@東京芸術劇場プレイハウス
グロスター公リチャード、リチャード三世/佐々木蔵之介
アン夫人/手塚とおる マーガレット/今井朋彦
エリザベス/植本純米(植本潤改メ)
クラレンス公ジョージ/長谷川朝晴 バッキンガム公/山中崇
リヴァース伯、サー・ジェイムズ・ティレル/山口馬木也
サー・ウィリアム・ケイツビー/河内大和
グレイ卿/土屋佑壱 サー・リチャード・ラドクリフ/浜田学
サー・ロバート/ブラッケンベリ/櫻井章喜
ヘイスティングズ卿/八十田勇一 エドワード四世/阿南健治
ロンドン市長、ジョン・モートン(イーリーの司教)/有薗芳記
ヨーク公夫人/壤晴彦
代書人/渡辺美佐子
小姓/兒玉拓真
皇太子エドワード/塙智成ヨーク公リチャード/福島歩友
演出/シルヴィウ・プルカレーテ
■2012年の鵜山版(岡本健一さんがリチャード3世役)見たから大丈夫だろうと思ってたところに、先に見た方が口々に「あらすじをおさらいしておけ」と言うので、あわてて詳細あらすじを読み直して行った。これが良かった、皆さんアドバイスありがとう!
シェイクスピアと言えば膨大なセリフ、言葉言葉言葉!ですが、プル版は言葉は後ろへひっこんで、役者の肉体が全面に出ています。代書人以外はすべて男性が演じているし、「演技する」ことがより強調されている。
プログラムに、役者が「リチャード3世」で演技して遊んでいる、というのがあったのです。なるほど。
というわけで、基本的でオーソドックスな「リチャード3世」をよく知っている人ほど、より楽しめるのではと。
その点で、私は可哀想に一度見たきりのほぼ初心者なので、楽しそうだ、ということが分かるけれども、どの点が楽しいのか、掴み切れないのでした。楽しいけど、自分の中で深く広がっていかないのね。
もし「レ・ミゼラブル」超訳お遊び版があったら、すごいオリジナルとの差がわかってウフフってなれると思うんですよね。そういう感じなんじゃないかなと想像してみました。
■コンクリート(印刷された布)に囲まれた空間。陽が差すこともない。窓もないので、とても閉塞感がある。登場人物たちは布の間か、扉から出入りする。
演出がルーマニアの方ということで、この寒々しい感じがそうなのか。
ヴァンパイア・・・チャウシェスク・・・とダークなイメージが浮かぶ。これは病院だな。暗くてじめじめ。小さなころに入院してた旧市立病院に似てるわー。
■冒頭は現代風な白シャツに黒パンツ。ビニールとテープでぐるぐるにされる人物、音楽が鳴っていて、遊んでいるうちにいつの間にかリチャード三世が始まっていく感じ。
■セリフは聞いたことのあるシェイクスピアだが、いまいちキリっとしない。が、女装ロングドレス姿のアン、エリザベスが動き回ると、それらしく見えてくる。
植本エリザベスは気品ある王妃(スキンヘッドに白塗りがイケてる)
手塚とおるアンは美脚で美鎖骨の美人。手塚さんってクセの強い役をテレビなどでは良くみかけるので、あんな美人になるとは思わず。友人いわく筋肉のついた二の腕はたくましかったらしいのですが、後方席のため美シルエットでした。
グロスター公が言い寄る場面は楽しみなところです。きゃーくらのすけえろい!
あなたが美しすぎるから、殺したのだ。このセリフに案外説得力が生まれるとおるアンでした。役者ってこわい。
今井マーガレット、長いコート着てるので足がうまく見えなかったわ・・・たぶん筋肉。女装感すらない、しっくり。でも意外とあっさり通り過ぎていくので、もっと呪いまくってても良かった。最終的にはマーガレットの呪いが実現するわけですよね、ほとんど削除状態でした。お願い、もっと呪って!
■グロスター公はせむしのフリ、足が悪いフり、を採用。戴冠したころには、もうフリもしなくなってたような。あくまでも油断させるためのフリ。
王冠を手にした時の、自分からビニール袋に包まれるのは、これまでの死体でビニールぐるぐるの人がいたので、あ、もうすぐ死体感がすごい。破滅へ自ら進んでいくのでした。
王冠を目指して殺しまくって嘘つきまくってきた元気な彼だが、途端に目的を失って悲しそうでした。そして誰もいなくなった。
佐々木蔵之介は、細い体が嘘つきっぽくてすごく良い。悪人の迫力というよりも、冒頭からなんだか空虚さがある。
王冠がほしいのも、そこにあるからといった程度で、権力そのものに興味がなさそうだし、鍋から直接食べ物をかっこんでいる姿も、味なんかどうでも良さそう。
意味なんかなくてただ悪をなして生きてるので、悪をなす目的をなくすと弱い人間に見えてくるのか。
周囲を恐怖や言葉や報酬で支配していくリチャードの魅力、ちょっと薄かったかな。佐々木蔵之介の魅力は十分なのですが。
追記:
その後、BBC制作「リチャード3世」(「ウィリアム・シェイクスピア12タイトル名作選」)を図書館で借りて鑑賞してみました。
カットしたセリフもないようですし、これが基本とすると、今回のプルカレーテ版はものすごく、アレンジ効いてるのが分かりました。これ見てからだったら、もっと楽しさあったな。残念、知識なかった私。
女性たちの呪いバトルと慰めあい、男性たちの権力になびいたり墓穴ほったりの応酬。これを知った上でカットされアレンジされたものを見ると、きっと欠けてる部分を自分で補いながらそうきたか!とか思えたに違いない。
DVDでも光り輝くリッチモンド伯が登場したときは、浦井くん思い出したよ。照明も衣装もきらめいてて、そういう演出になるのが多いのか。
そして、かえすがえすも体調不良で観劇できなかった(前日に諦めて飛行機もキャンセル)「ヘンリー6世」見ておけば!! この12名作選には入ってないんだよねー。ツタヤとかでこういうのあるのかな。文字より映像のほうが人物区別できて楽だし。
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