2023/02/08

『キングアーサー』 アーサーが地味に思えるけど、主人公だった。ガウェインと作る王らしさ

 初見時、悪役のモルガンとメレアガンの楽曲とダンス、いずれもすごい吸引力で惹きつけられました。モルガンなんか、ショーストップ。

これ、アーサーの話だよね、って思ったくらい。

しかし2回目、やっぱりアーサーは主役なんだと分かりました。複数回見てなかったら誤解したままだったな。

何物でもない青年から、数々の試練をくぐり抜け、妻も姉も自分の元を去りながら、王になったアーサーの物語です。

この作品におけるアーサーは、楽曲の配分と受け身でいることが多い構成のせいで、第一印象ではかなり地味にされてしまっています。ぐぬぬ。

地味に感じられたとしても、優しい声、低音で威厳のある声などは聴かせてもらったし、楽曲ではない部分(つまり浦井くんの演技力、殺陣のキレ、マント!など)でアーサーの物語を十分に表現していたのだった。

アーサーは、周囲からの働きかけを受ける側、受け止める側になっています。モルガンとメレアガンに恨まれて、グィネヴィアに愛されて裏切られる。ランスロットら騎士たちと民から期待される。

浦井くん、この受け身の役でありながら孤独すぎる王をカワイソウって思われないギリな感じで表現していたと思います。孤独すぎだったけど、運命を受け入れ、前に進む大きさがった。

あと、ガウェイン役の小林亮太さんが、王らしさを良く補完する役目をしていた。

ソロパートがなく、アーサーともセリフでやり取りするのだけど、冒頭のエクスカリバーに挑戦する戦いを仕切るところから、ガウェインは自分は臣下であって剣に挑戦する立場にない、公正な戦いをさせる役、高貴なお家柄。なのが伝わってきます。

緑のマントが冷静そうなイメージだし、マーリンと同じ色なのも、国を俯瞰できる立場にいる役なんだと思う。

アーサーに剣の稽古をつける場面では、身分に見合う人物になるには努力が必要だ(意訳)といったセリフがあり、アーサー自身ではなく「エクスカリバー」へ忠誠を誓っていると表明、素直よね。我々は王の軍隊です、という時も、きちんと指示をしなさいと促しているし。

次いで、メレアガンから叙任されるとき。メレアガンに押されて下手に飛ばされているアーサーが立ちあるまで見守って、ついに剣に覚醒したアーサーを見てる顔。この人物が、本当に選ばれた者であることを感覚で知ったという感じ。

助けに行きたいケイを押さえてるのも、選ばれし者ならばこんなことでは倒れないだろう、と半分期待、半分疑い、のような気持ちだっんじゃないかな。で、見事に勝った後に倒れたアーサーに飛んでいくのが忠臣でした。素敵。

ちょっと飛んで、結婚式くらいのガウェイン。
グィネヴィアのことあんまり気に入ってないの(笑)興味もなさそうで、ガウェインにとっては王が国をしっかり治めることだけが大事で、恋しちゃった★のグィネヴィアには距離を置いてる。もしかしたらマーリンの言葉をどこかで聞いて王に相応しくないと考えてたのかも。

ラストのガウェインはグィネヴィアを糾弾する言葉。
どのくらい許されないんだろうなぁと思いながら観てたのだけど、何でも首を刎ねそうな時代なのかと思うので、アーサーの決断は非常に慈悲深い。甘いのかもしれないが、ガウェインはきっとこの王ならそうするのだろうと納得したはず。

2幕だっけ、アーサーにガウェインとランスロットが甲冑を着せる場面がありました。
男が男に着付けしてるとこ、妙にセクシーで鼻息が荒くなります。3人の立場も明確になってるし、お気に入り場面。

2023/02/04

『キングアーサー』 浦井くんの真骨頂だった 2

 はぁカッコいいねー、どうしましょ。

2幕、モルガンから始まるの意外。アーサーが暴れるとこからかなと想像してたので。

★M25『消えてしまった夢』
白い婚礼の衣装、装飾は金、マントの裾が長くゴージャス。アーサーとグィネヴィアの結婚式の間、かなしいモルガンのソロが流れていく。

結婚式の二人には心からの笑顔がない。
お城でひとりきり、アーサーは国や自分のことで悩んでいるようだけど、自分と分かち合ってくれないグィネヴィアの孤独は分かる。そこへきらめくランスロットがやってきて、優しく声をかけてくれたらなびいちゃうのも分からんではない。

