2020/12/31

2020観劇まとめ

 まとめる程見てません。払い戻しになったのは、WSSと芳雄くんのラジオ番組主催のコンサート(浦井くんがゲスト予定)の2つでした。

1月  『ダンス・オブ・ヴァンパイア』@梅田芸術劇場
2月  『天保十二年のシェイクスピア』@日生劇場
    『CHESS THE MUSICAL』@東京国際フォーラムC
※5月 ウエスト・サイド・ストーリー公演中止のため払い戻し
10月 『リチャード二世』@新国立劇場
    『ローマの休日』@帝国劇場
12月 『オトコ・フタリ』

以上6作品。この状況にしては見れたような気もします。TDV今年だったんですよね、何だか信じられない。この時もマスクして移動しましたが、ここまでになるなんて想像できませんでした。

他、配信がいくつか。

6月  浦井健治のDressing Room Live at Streaming(2公演)
7月  中川晃教コンサート2020
         feat.ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』
    MonSTARSの密会 危険な3人~近づくな!
    SHOW-ISMS(マトリョーシカ)
8月  SHOW-ISMS(特別追加公演)
    MUSICAL JERSEY BOYS IN CONCERT
    THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE(2公演)
    中川晃教 Live Music Studio
    THE MUSICAL BOX Welcome to my home Cプログラム(ホリプロ)
    My Story 素敵な仲間たち(4公演)
9月  井上芳雄&中川晃教 僕らこそミュージック
11月 浦井健治TALK EVENT(第一部、第二部)
    花組東京宝塚劇場公演『はいからさんが通る』千秋楽
    ミュージカル『NINE』
12月 ホリプロミュージカル・コンサート(昼・夜公演)
    新妻聖子クリスマス 配信ライブ
    
中川晃教×加藤和樹×海蔵亮太~時代を超えたJAPANスタンダード
         「僕たちの冒険!LOVE SONGSを探して!」


カメラワークが上手だったり、出演者が配信であることを重視して制作したものは、配信ならではの楽しさもありました。

配信はあくまでも配信で、演劇とは客と演者が一緒に作る瞬間のアートだと思うので、配信は行けない場合にやむを得ずですが、それでも、主催側がロックダウンののちに夏あたり時間もないなかで奮闘して配信にこぎつけたケースもたくさんあり、感謝です。ありがとうございました。

来年もどうなるか見通せない状況です。
良い方向に向かっていることを祈っています。

祐一郎さま、M!で来道するのを待ってますー!!

『オトコ・フタリ』12/21夜、12/22昼 浦井くんはフレッシュな青年から大人へ

 あと4公演というとこで、浦井くんの喉の調子が悪いという情報が。心配。

とりあえず公演続行なので例のコロナではないのはひとつホッとしましたが、残り4公演をどうか無事に出来ますようにと祈るばかりでした。

Twitterでチェックしてると、劇場の皆さんからは歌い方を変えて、知寿さんや祐一郎さんがカバーして何とかできた様子。浦井くん、喉はあまり強くないのかもね。お大事に。

浦井くん。
ベテランの前では、青年でした。意識して青い若者らしさを出していたのでしょうけれど、祐一郎さんとお芝居するの楽しいなーと顔に書いてあるような気がして。あと脚本的に子供っぽさを残してるので、ラストの編集者になったときの落ち着きとの差が良かったです。

義理の母が父の死後に自分の前から消えてしまい、彼女が好きな冬馬くんは「禅定寺恭一郎のところへ行く」の置手紙を頼りに乗り込んできます。なんとまぁ、まっすぐな。
訪ねて来ても、待たせてもらうなんて言えませんよね・・・

登場時のずうずうしい感じも、きっと由利子さんを見つけたくて必死なのねと納得してしまうし。恭一郎さんにもし由利子さんがうちに居たとしてどうするのと聞かれ、力づくでも連れて帰る、と言ったあたりに、子供ー!!となるんですけど、恭一郎さんそこは突っ込まず静観でした。

姻族関係終了届があったなら、完全にサヨウナラの去り方したのに、連れて帰るってすごい自信家です。

父の浮気で両親は離婚、自分は父の元に残り母は結婚してた妹のところへ行った。これで愛を信じているってすごいんですが、その相手が父の再婚相手ってあたりに若干の闇を感じます。

