4/1 18:00@日生劇場
本田美奈子.追悼チャリティー・プレビュー
最初は、お安く『レ・ミ』が観れちゃう!とウキウキだったんですが、(かなり失礼)オーヴァチュアが始まると、そんな浮ついた気持ちが吹っ飛びました。
愛とか理想とか、若い人が死んでしまうとことか、パンひとつの罪で!という理不尽さとか・・・、それらがぐるぐると渦巻く世界にあっというまに連れ去られたのでした。
しばらく忘れてたけど、こういう舞台だったよ・・・
失恋のエポニーヌにも、砦のアンジョルラスにも、バルジャンの親心にも、はたまた職務の奴隷なジャベールにだって、成りきれてしまう恐ろしい舞台なのだった。
■山口バルジャン祐一郎
正月はウッチー祭りだったので、ちょっと遠くにいたんですけど。
帰ってきました(私の心に)!
「自由なーのーかー♪」と聞こえたときから、電気が走りましたよ。
どう書けばいいのかほんとに難しい。私には二人といない素晴らしい声の持ち主で。上手、とは違う。ハハーッと平伏したくなるような気持ちにさえなります。
今日の出来は、褒めすぎじゃないくらい良かったし。
いろいろ歌い方も変えていて、「バルジャンの告白」のところでは、
「あの地獄へ送りかえさずに」など、苦しみの表現が歌いながらも叫んでました。
激しい後悔と、司教への尊敬の気持ちでしょうか?
去年拝見した時は、周囲を圧倒しているように感じてしまったけど、今日は人間くさい人物でした。観ている私が成長したのかもしれません。
リトコゼちゃんとは見つめあったり、庇ってあげたり、義務から始まった親子の愛情が泣けます。えーん。
そして子はいつか手を離れてしまうんですよ。親子別れの話だったとは、奥が深すぎです。
あ、秋生さんのカウントによれば、13回くるくるくる・・・・と回してたそうです。スピードが速くて、リトコゼちゃんが飛んでいくか、さもなくば目を回してるんじゃないかと心配になりました。
いいなぁ 私もくるくるして!パパ!
逃亡、のとこで入れてる燭台は、エピローグで灯す燭台でもあり。
・・・バルジャン、これだけは大事に持って来てたのか、と初めて気づきました。遅いって。自分の人生を救ってくれた思い出の品だもんね。と、思うだけでじーーーんと。何もかも、じーんと。
あたたかい人物になってて、最期ではついに涙。周りに誰もいなければ号泣。
■鈴木ジャベール綜馬
初・綜馬さんジャベ。隙のない警棒さばきと、動き。
冷血サイボーグのようだ。素敵!
バルジャンが血の通った熱い声なのに対して、ジャベは氷のようにクールですねー。綜馬さんのジャベが見れて良かったです。
最初の対決で、バルジャンにぶっとばされてダウンのとこ。ものすごくやられました風の哀れな倒れ方で、考え抜かれたダウンのポーズだな、とじっくり観察。ヘタレ加減が絶妙だ。
今回は2階からだったので、自殺シーンなどもとてもよく見えました。
バルジャンに道を譲ってしまった時の、混乱と敗北感ったら。ぞくぞくです。
1階からだと地面でもがいてるだけ(すいません)に見えてたのが、上からだと大きな水の渦に飲み込まれていくのが、やっと分かりました。
そして、綜馬ジャベは美しく回転しながら舞台の奥へ消えていかれました。お見事です!