列席者への挨拶が終わったら、グィネヴィアは退場。

聖杯探索に、ランスロットを指名。誰よりもふさわしい、と送り出す。
グィネヴィアのこともよぎってるのかな、でもこの指名は彼女とは関係なく、適任だからという理由だったと感じた。ただ、アーサーの目はわずかに悲し気なのだけど。

★M26『アーサーの誓い』
M25のつづき、婚礼衣装のアーサーが列席の騎士たちに王として語る場面。運命がどうであれ、立ち止まらない、自分の道を進むのだ。神々しくてまぶしかった。騎士たちと剣を操りながら膝をついて誓いのポーズするとこなど惚れ惚れです。私も誓いたい(何を?)

★マーリンがあちらの世界へ旅立ちます、と去っていったとき、円形の階段に座ってしずかに歌う場面がありました。とてもいい声だった。

★グィネヴィアが連れ去られ、モルガンがご忠告に。
ランスロットとグィネヴィアは愛し合っている、と言われ信じたくないと言いつつ、ホントのところは気づいていたのでは?とも思える浦井アーサーの雰囲気で。初耳!って態度ではなかったし、あくまでも王妃の尊厳を守ってやりたいという感じ。

★メレアガンに(再び)連れ去られて蜘蛛の巣みたいなものに拘束されてるグィネヴィア。
先にランスロットがやりあってたとこへ、アーサー駆けつける。
王妃へもランスロットへも大きな心で包み込んでいて、もう自分の個人的な愛のことは手放したのねっていう超越した愛よ。

もう許さん!とシャキーン、ズバーン、ドス!と何度も襲い掛かるメレアガンを切りつけると、照明が良い感じにバン!バン!、効果音も時代劇の殺陣なみのカッコよさでした。
体が動くのに合わせてマントも見事にさばいてた。WOWOWのグリブラでマントの先生したらいいと思うわ。シャキーン。

とどめは刺さず、追放するって言うアーサーに切りかかるメレアガンを刺されたランスロットが阻止。うう(王妃がいなければ)良い主従になれたのに!

このことはこれで終わり、口外するなと告げて妻と愛人(という言い方いやだけど)を残し去るアーサー。グィネヴィアもアーサーが感じ取ったことは気づいているようだったが、去っていくってことはアーサーが自分との絆を手放したって感じたんじゃないかな。

兄ケイが、王はすべてわかっているが、言わないだけだ、と告げるのが泣ける。一緒に育ってきた家庭が温かいんだな。

★王座にひとり
この座る姿がとっても悲しそうなのに自分の行く道に迷ってなくて威厳がありました。胸を張ってるとかじゃないんだよ、何でそう見えるのかしら。すごいね。

モルガンの恨みがアーサーに向くのがちょっと分かりにくいというか、とりあえずマーリンは憎くないわけ??? アーサーのせいで母が死んでしまったから、とはいえ。

母が子守唄を歌ってくれた、というモルガンのお腹に手をあてて、子守唄を静かに歌うアーサー。王の愛が深すぎる。
自分は子供に直接歌ってあげられないが、モルガンが与えられた母の愛を生まれる子に与えて、愛されてほしい、と。王が優しすぎるんですけど!!

浦井くんの素晴らしいところ、こういうそこまで優しい人いるかよっていうシーンも、浦井アーサーだと納得できてしまうとこ。心からそう願っている、と分かるんです。演技してる、っていう嘘がないの。すごいのよ。ほんと。

私の想像だけど。浦井くんは理論で組み立てて、でも最終的には心で演じるタイプなのかなと思います。分かりやすいAだからBの表情になる、とかそういう単純な組み立てじゃなくて、その役を生きるように体のなかに作っていくようなイメージ。

あとお顔がきれいです・・・目がとてもきれい。

進行が前後しちゃってるかも。記憶が。

上手の隅で、ひとり慟哭する場面。紗幕に隔たれた舞台奥ではマーリンが、一番必要なときに隔たれてる的な歌をめちゃいい声で歌い上げてるとこ。
えずいちゃわないか心配になるくらいの、アーサー無音の慟哭。妻の裏切り、姉には恨まれ(そして遠くへ去らせる)、自分の身近な人が去っていく悲しみがありました。また、これから最愛の妻を裁かねばならない。

