2007/09/15

『夜にそびえる不安の塔』井形慶子

☆☆☆☆

占い、スピリチュアブームの中で筆者は霊感と未来を読む力の解明にのりだす。5年にわたる潜入取材の間に、次々に起こる不思議な出来事!
人間の運命を操るものの正体とは? 
息もつかせぬ迫力で綴る渾身のフィクション!
ついに解明したスピリチュアル世界の真実!! (帯より)

2006年 講談社 ISBN 4-06-213599-X



2001年くらいから本名、仕事を(占いの取材をしていること)かくして、3名の女性霊能者(未来を見る力があるという人物、見ず知らずの人間の内面が読めるという人物)と電話相談を始める。



最初はまるで信じてはいなかった著者。だが仕事(出版社経営)が忙しくなり、また行き詰っていくなかで相談内容も濃く、深くなっていく。



仕事が出来ない幹部の悩みを霊能者に教えてもらい、そのようにアドバイスしてみるとすっかり持ち直すとか。もうすぐ辞めるつもり、といわれればその通りになるとか。
この仕事を依頼した他社の編集者が、仕事を頼んだ直後から失踪、連絡が取れなくなっていたのも、不安を呼ぶ材料だった。



この編集者の居所、生死についてのくだりが1番追い詰められていく最終局面。表題にある「不安の塔」の窓であり、見通す目が、著者をどこからでも見ているビジュアルに襲われるようになる。



本当にあるのか?という問題に、答えるためのものではない。しかし井形さんにとっては、この力は存在した。ついに毎日、彼女たちに連絡し相談しなければやっていけない中毒者のような状態に陥っていたからだ。



運命に勝つ、というのは予見されたことを起こらないように立ち回ることのようだったが、運命が決まっているならその考えは当たっているのか・・・ 



もしも未来や人の内面を見る力があるとして、それを知ることは普通の人が立ち入ってはいけない領域、そのことが1番心に残る。著者はそうは書いてないけど。未来なんて分からないほうがシアワセだし、他人の心を覗くなんてしちゃいけないことじゃないの?



他人に「あの人は本当に私のことを愛しているのか?」って聞いて、どうするんだろう?「はい」でも「いいえ」でも、だから何だ、と思う。弱いのか、図々しいのか。両方なのか?



著者の仕事や心身がどんどん追い詰められていくにつれ、相談を受けてる女性たちへの依存が深まっていく過程が、たたみかけるように書かれているので、とても緊迫感があった。読み物として面白い。





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