意地悪く見ると、父親に仕返ししたいとか? と思えるけれど、そこは浦井くんの天然ピュアさが一掃です。本当のところは分からないけど、恭一郎さんも好子さんも義母を好きになったことを屈折したものとは結びつけてないように感じました。

2幕の寝室の場面での、恭一郎さんと好子さんの両方を心配する冬馬くんが、ホントに素直で誠実なんだねとじんわりしちゃった。好子さんは放心してて鬼気せまるものがあり、恭一郎さんは来るべき日が来たって受け止めて、冬馬くんは心配でいっぱいの顔。

祐一郎さんと知寿さんのお芝居って、聞こえやすい発声と意味のある体の動かし方なので、いわゆる「お芝居してる」感じが浦井くんに比べると強いのですが、芝居がかってると言えるのに、むしろ人間らしさ、自然な感情の流れを伝えてくるのが不思議。

普通の人が話すように舞台上で話したとして、伝わるのか問題ですね。映画も様式美が強い芝居でも、胸に突き刺さる作品にもなるし、お芝居の奥深さというか演技に完璧がないってこういうことなのかしらと思ったり。

それから、冬馬くんと言えば歌。自分の気持ちを伝えるのに「歌います!」
ボーナスポイントなのかしら・・・ありがとうございました。

上手に歌わないのも大変そうです。

歌ったのは中島みゆき『糸』、米津玄師『Lemon』は知寿さんと。
恭一郎さんを大いなる愛に誘ったかもしれないのが、ベートーベン『ミサ・ソレムニス』(第三楽章)

糸は、3人の関係性に見立てたもの、と最後まで見ると良く分かります。Lemonは好子さんの心ですね。
どちらも名曲ですけど、Lemonはあまり歌詞を考えて聞いたことがなかったので今回じっくり歌詞も読みました。キュン。

ミサ・ソレムニスは帰宅してから2枚CDを聴いてみて、厳粛さと明るさのある宗教曲という印象です。祐一郎さんの大きさにはよく合うスケールかも。聴けば聴くほど良さが出てくる曲でした。

ちなみに気に入ったのはカラヤン指揮/ベルリンフィル/1985年録音のもの。品格ありました。

『オトコ・フタリ』12/21夜、12/22昼 祐一郎さま、知寿さん最高

 脚本と演出に若干の不満が残ったものの、山口祐一郎さま、保坂知寿さま、浦井健治くん。声の出演の大塚千弘ちゃん。

はぁ みんな素敵すぎて、不満もいくつか思いつくものの、まぁいいかこれはお祭りだから、となります。そして3人とも品があります。年末にほっこりする小品。

祐一郎さま。
現代のリラックスした衣装、シンプルな白シャツ、ロングカーデ、素足にクロックス(かな?) 腕まくりした腕、長い脚、全部素敵すぎて鼻血出ます。

衣装は前田文子さん。いい仕事です。こんなにシンプルな衣装の祐一郎さんは私初めてみたかも。ボロいバルジャンっていうのはあったけど、現代の人でシンプルって初かな。本体が完璧だと何でも着こなしてしまうんだな・・・

視線の使いかた、声の出し方、いい方。すっごく高度な使い分け。
何気ない動きも全部考えられていて、冬馬くんが話すときは邪魔しないとか、自分の場面のときはしっかりメリハリつけるとか、浦井くんもいろいろ話してくれてますが、レジェンドだなぁと新ためて。

ミュージカルの時って、祐一郎さまは歌声の素晴らしさや恵まれた体格に先に目が行ってしまうけれど、ストプレになると演劇の技量も高いのね・・・と。今さら、今ごろ感銘を受けました。すごい人だなと思います。

色んな声が使われて、耳が幸福で満たされました。
1幕では自分本位の大人の男性、といういかにもな雰囲気なのが、好子さん相手にはくだけた感じで話すところとか、冬馬くんをからかうのを楽しくなってるな、とか。深入りしたくないはずなのに、つい気になってしまうところとか、画伯、可愛い。

