2006/02/04

『鹿鳴館』

2/3 18:30@劇団四季自由劇場 A席(1階)



三島由紀夫作



ネタばれしますので、
これからご鑑賞の方はお気をつけあそばしくださいましね。



満席で、年配の男性が一人観劇をしてる姿がちらほら。この間まで女ばっかりの日生劇場だったので、新鮮です。私の両隣も男性だし、片方は男性二人でした。



2時間半、ようござんす!とかお慕いしております、とか、ごめんあそばせ~という異世界の言葉のみが舞台にありました。段々、面白気分で見入ってしまいましたねぇ。



みなさんはどういう気分でご覧あそばすのかしら? わたくし笑ってもよござんすか・・・ はぁ・・・この言葉は苦しい。



筋書きは昼メロお得意の愛憎劇でして、最後は悲劇。



しかし、ただ嘆いて終わるんじゃなくて、急激な西欧化の象徴的な鹿鳴館の舞踏会場へ、偽りの夫婦は偽りの笑顔で戻っていくのでした。ひーっ コワい。



さすが三島。仮面ですねぇ



チラシには、「宿命的な人間関係の縦糸に政治的陰謀や暗殺という横糸が絡み合って描かれる愛と憎しみのドラマ」とあります。



ふーん、で? と思っちゃだめなんですか・・・ で? 



仮面人間の哀しさとか、美しさとか? ともかく欲望うずまく世界が一見美しく着飾った権力者たちを中心に繰り広げられるのを、今の私たちが見るのって! 



自分に引き寄せてみるポイントが見つからないまま、呆然と見ていた気がいたしますわ。





影山伯爵夫人・朝子/野村玲子



いやぁ、やっぱりすんごい人です。良くなかった前回観た『李香蘭』、その日の調子は悪かったんだ!と思いました。



元芸妓の気骨ある女性役で、これがまたびしーっと決まってて美しいのなんの。小柄ですけど、オーラが出てます。凄んでも、笑っても、いい!



わたくし、夜会の女主人になりますわ! デコルテを着て(公式の場に出ない、洋服を着ない、と自分に誓っていたのを、あなたのために破ると宣言)出ますわ!」 



このセリフで、元恋人で反政府論者の清原を説得しちゃうんですからね~ 私のためにそこまで!って打たれちゃうんです。女の手練手管の恐ろしさよ。爪の垢をいただきたいものです。



影山伯爵/日下武史



日下さん、5秒ほどセリフが止まってました・・・ 最初はそういう演出なんだと思ったけど、空きすぎだし、セリフ的にも空ける必要はないところだったので、あ、飛んだんだなぁと判明。血も凍るような静寂でございましたのよ・・・おほほ。



だんだんと、天骨を使った政治の裏世界が見えてくると、伯爵の薄汚れた感が前面に出てきます。すごくヤな奴です。心の奥底まで湿気ってる! いやらしい! うわぁ!



奥女中を手なずけるのに、あの方法は・・・三島には「美しい」という言葉は呪縛できる言葉だったんですかね・・・。



飛田天骨/芝清道



ヘンな名前だと思ったら殺し屋でした。茶の袴姿にジャケットと帽子、ブーツという衣装。まぁぁ素敵! お似合いだこと。



おっしゃる通りです 御前」ってバカの一つ覚えみたいにお返事してまして、・・・複雑。いまだ弾けて歌う芝さんを観られない私でした・・・次こそ。



殺し屋といっても、実際に立ち回る場面もないしね。背が高いのを、猫背気味で歩いて、ウツウツとした人を演じてます。血の赤が一番美しい・・・って呟くような、マッドネスです。殺人は趣味らしい。



清原/広瀬明雄



自由党の残党で、朝子の元恋人。家庭を顧みなかったことを反省し、家出した息子久雄が帰ってくるのを待っている。この濃いメンバーのなかでは、一番共感しやすかったです。政治活動家ってのは別にして。



ラスト、息子をそうとは知らずに自分の手で殺してしまいます。



「(父である自分への憎悪による復讐として)あいつは俺に殺されたかったんだ!」。
お耽美・・・



清原久雄/福井晶一



福井さんも大きい。猫の福井さんを観たいのに、やはり未見。



まっすぐなのに、両親からの愛情に飢えた青年役。恋人がいても、親との関係に悩みつづけています。



下駄の歩き方は板についてないし、仁王立ちしてくれるので・・・これから!と密かに応援してました。ただ立つ、っていうのが、ウソくさく見えないようにするのって、難しいものなんだろうなぁ 



自分だけ兄弟のなかで、母親が違う。それもどこに居る誰かも知らないまま。それが父が狙っている影山伯爵の夫人本人から、自分が実の母だと言われるのでした。



面白いのは、久雄くんは母親への恨み言は言わない点。自分と母親を引き離した上に、家庭を顧みない理想家の父への反発を、より強めるのでした。



大徳寺公爵娘・顕子/濱田めぐみ



『李香蘭』で軍服着てクールに歌ってた人とは思えない、可憐なご令嬢に変身してました。雄雄しく歩くドレスの着こなしはどうかと思いますが、これからね! かわいいからさ・・・



まだセリフをどうやって言うか、迷ってる印象です。強さを見せるべきか、女々しくすべきか。もっとかわいい女の子に徹しても、いいんじゃないかと。  





休憩時間に肩がぶつかっちゃった小母様から「ごめんあそばせ」と言われました。えー、それいつも言うのかな・・・。



衣装は森英恵。きれいでした。でもタカラヅカばりのきらきらしたものではなくて、シックでしたね。



セットは2パターン。影山邸の庭と、鹿鳴館の舞踏場へ繋がる階段前。



この2つとも中央にある一段高い舞台に階段をつけた構造を使っているので、人の動きが同じになるのです。というわけで、セットが変わった!という気持ちになりにくい。



あと、まぁ素敵な衣装でワルツを踊るシーンも見たかったものです。せっかくなのに、もったいない~ 群舞シーンも希望です!



カテコでは、白い花に囲まれた三島の写真がすすっと舞台へ降りてきます。それを出演者が見守るという演出。そんなに三島というのを強調したいんですかねぇ けっこう恥ずかしかったんですヨ。この演出が。

影山伯爵:日下武史 
同夫人 朝子:野村玲子
大徳寺公爵夫人 季子:末次美紗緒  
その娘 顕子:濱田めぐみ
清原永之輔:広瀬明雄  
その息子 久雄:福井晶一
飛田天骨:芝清道  
女中頭 草乃:坂本里咲
宮村陸軍大将夫人 則子:木村不時子  
坂崎男爵婦人 定子:大橋伸予



2 件のコメント:

  1. こんばんは~
    世界のミシマは未だに縁が無くて、やや不安を抱いているくまのすけです。
    来週観劇予定なんですが、楽しみにしている芝天骨がいなそうな予感にも不安を抱いています(;´д`)
    ついていけるかなぁ~

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  2. セルゲイ2006/02/09 14:59

    ��くまのすけさん
    あら? 天骨役ってシングルだと思ってました。また戻って来てるといいですよね。ウツウツとした役で面白かったです。
    それはそうと、私の偏った報告は遠くに投げておいて、楽しんできて下さいね~
     

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