慟哭ののち、自分自身の幸せについて泣くことをやめたのねっていう瞬間があって、スッと表情が変わった。完全に「ワタクシ」の人生、幸福を求めるの諦めたんだなーと思った。

★家臣からは、グィネヴィアを「女」「グィネヴィア」と敬称なしに避難され、プライドロックみたいな円形階段の上へ。

グィネヴィアは、国から追放し自由とする。グィネヴィアが求めていた「自由」かどうかは分からないけれど。愛を求めた相手と離れ、自由に生きよと言われた。

私にも罪はある繋ぎとめられなかった(そうね・・・王として生きる道を選んで、グィネヴィアをその相棒にしなかった)歌詞、ぜんぜんちゃんと思い出せないけど、何が大事かとか、これから民の幸福のための王になるよっていう宣言だった。泣いたわ。覚えてないから音源ほしい・・・

騎士たちを従えて、エクスカリバーをセンターで掲げる浦井アーサー! 

良すぎる―――!! すてき!!

声も響いてて凛々しくて。少し涙目な表情が王の背負ってるものを表しているようでした。

というわけで、ラストの王の国造りの宣言は、ひれ伏しました。

Vive le roi Arthur !
(ところで、Wake upは英語だし、ざっくり意味訳でアーサー王万歳!で行けますよね、日本語じゃダメって本国に言われたのかなぁ びべろろいって聞こえてたんだけど、これ言うガウェインが言いにくそうで)

2023/02/03

『キングアーサー』 浦井くんの真骨頂だった 1

@新国立劇場 中劇場

1/24夜
(後方、壁際。浦井&伊礼 トークショーあり)
メレアガン:伊礼彼方、ランスロット:平間壮一、グィネヴィア:宮澤佐江

1/25昼(センター寄り中段 見やすい)
メレアガン:加藤和樹 、ランスロット:平間壮一、グィネヴィア:小南満佑子

2/1夜(キングシート。演者の生声が聞こえる。キングしか見てなかった)
メレアガン:伊礼彼方、ランスロット:平間壮一、グィネヴィア:宮澤佐江

2/2昼
(どセン、̘前寄り。全体を良く見渡せ作品鑑賞的には最良)
メレアガン:伊礼彼方、ランスロット:太田基裕、グィネヴィア:宮澤佐江

東京公演の初日が遅れたものの、その後は2/3時点で体調不良者が出ても何とかカバーしながら継続上演中。

★開幕前のインタビューで、演者さんたちが口々にショウアップされた曲でストーリーを繋ぐエピソードが薄いためどう伝えていくか苦心している的な話をしていたので、1曲歌い上げて拍手拍手~次~拍手拍手~なのかなと想像してた。

韓国上演の際に演出のオ・ルピナさんがストーリーの助けになる部分を足していったということもあるのか、杞憂したような曲の羅列モノではなくって、何者でもないただのアーサー青年がアーサー王となる物語に見事に仕上がってました

★新国立劇場でシェイクスピアシリーズに関わってきた浦井くんが、ついにブリテンの王に!しかもミュージカルで凱旋~!
このシリーズで若き王から疲れた顔で王座に座るとこまで演じてきたことが、全部生きてて素晴らしかったです。

冒頭の普通の男の子、兄のケイのため剣を探しに行く素直で憂いのない笑顔。浦井健治41歳? いや20歳だな。

でも、メレアガンがエクスカリバーが抜けない場面から、上手で笑顔が消え剣に導かれていくように歩み寄る横顔が選ばれし者らしく。
作品では「運命」と呼ばれてましたが、自分の意志の外の大いなる力が剣を抜かせます。
抜いた後にハッと気づくとひれ伏す人々。まだ重圧も責任も知らず、分からないけど、嬉しいのかも、いいことかも、そんな誇らしげな青年です。

ここまでで50回くらいは「可愛い(ギャー――)」と心が叫んでいる。我ながら今や帝劇主演俳優の浦井くんに失礼ではないかと思うのだけど、止められない。だって!可愛い!
あと顔が誰よりも小さいのではないか、と群衆に紛れている浦井くんのお姿を見てる。

★ガウェインと剣の稽古するアーサー。未熟ながら筋が良さそうに見える。
エクスカリバーの意志に従う、持つものがふさわしい人物ならば・・・と言外に含ませるガウェイン。まだ、アーサー自身を認めておらず、あくまでもエクスカリバーに従うがガウェイン。浦井アーサーはそのことを分かっていて、その状況を素直に認めている。器が大きいわ。