絵筆を動かしてる腕や背中が美しい。上着の裾が揺れるのが素敵、冬馬くんの青い発言にフン、と長い脚を組み替えるのも、愛の絵が描けないーとカウチでジタバタするのも。シェリーの杯やマグカップを持つ手も。
ぜんぶ素敵すぎて死にそうっていうか、寿命伸びたていうか。

それから、中島みゆき『糸』を小声でささやくように歌いながら愛の絵に取り掛かる場面。ささやいても上手かった。ブレません。上手く歌ってないのに上手かった。

何もかも良かった。

知寿さん。
祐一郎さんもすごい女優さんだってお話してましたけど、間の取り方とか、相手との合わせ方がごくごく自然で、自然すぎて技巧を感じさせない巧みさが。

所作などもキレイだし、けっこう画伯にぐいぐい意見通していくのに、押しつけがましさより、貴女が言うなら聞いちゃうって思わせる可愛らしさがあるのよね。
仕事ができるんだろうなぁ、信頼されてるんだな、と。

で、実は好子さんの秘密は恭一郎さんは知っていて、その上であの態度だったという展開となり、先生を転がしてそうな好子さんは、先生の掌の上だったと分かります。

1幕でも、恭一郎さんと好子さんは距離を保ちつつ、良い関係に思えた分、それは互いに言わないでいた心のうちを隠しつつの関係と分かってからは、余計に適切な距離感でいた時が輝いて見えました。良い面で付き合ってきた、っていう感じでしょうか。

その点、恭一郎さんの心情って実のところちょっと見えにくいところがあったかも。言語かしないあたりに、画家らしさを思ったりしました。聞いてみたかったですけどね。

一度自分で飲み込んで、しかも絵に表現して、それを客観視するくらいの時間の経過がないと、言葉にしない人なのかなと思いました。

『オトコ・フタリ』12/21夜、12/22昼 脚本と演出について

 @シアタークリエ

禅定寺恭一郎/山口祐一郎
中村好子/保坂知寿
須藤冬馬/浦井健治
須藤由利子/大塚千弘

脚本/田渕久美子 演出/山田和也

コロナで不要不急の外出自粛を言われていたなかの遠征でした。ぐっと観劇をこらえてらっしゃる方もたくさんいたと思います。最も良い選択は遠征中止と理解はしていても、誰とも会わず黙って移動するだけならリスクは抑えらえるのでは? 悩みました(何を言ってもいい訳じみてしまいますけれど) 

夫とも相談して外食しない、お店で買い物しない、劇場と、劇場から徒歩圏内に取ったホテルの移動のみにして行くことに。

一番の決め手は、遠征1週間前くらいに東京都の状況が悪化し、これはもう無理かと思ったらオイオイ泣けてしまって、泣くほどツライのかと驚いた。自分にとっては行ったほうが元気になれると思ったのでした。

そんな感じで行きました、『オトコ・フタリ』

途中、2幕モノを1幕構成にして・・・という話も聞こえてきていましたが、上演時には2幕に戻しています。

客席は8-9割埋まっていて、ガラガラではありません。

禅定寺画伯は国際的にも評価されている抽象画家、その家政婦の好子さん、突然やってきて同居することになる冬馬くん。

大きなテーマは「愛」についての3者の変化、ストーリーを動かすのは好子さんの秘められた部分。

10点満点で。
脚本5点演出6点俳優100万点

脚本
この時期に上演できたことだけで100点なのですが、俳優にそれほど肩入れせず「作品」として見に来たとしたら、中途半端感がぬぐえません。

けっこう前から執筆されていた気がするのですが、詰め切れてないよね? で、詰めてないところを全部俳優が埋めています。もしかしたら、田渕さんとしてもアテガキなので余白を多くとって脚本を書いたのかしら? んんー、にしても、もう少し締まった脚本であったら、さらに良かった。

恭一郎画伯の問題の根は、両親との関係性。恋多き人でありながら孤独な人だ、と好子さんは言います。どうしようもなく孤独であるから、女は放っておけないのだ、と。

『愛』がテーマの絵になかなか取り掛かれないのは、宇宙的規模のすべてを包むような圧倒的な光、愛、を見てしまったから、圧倒的すぎて自分の力では描けないと思っています。この圧倒的な愛のくだりの扱いが簡単すぎた。

