2018/11/07

『タイタニック』10/12昼 トム・サザーランド新演出版

@日本青年館ホール

1階席中央、とても見やすぐ音も良い。
トイレが少なく空いてるかどうかが分からないのが難点。

鈴木壮麻/スミス(船長)
加藤和樹/アンドリューズ(設計士)
石川禅/イスメイ(オーナー)

藤岡正明/バレット(機関士)
戸井勝海/エッチス(一等室客室係)
津田英佑/マードック(一等航海士)
上口耕平/ブライド(通信士)
小野田龍之介/ライトーラー(二等航海士)
木内健人/ハートリー(バンドマスター)
百田ヒロキ/ベルボーイ
吉田広大/フリート(見張り係)
須藤香菜/ミセス・ビーチャム(給仕係)

安寿ミラ/アイダ・ストラウス(一等客)
佐山陽規/イシドール・ストラウス(一等客)

菊地美香/キャロライン・ネビル(二等客)
相場裕樹/クラーク(二等客)

霧矢大夢/アリス・ビーン(二等客)
栗原英雄/エドガー・ビーン(二等客)

渡辺大輔/ファレル(三等客)
小南満佑子/ケイト・マクゴーワン(三等客)
屋比丘知奈/ケイト・マーフィー(三等客)
豊原江理佳/ケイト・ムリンズ(三等客)

こんな短期間で終わってしまうなんて、もったいない。再演!再演希望!
一公演しか見れませんでした。

2007年のウォルフォード演出版(国際フォーラム)も見てるのですが、断然こちらの版が好き。ミニマムな構成にして、ひとりひとりの登場人物すべてが生きています。中規模の劇場でのサザーランド版、良いです。

どのキャストもその人生を見せてくれて、氷の海へ投げ出されたり救命ボートに乗れたり・・・実際に亡くなったお名前の書かれた幕がかかって犠牲者の多さに泣いたそのあと、もう一度、冒頭のタイタニックを讃える歌をみなで歌うのが、悲しい夢みたいで、劇場を後にしても余韻が続きました。

遠回りだけど、夕方の緑を眺めながら信濃町駅までてくてく歩いちゃった。

演技の面について良かったところは多々あれど、拙い人はなく、安心の高品質。ストレスフリー。
お姿も見目麗しいうえに、歌声も素晴らしい。ベテランも若手も中堅も、皆さま魅力をよく活かしていて、何でCD化しない?映像化もなし? なら、再演してねっていう。

開演前のステージには、和樹ともうひとり(誰だったっけな。船員さんの役だと思うけど)。机に向かったアンドリューズが設計してる様子です。眼福です! お友達に早めに劇場入りしろと教えてもらってて良かったー。

■イスメイ 石川禅
冒頭、タイタニックを語り始めるイスメイ。遺族から責められている様子だ。と、つまりタイタニックの沈没後の様子なんだな・・・悲しみ、苦しみ、けれど、タイタニックに見ていた希望と称賛を思い出し、彼女のすばらしさを讃えて歌いだす。

タイターニーック!

タイタニックは有名な話だし、展開も周知のこと。それを「思い出す」演出にしたのは導入として巧かった。初っ端から、見てる私の心のなかに哀しみの欠片が刺さった。

2代目のボンボンぽさ、尊大さ。オーナーとしての危機管理の甘さと名声を求めて無理強いしてることにも無頓着な様子。
沈む船から真っ先に逃げられる自分大事な面も含め、悪意のある発言じゃなくて、甘いんだこの人は・・・という禅イスメイだった。似合う。
自分の発言の重さを大して気にしてない。部下は言われたとおりにすべき、世界一の船なんだぞっ です。

しかし、冒頭での表情には、「もし〇〇〇であったら?」という後悔が感じられました。そこがまだ、憎み切れないイスメイです。

■スミス船長 鈴木壮麻
壮麻さんは、スミス船長のように「タイタニック」のなかで出世なさって、ついにキャプテン!
ブライド→イスメイ→スミス船長
(イスメイ役は未見)

制服が殊のほかお似合いだ。眼福ですねー。帽子の下のお顔をもっと拝見したかった。帽子ともじゃひげに隠れる美貌なのでした。
貴族的なお顔立ちなので、自分はたたき上げなのだと言うのが意外でしたよ。

イスメイの傲慢さとは違うけれど、船長としての気概というかまだ野心の炎が残っている目の強さが印象的。イスメイに速くNYに着かねば!とせっつかれて、ムムッとしつつも従う立場の違いとか、処女航海時の安全策ではないと知りつつ、自分もやはり速度競争で名を響かせたいという名誉欲が見えます。

禅さんと壮麻さんが言い合いしてるだけで、ぎゃーーーー!!(嬉しい!)レミ見たい! とテンション上がりました。

■アンドリューズ 加藤和樹
1幕-2幕も、あまり全面に出てきませんよね。それで、最後に「アンドリューズ氏の予見」を歌わねばならないのは、かなり大変な役。

セリフは多くないが、時々ステージに登場し、タイタニックについて回答。そこにいて、存在感を消さないように登場しなければいけない。なので、あまりキャラを出す暇がないのね。エリザのルドルフみたいだなーと思いました。

 言い合いする場面で、ようやく出番が来たって感じです。そして、壮麻さん禅さんのお二人のところへ乗り込んでいく和樹・・・迫力負けしそうでしてない和樹だった。アンドリューズは最初から全然自信家って感じがなくて、すごく良い人そうでしたが、骨太なところが見れましたね。CDで聴き直したいものだ。

そうして最後、沈みゆく自分が設計したタイタニック号のビジョンを誰よりも正確に思い描けてしまう悲劇。(提出した後に誤字に気づきがちな私、分かるわ!と思ったよ。ごめんね、レベル違う)

 舞台上には一人で傾くデッキで最後を迎えるアンドリューズがいて、怖かった。ここで流れるオケの音も低音がググググーっと響き渡って、さらに恐怖感が増してます。オケといっても、指揮者と6名のみ!分かっててもすごい。6名で出来てしまうんだなぁ イェストンの音楽は美しくて切なさがあって、でもことさらに分かりやすく悲劇的でもないというのが素晴らしかった。

さらに上手いなと思うのはこの「予見」で沈没シーンを描く判断。これなら出演者が実際にアレコレする必要はない。あと、あまりに有名なタイタニックの物語だからこそ、出来ること。観客はアンドリューズの言葉に沿って、そうそう、と容易に悲劇的な結末を各自の頭の中で描けます。

ちなみに私は、あのデカプさまの映画『タイタニック』の映像で、船首が上がり、船体が折れて恐ろしい速さで沈んでいく様子が浮かんでました。