でも、この後の覚醒場面と合わせると、半分は本当に剣の腕を褒めてるのかなって思います。でも自覚できてない(王としての自信がないしガウェインが手加減してると思っているし)から、エクスカリバーを使いこなせてないんじゃないかと思っている。

浦井くんは可愛いから、カッコイイに若干シフト。鎖帷子に茶系の衣装、この衣装かなり好きでした。シンプルだけど浦井くんの透明感が「素敵!(キャーー)」

★ここから、メレアガンが大暴れしてると民から知らされ、救いに赴く。
王らしく指示を出すことがまだ出来ないアーサーなのでした。マーリン先生に王らしく指示だすんだよって言われてる。

さきほどの衣装に、真っ赤なマントが付く。若い王らしく良い衣装。

狼と鹿、いつも王のこと見てる。スンって顔してる狼と首をフルフルしてる鹿さん、アーサーの守り神みたい。狼はエクスカリバーを背負って運びます。マーリンが去るときに託されたのも、もしかして狼と鹿にどうする?って聞いて、王が望む限り残ると言ったのかなー等と妄想が広がる。武闘派の2頭、かっこいいです。

★メレアガンと勝負。上手、下手と二回ぶん投げられて負傷してるアーサー。下手に来た時に、覚醒する場面。音楽が盛り上げて、剣を見事にぶんぶん回し立ち回り。マント!マントがキレイに翻ってます。衣装の捌き方が最高。

メレアガンの喉元へ剣を当てる。キタ!かっこいい!

下手に倒れた時、兄ケイがもう助けたいって動くのをガウェインが待て、と抑えてて、自分の主が覚醒するのを見て、顔つきが変わっていくのが良かったなー やっぱりガウェインには感じるものがあったんだな。

死なせたくない、っていうのは騎士ではなかったことと関係あるのかも。騎士なんかまず剣の勝負してばっかりだもんね。慈悲深い偉大な王。

ガウェインへ指示をきりっと出し、メレアガンへ敬意を示し、騎士にしてくれと乞う。命令ではなく、頼んでいる。

アーサーの首にエクスカリバーを寸止めするメレアガン、逃げないアーサー。
メレアガン、本人も意識しないようにしてるが、この時すでに自分との違いを感じ取ってアーサーを恐れたのではないかしら。恐れが、怒り、恨みになり、モルガンにそれを利用されちゃうの。

騎士に任命された瞬間に気絶して倒れるアーサー。毎回キレイに倒れてた。何でかうっとりしちゃった。

★グィネヴィアに介抱される。みんな美人に弱いようだ。
M11「魔法に導かれて」
初回、座った場所が壁際のせいなのかここのデュエットがぜんぜん合ってなくて、わざと合わないようにしてるのか?と思ったくらい。あとの回ではそれほど感じなかったけど、あまりいいハモリがない。グィネヴィアはあなたのための人でない、があるからか。
グィネヴィアとランスロットのほうがきれいに合うよね?

歌のなかでグィネヴィアが求める「自由」とアーサーが「結婚」って言うまでの間には実は距離がある。好きな人と一緒にいることが自由の象徴と思ったグィネヴィアだけど、保護者が父から夫になるだけだよね、お姫様は財だから・・・ 

愛したい=自由に生きたいっていう願いとここで提示することで、ランスロットを愛するグィネヴィアへ嫌悪感が出にくくてうまいなと思います。自分が騎士の勲章みたいに扱われることを客観視してるので。このへん、グィネヴィア役の難しいところだったろうと思う。

★モルガンの話。
婚約者とともに王座に座って自分の出自を聞くアーサー。ひどい話だのう

グィネヴィアに化けてベッドをともにしてしまう場面、白いシャツがダークなモルガン軍のなかで引き立ってました。楽しそうにヘイ!するモルガン軍団がかっこいい。
浦井くんのふわりふわり動く姿もいい。いいわ・・・

★ランスロット登場から円卓の騎士(1幕ラスト)
叙任のとこから、浦井アーサー登場&歌唱が続く。

王座の下で祈るアーサー。剣にドラゴンが絡む紋章が背景にあって、ああ素敵!(浦井くんが出てくるたびに、なんてかっこいいんだろう!とドカドカ花火が打ち上がっている私の脳内)