好子さんと冬馬くんが去ったとき、画伯のなかに何かが起きて絵に取り掛かります。冬馬くんが日常に生きることすべても愛では?と訴えるところで別の視点に気づくのだけど、そこ、もう少し恭一郎さんの変化をじっくり見せて欲しかった。

好子さんの妹さんが母親と再会させてくれたことも、より意味が大きく育ったのですよね。村上春樹が描くような、主人公を見守って自分は愛をもられなくて去っていく彼女たちを思い出したわ。すごく悲しい彼女たち。

冬馬くんが言うことも愛のうちだって頭では知ってはいたでしょうが、共同生活のなかで冬馬くんや好子さんとやり取りする中で、恭一郎さんのなかで腑に落ちることがあったから、そうれもそうだ、という心境に至ったのですよね。

脚本の方向性はすごく伝わるけど、そこ、全部俳優さんにお任せしたわけよね???という不満。脚本だけ読んだら、都合いい展開じゃない?って思っちゃう。

それから、女性には敵わない的はセリフが恭一郎さんにあったこと。好子さんの妹さんがかなしみで亡くなったと思うと、簡単に言ってほしいセリフではなかったです。

それらが残念ポイントで5点・・・

いいところも。アテガキの効果がすごく大きい。

おモテになる芸術家、という設定、冬馬くんのまっすぐさ、ファンが見たいなぁという部分なので。どうしようもなく孤独、とか! そうそう、もし「祐一郎さま」がそうだったとしたら暖めてあげたいって思ってしまうものー! このあたりは単純にトキメキました。へへ。
好子さんは、愛憎複雑にからむ難しい役だけど、知寿さんが演じると嫌味っぽくなくて、憎んで愛した、が素直に受け取れてしまう、すごい。女性、こんなに聡明な人ばかりじゃないけど、好子さん素敵な女性でした。

いろいろ不満書いたけど、それでも劇場を出てひとりホテルに歩いていると、自分のなかの「愛」は何かしら?と考えてました。人と出会って人生に変化が起こることが、今はとても眩しく思え、素敵な話だった、という気持ちも残りました。

演出
山田さんこんなに暗転多用する人だったんです?と落ち着かなかった。あと1幕最後の階段から落ちる恭一郎さん人形が下品と思ったので6点。

暗転が多いのと、脚本の構成もあって、エピソードの羅列、スケッチ風になっていました。好みの問題かもしれませんが、ブツブツ途切れる感じで好きではなかったのです。

人形落ちてこなくても、音だけで恭一郎さんが落ちたのは100%分かります。いかにも人形な物体を階段から落として、ビックリするので笑ってしまったのだけど、直後に「死んだりしたらツライ。ってかケガでも笑った自分が恥ずかしい」という心境になり、居たたまれませんでした。余計な演出としか言いようがない。止めてほしかった。

他の演出でも肉体を軽んじたり痛めて笑いを取る作品なら、その一部として受け入れられるかもしれませんが、この作品は上品系よね? どうしたの山田さん。山田さんの演出は素直さがいい点だと思うので、ここだけ疑問。

そのほかは安定したレベル。寝室の襲われるところも流れは良かったし。祐一郎さまの全身の美しさを堪能できました。

あとはきっと稽古場が楽しかったろうな、と想像できてしまう三人のやりとりが楽しかったです。山田さんが、油断するとすぐ祐一郎さんがチャーミングになってしまって、と吐露されてた部分も客としては知ってる!仕方ない!で、そこ含めての人物像にしてるし、いやほんとに・・・人形ですごく損してます。

舞台装置は回り舞台でアトリエ、食堂、リビング、寝室を区切っている感じ。そこに階段が横についてたけど、クリエは奥行きありますよね? 画伯のお家の広がりが感じられないのは心残りかなー。木とキャンバスの白、恭一郎さんもモノトーン系の衣装なので、トーンも抑え気味なので、景色がシンプルでした。これは画伯の趣味なんですよね・・・
鳥のさえずりも聞こえてきたし、いいお庭もありそうな邸宅のはずなので、解放感が欲しかったけど、それも恭一郎さんの心象だったのかもしれません。