■笹本エポニーヌ玲奈
こちらも初・笹本エポ。山口盤のCDではまだか細い感じだったのが、すっかり張りがあって高低も難なく出るように。これからがさらに楽しみです。
相変わらず細いよな。ふてくされ方も可愛すぎず、ただのガサツでもなく、いい感じ。お坊ちゃまマリウスより、もっといい男がいるのに・・・ 勿体無い。
■泉見マリウス洋平
いい! エポニーヌの心にまるで気づかない、恋するバカ男ぶりを見事に表現です。あれくらい天真爛漫な感じだと、エポニーヌを傷つけてしまうのも無理ないかも。
バカさが厭味っぽくなくて、素直な青年そのもので、好演。バルジャンともいい感じでした。尊敬のまなざしでね。
■坂元アンジョルラス健児
泉見&坂元さんは、去年も見たはずなんです。が、祐一郎にノックアウトされてて他のキャストにまでちゃんと見れてなかったんだよなぁ というわけで、初めてみる気分でした。
強いリーダーシップでカリスマっぽいリーダーではなく、同じ目線で語るあんちゃん風なアンジョルラス。小柄なのも、そう感じる理由かもしれないな。
砦で拳をあげると、おおシンバ!ではありますけど、こういうあんちゃん風なのもいい。
で、いまだにどうも馴染めないことが。
アンジョルラスが深紅の旗に巻かれて死んでしまうところで拍手になりますよね。あれは歌舞伎だと花道で見得を切った感じですか? それとも戦いに挑んだ青年たちへ?
いつもここは、みんな死んじゃって、かなり悲しくなり、どーんと落とされてるのです。で、拍手を聞いて、あ、拍手なの? とハッとするんですよ。
■井料ファンテーヌ瑠美
なんだかものすごいビブラートが効いてます。好きかと聞かれたら、苦手なほうです。四季の風が吹いて来ます~
ただ歌い方が苦手でも、身を落としていく様からベッドの上でコゼットへの愛を歌う姿は哀しく引き込まれました。
強くて弱くて、不幸な人。そして、バルジャンに抱きかかえられて羨ましい人。
バルジャンを迎えにくる場面の白いドレス、とってもきれいに着こなしてました。
■河野コッゼット由佳
ひたすら可愛いコゼットです。「くらいわ~」と歌いつつも、捻じ曲がらずに育ちました。つまらないといえばつまらないですが。
バルジャンの最期に間に合ってほんと良かったね。
■瀬戸内美八&佐藤正宏 テナルディエ夫妻
佐藤テナのおやじさんは、前よか声が出てました。休養バッチリだったのかしら。相変わらずしゃがれてますが、もう持ち味なので楽しく見ます。
瀬戸内さんは、初。初めて見たのがモリクミさんだったので、あちらの印象が強烈すぎのようでして。あまり極悪っぽくはなくて、わりとふつうの安宿のおかみ。ちょっと聞き取りにくかったです。
■局田ガブローシュ奈都子
わー、女性だ。でも少年だー。作った少年声には聴こえないです。酒場で帽子ぽんぽんされたり、ワインガブ呑みしてむせたり。可愛いんですけど~。
■蛭薙リトルコゼットありさ
ありさちゃん。恐ろしいばかりに音程が外れません。バルジャンにしてもらうお着替えも、素早くてびっくりしました。てきぱき。
山口バルにくっつく姿もいじらしくて可愛いな・・・
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ゲネプロってことで、スタッフも出入り。日生劇場のスタッフも観てます。
途中、ライトがタイミングを間違えてパパっと点くハプニングも。
上演の合図にも、スタッフのカウントする声が聞こえました。ファンテーヌが死にかけてる後ろでは、ゴン!ゴンとものすごい音が。酒場の準備かなぁ・・・
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この公演の主旨である、「この公演の収益は、東宝株式会社より「LIVE FOR LIFE」を通じて、(財)骨髄移植推進財団に寄付致します(東宝HPより)」
そのため、カテコのあとに10分間ほど本田美奈子.さんの東宝の舞台での様子がスクリーンに流れました。
舞台上でも生きたいと思う人々が出て、そして死んでいくし、この日は特に本田さんのことと重ねて観てました。そこへ在りし日の映像、キムの「命をあげる」なんかを聴いたら、もうずるずる。
普段はチケットが高いとか何だかんだというけど、舞台には素敵なものが詰まってるんだなぁと改めて思いました。素敵なことですよね。