演出全般、絵になるなーという場面が多い。配置もシンメトリにしたり。人間関係の差が立ち位置で分かるし、理解しやすい演出です。

ランスロットに嫉妬しつつ(表には出さない感じだけど、グィネヴィアに問いただしたものね?)王らしく振舞うのよね、グィネヴィアとの距離も見せてセツナイなぁ

セツナイ気持ちのまま、アーサー、グィネヴィア、ランスロット三重唱。
M19「約束」https://youtu.be/7conjvlk24c(稽古場レポート)

騎士の隊列に分断されてるアーサーら3人、義務と心の迷いに揺れる3人。音楽もぶいぶいしててカッコいい。いやカッコよくてツライ…くらいしか言葉がもう出てこないや。

ランスロットはあくまでも王の騎士と自覚しているから、王妃への気持ちにはフタをするつもり、でも王妃の方を見て歌っている。アーサーも王妃に、約束があるから信じていたい、と思って歌う。けれども、もうその約束が守られないかもって予感してそう。信じたい。
誓え~誓え~この約束を。約束したから必ず守られるわけではないのよね・・・切ない!

M20「私たちを助けたまえ」
どうすればいいのか、と悩む浦井アーサーに民の声を聞け、とマーリン。舞台中央で客席に背中を見せて民からの訴えをじっと聞く姿、背中で語ってる浦井くん。背負ってるものが重い。

正面に向くと、こっちは飢えて大変なのに宴のごちそうとか民のこと考えてんのかお前、とかそんな感じで訴えが続く。ツライ。浦井くん、大げさな表情じゃないのに、静かに深く耳を傾けている様子。すばらしい。

M21「私は立ち上がる」
円卓はドーナツ型の紋章入りパネルが吊ってあるものが降りて来てテーブル風になるようキャストが支えてた。

円卓の騎士招集の声、自分がどう道を切り開くか悟りかけてる。と同時に、グィネヴィアを愛することよりも、民の幸福を求める「王」になると静かに決めた顔だった。ああ、切ないよー。切ないけれ「王」になることをどう受け止めるかの変化が、浦井健治の真骨頂。

貴種流離譚の役が似合いすぎて。庶民の心と王の心を持ってるとか、普通の人らしいのに王の威厳もまとえる。すごいなぁとただ感激するばかり。

わちゃわちゃーと動く冒頭からの変化で言えば、どんどん動きが洗練され静かに威厳のある声になり、命令の声でガウェイン筆頭に動くようになる。見事です。

円盤化しないのかなー、せめてライブ音源ほしい。

https://youtu.be/2DwoUE_ABoY

何の発表もないので、PV↑をひたすらリピート。

2021/05/21

『モーツァルト!』札幌公演5/14-5/17 初日と猊下

 4日間5公演@札幌文化芸術劇場hitaru

私が見たのは、5/14夜、5/15昼、5/16昼、5/17昼の4公演(5/15の夜は見ませんでした)

東京都の緊急事態宣言のため、4月28日(水)~5月6日(木)まで帝国劇場では公演中止。

そして北海道。初日の前日13は北海道のコロナ感染者が712人、14日には北海道に緊急事態宣言が出そうだと午前に報道。

数字の急増と劇場も閉鎖かもという状況で初日を迎えました。

私語厳禁にしてほしいと思っていたけれど劇場では「大声で話さないでください」程度で会話も多く、規制退場も全く出来ず出口へ一気に客が押し寄せ、二日目以降が上演できるかも不安、館内の状況も不安、と泣きそう。

客席も何だか楽しいわくわくの初日の緊張というよりは、もしやこれで見納めかも、という緊張感があった気がします(私はそうでした)

初日5/14

ヴォルフガング/山崎育三郎
ヴァルトシュテッテン男爵夫人/香寿たつき
アマデ/鶴岡蘭楠

初日は緊張感を感じる育三郎ながら、冒頭の赤いコートのシーンの可愛さが印象深い。10代の少年らしさがキラキラしているものの、やはり何処か硬いような?

客席もドキドキして見守っていたところで、

何処だ、モーツァルト!♪ 祐一郎コロレド猊下が元気溌剌、

シェフのコースメニュウを~ チェック!!!する

どこだっ、モー――――ツァー―――――ルト!!

きゃーーーー!! 祐一郎さまーーーー!!!

