秘密を知ったけれど、むしろアンリだった自分の記憶はなさそうです。小西怪物はどうなんだろう。

自覚はないけれど、無自覚に闘技場でトドメをさせない、ってところに現れてるのだなと。その心がアンリの残り香。

めぐさまエレン
麗しいお姉さま。ビクターを心配する賢い女性だけど、弟の心の中までは知らなかった。姉フィルターかかってる感じで好演。や、めぐさまに好演とか失礼よね。最高っす。

エレンが無実の罪で裁判にかけられた形跡もなくつるし首になるのを見て、魔女狩りな感じ・・・だったんですけど、この手の込んだ復讐が「怪物」には似合わないなぁと思いました。
無実の罪で死ぬ、という復讐をしたかったのだな、と理解しつつも、「怪物」の愛されない悲しみ、人に戻れない悲しみを爆発させるには、手間がかかりすぎかなーと。


いろいろと小さく気になることや、もどかしい感じがあるのは、日本初演版だからでしょう。この先、もっとシンプルにビクターとアンリの物語にしていけば、もっと熱演も光るのでは・・・と。期待。

もうちょっと続く。