登美彦氏の著作。名作をその作品が持っている勢いとか、世界を取り込んで登美彦氏風に書いてみました、というもの。もとになっているものは、『百物語』以外は一度は読んでいる(でもかなり忘れてて、雰囲気は覚えているくらい)
原作を越えるものではないのだけど・・・
(※下敷きになっている作品はwebで読める。
→青空文庫 http://www.aozora.gr.jp/)
『山月記』(原作:中島敦作)
斉藤秀太郎、という人物設定が面白かった。いつも未完の超大作(小説)をひたすら書いて、世の中を斜めに見るわりに、友人もいるらしい。李微ほど、世間を僻んだりしてなさそうだったけど、京都の山に入っていってしまった。
『藪の中』(芥川龍之介)
真相は藪の中、というほど薮の中には入れていなかった。屈折した男の感情を書くのはうまいわ。これはわりと同情できない男のじめじめした話。
『走れメロス』(太宰治)
楽しく読んだ。
もともとがメロスの発する、友への思い、疾走するメロスの勢いが躍動する文章なので、登美彦氏の持ち味と合って、ピンクのブリーフ1枚で踊りまくる姿とあいまてって、愉快!
いいなぁ ばかな男の友情。
私は信頼されている。私は信頼されている。先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。忘れてしまえ。(『走れメロス』太宰治 から)
『桜の森の満開の下』(坂口安吾)
山賊が美しい女を奪い、その女が次々にほしがる「首」を都の屋敷に運ぶが、首を取ることにも飽きて、何もかもに飽きてしまって、山に帰ろうと・・・ という話だったと。
登美彦氏は、小説家志望の男が桜並木の下で出会う美しい女から、作品のインスピレーションを与えてもらい、成功に成功を収め、京都から東京へ行く・・・になっている。書いても書いても、同じものを書いているような気がして、書くことが素敵じゃなくなっていく空しさが積もっていくお話。怖くないけど、作家って自分のなかから何かを絞り出すもののはずだから、誰かに頼って書くのは、空っぽになるに決まっているわ。
何となく。頑張れ登美彦氏!
『百物語』(森鴎外)
関西では有名な劇団の主催者「鹿島さん」(脚本、演出もする)が主催する「百物語」の会に、友人に誘われて参加する「森見君」。
座敷童のような、「鹿島さん」の存在が、噂とか思い込み、で作り上げられたものなのか? それとも、妖怪なのか?? どっちつかずの存在、うっすら怖い。
ISBN13:978-4-396-63279-3 \1400 祥伝社 2007.3
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