もやもやを祐一郎の力強き美声バスーカが吹き飛ばし、はじけ飛んだ。するとふっきれたみたいに育も元気が増して弾け始めたのでした。

祐一郎の声は祝福か さすがです。ほんとに。

そしてあまりの素敵さに気絶しそう。頑張って精神を保ちました。わたし、いま、祐一郎さまと札幌にいるのね! 奇跡!

祐一郎は見目麗しくお声もびりびりどんどん伸びて、劇場にいる全員をなぎ倒したと思う。

舞台奥から進み出てくる大きさ、気品のある動き、目の動きや静と動の使い分け、すべて最高なのです。動きに無駄がない(ないのに、静止したまま歌えないっていうのが可愛くで萌える。1幕2幕のラストはヴォルフを囲んで関係者たちが背景みたいに動かないまま歌いますが、祐一郎は手が時々少し動いちゃうんだよねー。ふふー)

馬車シーン(神が私に委ねたもの♪)では、阿部アルコ伯爵とお出かけ。赤いリボンで御髪はひとつに。でこぼこ道を行くので時々転がりそうになっていますが、馬に水をやるための停止時は、猊下は向いのアルコ伯爵にのしかかる寸前。じっと見つめて数秒、なんだよう!って感じで猊下がペシっと叩く。

下車した後は腰を伸び伸びさせる猊下。軽やかに馬車に戻るし、どっしりした感じは変わらないのに、軽快でさえあって、はぁどうしてなの祐一郎素敵(だって素敵なんだもの。と、この調子で祐一郎を見つめておりました)

あとこのシーンの猊下は赤に金の刺繍のコートをお召しです。ヴォルフがマリア・テレジアから与えられたもの、それからパパに取り上げられたコートと同じ意匠。コロレドにとってはいくつもある服のひとつという事実がツライ。身分制度め。

僕はウィーンに残る♪ 乱入です!
お姉さまたちとよろしくやってる猊下、ヴォルフの乱入にも慌てず。お姉さまにガウンを着せてもらうため、両手を後ろにすっと出したまま対応してるのが好きです!

毎回(DVDで初めてこの時ヴォルフが何をしているかちゃんと確認したくらい毎回)猊下しか見ていないのを反省していて、ヴォルフのことも目の端に入れるように頑張りまいた。お屋敷で従者やメイドさんたち相手に暴れてたな・・・

ガウンを着終えた猊下、ピアノセットの上段上手へ移動し、ヴォルフにいろいろ言う。

お前ほど不愉快なしもべは見たことがない目障りな役立たずめ!

ヒューヒュー!!(心の中)息継ぎしないで言うのですが、ぜんぜん頑張ってる感がない。肺活量に拍手。

二度とかかわりをもつことはないだろう。
ということで、ヴォルフを追い出す猊下。でもこの先も猊下は何度もヴォルフを呼び戻そうとしたり、恩赦を与えると言ったりと執着が続きます。音楽の魔術。

追い出してすっと帰っていく猊下の優美な後ろ姿をいつまでも追いかけて見てしまうので、舞台センターあたりで、いや始まりだ・・・!と希望に胸を膨らませるヴォルフをあまり見られないです。猊下はこの場では怒るけど追い出したら忘れたよって顔して去っていくのが立場の差を見せつけていて、キイっってなります。

コロレド大司教の存在が大きいほど、ヴォルフの大変さが浮き彫りになるし、奴隷(貴族をパトロンにしたりする)ではなく一人の人間、芸術家として世に出たいという希望の新しさも分かるシーン。

歌劇「皇帝ティトの慈悲」序曲♪から、神よ、何故許される♪

完全無欠だ… セリフはずっと同じなのに、この場面での猊下の怒りの原因が前より分かりやすい。猊下はヴォルフの音楽の才能は神から与えられたものと考えるのに、レオポルトがナンネールの息子(彼の孫)を自分が育てるから天才だ、と答えるから

ずっと猊下は「猿でも調教できる」と歌ってました。なのに今まで私は、ヴォルフガングのふるまいを正す方面の意味で受け取っていたようです。猿でも出来るのにヴォルフガングは調教できぬ、と。違ったわ、やっと理解しましたよ猊下!

天才は人間などには作れないし、自分を侮辱する愚かな男であっても、音楽の天才がこれ以上ないほどに進化した。あのようなふるまいをする男に神の摂理すら敗北したのだろうか? 自分を侮辱する=神を侮辱することなのに(素晴らしい音楽を作り出すのは)何故だ。何故、神は許されるのか?(コロレド混乱!)

ということですね?? ね?

ずっとどうして違う意味で捉えてたかというのは、たぶんコロレドは自分を侮辱することに怒って神様ひどい、と怒ってるのだと思っていたんだと思います。そうじゃなくて、猊下は神の代理だからこそ、何故?と叫んでらっしゃったのですね・・・

肌感覚レベルでは、教会、大司教、音楽の位置づけっていうのは、なかなか分からないもので。音楽とは神を称える、神の摂理を解き明かし理解するためのものという視点が私にはなかったのでした。

ラジオで教会音楽を紹介していたときに、そんなことを話しているのを聴いて、それならコロレド猊下が脳みそ収集したり音楽家を抱えるのも、「自分の趣味」程度の話じゃなくて、神とのかかわりの話でしたか・・・と考え直したというわけです。そして、そのほうが猊下がヴォルフにいう言葉の意味が繋がることに気づいたのだった。ずいぶん時間かかっちゃった。

それにしても、レオポルトが新たな奇跡の子を見せると言ったときの、キラキラの表情といい、そこから孫と知った後の苦虫を噛んだかのような怒りの表情の変化が最高にいい。私もここのレオポルトは何という哀れな愚か者、という気持ちになりますけど、猊下には敵わないや。

胸の前でワナワナしてる両手がポイントです。猊下はこういう時のしぐさが非常に可愛いので困ります(へへ、困りませんよ、可愛いから)

階段の中段からレオポルトを追い出す猊下。旧演出ではシンプルにピンスポで歌ってましたねー。新演出でもラストは近い雰囲気ですが、孤高の雰囲気は少し薄まったかな。その代わり、ずっと高い位置にいたのに猊下が初めて下界に降りてきて舞台の上にあるヴォルフの楽譜を見上げる構図になり、ヴォルフの音楽がそれほどの高みへと来たことも分かります。小池修一郎いい仕事した。

破滅への道♪ 早く収録してほしいです。いい曲。

この曲が追加されたことで、コロレド猊下の作品全体を通してラストまでの威圧感が増したうえに、人物としての表現も厚みがでました。

芸術を(価値をどこに求めるかはヴォルフと全く反対でありながら)誰よりもヴォルフの音楽を評価しており、訳詞を聴いている限りではそれゆえに愛してさえいるのでは?と思わずにはいられないほど。

シンプルにオケピの上に伸ばされた2本の橋をヴォルフと猊下が歩き、同じメロディを反対の意見を言い交しながら熱く歌うー! いいーーー!! 目の前に猊下が来たぁぁー! 美しすぎてくらくらしちゃう。

お前の音楽を理解できるのは私だけ、のような歌詞がありましたよね。それはもう愛の告白みたいなものー。私だけがお前を導ける、とか。

猊下がヴォルフの腕を掴んで説得しようとするのを、振り払うヴォルフ。あー、演出的に確信犯ですよね。これは歪んでるけど愛なんだ・・・

神の摂理研究に余念がない猊下、しかし詰まるところ猊下は猊下の「神の摂理」という欲、そしてヴォルフを支配下に置くことで立場を誇示したいという欲があります。

馬車の御不浄シーンがなくなって短縮されたときは悲しかったけれど、この曲があれば納得。あれだけ袖にされ続けても許す、チャンスをやろう、などと非常にヴォルフにご執心なのがねー、それだけ稀有な才能だというヴォルフの価値が高まっていくのが素晴らしい。

そしてそのことが、ヴォルフガングを追いつめていくという苦しみ。台本にも音楽にも隙が全く無い。

そうそう、育ヴォルフはいい声でガッツガッツと祐一郎猊下と四つ相撲で、すさまじかったです。一歩もあとに引かないし、五分五分で自分の主張である、貴族の奴隷になって作曲をすることが自分にとって破滅への道だ、をぶつけてます。

祐一郎さまも気持ちよいんじゃないかしら。涼風シシィとデュエットしてる時くらい歌えてます。さぁ早く収録するのです。

モーツァルト!モーツァルト!♪

祐一郎さまがどうしてあんな風に歩けるのか不思議。肩が上下に動きませんよね、体幹なのかな。
世間のしがらみがヴォルフガングを追いつめていく場面、猊下は猊下の主張をして去っていくのですけど、アマデちゃんの頭の上の空間をふわっと撫でていくのが…旧演出でもしていただろうか? 記憶にない。

しっかり見て去っていくので、意図的な動きですよね。評価の物差しはヴォルフガングとは全く違うが、音楽の泉のもと、ヴォルフの心のなかの無垢で純粋に音楽と向き合っている部分を見つけているってことです。猊下、すごい理解者だけど決定的に求めるものがヴォルフと違う。

ラストの音楽の泉、影を逃れて♪

1幕のラスト同様、みな影として動きのないフォーメーションを作って直立不動で歌うのですが、祐一郎だけ時々両手をふるふると動きます。とても可愛いです。
(祐一郎さまは腕を動かすと良い感じで歌えるの☆)

腕の動きを最小限にして猊下も歌います。背後のセット上にはすべてをやり遂げたヴォルフとアマデが登場しコーラスに最後の叫び声を入れると、何だか猊下も満足げな表情に思えてきます。

やや顔を上げながら歌う祐一郎、どの角度から見ても美しいのですが、ライトを目に受けて眩しそうにも見えるけど、眩しそうな目も美しいのでした。祐一郎さまは最高なので仕方ありません。

祐一郎を見るためにM!を見てきたので、長い間作品鑑賞の目が偏っていたことは否めません… ですが、今回の育ヴォルフ、古川ヴォルフらと新演出のつくるものが、作品自体へ私を深く没入させてくれました。新曲がいい場面でいいメロディで効果的に入ったのも評価しています。ありがとう!

札幌公演ができるのか、果たして私は観劇してもいいのか、前日までもやもやと考えてしまっていましたが、幕が上がったらすべて彼方に飛んでいきました。私が怖いと思うように、スタッフさんや俳優さんたちだって怖さと隣り合わせのはずで、ですが、不安なところを見せず、素晴らしいものを作ってくれました。

困難な状況のなか来てくれたことに感謝しています。

祐一郎は海産物は食べなかったのかな、でも何か美味しいものを食べてたらいいなぁ


2020/12/31

2020観劇まとめ

 まとめる程見てません。払い戻しになったのは、WSSと芳雄くんのラジオ番組主催のコンサート(浦井くんがゲスト予定)の2つでした。

1月  『ダンス・オブ・ヴァンパイア』@梅田芸術劇場
2月  『天保十二年のシェイクスピア』@日生劇場
    『CHESS THE MUSICAL』@東京国際フォーラムC
※5月 ウエスト・サイド・ストーリー公演中止のため払い戻し
10月 『リチャード二世』@新国立劇場
    『ローマの休日』@帝国劇場
12月 『オトコ・フタリ』

以上6作品。この状況にしては見れたような気もします。TDV今年だったんですよね、何だか信じられない。この時もマスクして移動しましたが、ここまでになるなんて想像できませんでした。

他、配信がいくつか。

6月  浦井健治のDressing Room Live at Streaming(2公演)
7月  中川晃教コンサート2020
         feat.ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』
    MonSTARSの密会 危険な3人~近づくな!
    SHOW-ISMS(マトリョーシカ)
8月  SHOW-ISMS(特別追加公演)
    MUSICAL JERSEY BOYS IN CONCERT
    THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE(2公演)
    中川晃教 Live Music Studio
    THE MUSICAL BOX Welcome to my home Cプログラム(ホリプロ)
    My Story 素敵な仲間たち(4公演)
9月  井上芳雄&中川晃教 僕らこそミュージック
11月 浦井健治TALK EVENT(第一部、第二部)
    花組東京宝塚劇場公演『はいからさんが通る』千秋楽
    ミュージカル『NINE』
12月 ホリプロミュージカル・コンサート(昼・夜公演)
    新妻聖子クリスマス 配信ライブ
    
中川晃教×加藤和樹×海蔵亮太~時代を超えたJAPANスタンダード
         「僕たちの冒険!LOVE SONGSを探して!」


カメラワークが上手だったり、出演者が配信であることを重視して制作したものは、配信ならではの楽しさもありました。

配信はあくまでも配信で、演劇とは客と演者が一緒に作る瞬間のアートだと思うので、配信は行けない場合にやむを得ずですが、それでも、主催側がロックダウンののちに夏あたり時間もないなかで奮闘して配信にこぎつけたケースもたくさんあり、感謝です。ありがとうございました。

来年もどうなるか見通せない状況です。
良い方向に向かっていることを祈っています。

祐一郎さま、M!で来道するのを待ってますー!!