2005/12/15

『キャンディード』

2004/5/3 東京国際フォーラムC 



演出:宮本亜門 指揮:デヴィッド・チャールズ・アベル



キャンディード:中川晃教 ヴォルテール:辰巳琢郎
パングロス:岡幸二郎 クネゴンデ:幸田浩子 
マキシミリアン:新納慎也 カカンボ:坂元健児 
パケット:宮本裕子 マーティン:佐山陽規 オールド・レディ:郡愛子
※WOWOWにて放送したものを録画。

レナード・バーンスタインが「ウェスト・サイド・ストーリー」と同時期に作曲したものです。オペラ歌手による演奏会形式のもので、♪Oh Happy We は何度か聴いたことはありましたが、ちゃんと上演されたものはこれが初めてです。



原作を書いたヴォルテールの時代に流行した「楽天主義」という思想が中心にあって、

この世の出来事はすべて神の意志によるものだ。よってこの世に起こることすべてが最善の結果につながるのであって、それゆえこの世は最高の世界である。



この楽天主義に批判的な作者ヴォルテールが、物語の進行役として登場します。舞台での辰巳琢郎って体も大きいし、いいですねぇ ちょっと訛ったしゃべり方をするのもうまい。



で、楽天主義者の家庭教師パングロスに教えられた私生児キャンディードが主人公です。



楽天主義の実験と称し、クネゴンデと結婚する!というと、私生児のくせにと彼女の親から城を追い出されてしまうキャンディード・・・



ウェストフェリア→ブルガリア→オランダ→リスボン→カディス(スペイン)→ブエノスアイレス→南米のジャングル→エルドラド→ベニス
と世界をぐるっとひとまわり。



その彼の心にはいつもクネゴンデへの一途な愛が。でもって、この二人はやっと再会したと思ったら、いろんな横槍が入って分かれてしまう、というのを何度か繰り返すことになります。
だからキャンディードはクネゴンデちゃんを追い求めて大変!「君の名は」のようだ。



家庭教師だけでなく、城主、国王、聖職者、下働きの女たち、船乗り、などなど。いろんな登場人物が出て来ます。
事件に遭遇し、何度もヒドイ目に遭い(防衛のためとはいえ殺人も犯してしまうし)、絶望しそうになりながらも、素直なキャンディードはそのたびに人生について考えるのでした。



ちょっと足りない人?という雰囲気もありながら、人の言うことをただ信じるのではなくて、自分の経験や体験などから、自分にとっての幸せについて知るというわけですね。



各場面についてコメントしようとすると大変なので印象に残ったことだけ書いてみます。



衣装は大袈裟なところと、すっきりしてるところのメリハリあり。パングロス先生のいぼは、「にほんごであそぼ」のコニたんのような(分かりますか・・・?)衣装で面白い。いぼいぼ。



演じてる岡さん、背が高いところにマンガみたいに大きな山高帽を被ってるので、すごく大きいです。すらっとしててお見事。そんなに歌う場面があるわけではないけど、記憶に残る役どころです。



さらに新納さんの女装が見れました。背が高いので映えて素敵~ 自分にうっとりしている役が似合ってる! 2001年初演の時は、この役は岡さんが演ったそうです。それはハマるよ!



新納さんは、指揮のアベルさんからロックの歌い方封印と言われてたそうです。確かにロックっぽくなかったですねぇ ただしいつもの感じが分からないの。ごめんなさい。



歌といえば、音楽はそもそも歌いにくそうなものなのに、日本語に訳詞するとさらに大変そうです。
オペラの人と、ミュージカルな人と、舞台系の人と。確かにクネゴンデの幸田さんのうまさは突出してたけど、この役の歌をこなすには相当の人じゃないと出来ないでしょう。全体としては歌のバランスはいいんじゃないかな。



中川くんはクネゴンデだけの場面以外は出ることになるので、相当出ずっぱり。こういうピュアな役がすんなり似合うなぁ 演技っぽさがないわ。



♪Oh Happy We 結婚しようという二人が未来の生活を夢見て歌うのですが、キャンディードは 質素でも地に足のついた生活、一方クネゴンデは宝石、舞踏会~と贅沢を歌う楽しい曲です。このすれ違いが、ラストではお姫様育ちのクネゴンデが歩み寄っていくんですねー。愛の勝利・・・?



♪Glitter and be Gay クネゴンデのソロ。身売りされ、ユダヤ人の金持ちと聖職者半分ずつの愛人にされている。お姫様だったのに、穢れてしまった・・・ と嘆く場面に歌われます。
でも生まれがいいからハッハッハーン! (宝石を見ながら)キレイじゃないハッハハーン!」と素晴らしい歌声。見せ場ですね。



キャンディ・ディ・ディ・ディ~♪アホなんだ・バカなんだ♪」と船の客から大合唱されるキャンディード、ほんとにお馬鹿さん! ここのピンクの羊ちゃんもかわいい。あ、沈没・・・ 



タイトルが分からないんですが、クネゴンデがベニスで皿洗いしてる女性たちと歌う曲。またまたいい暮らしとは言えないけど、に楽しそうだ。不満をいうわりには、クネゴンデとオールド・レディは逞しい。女は強いな。



我ら~はおんなよ かよわいおんな♪ 極めつけはキスさそう 美しい唇 これぞおんなのなせる技♪



女というだけで虐げられるのはどうして? それは女が魅力的すぎるから! ですって。
オホホ。







・・・と、まぁ。
遭遇するエピソードをひとつずつちょこちょこ観ている感じでした。あ、さすがにラストは今までの流れがぎゅっと集中していきますけれど。



クネゴンデちゃんは贅沢好きという性格だけど、それは育ちによるもので、どんどんヒドイ経験をしていくうちに(明るいんだけど)、それ以外の価値にも気づいていきます。そこが可愛らしい。
最初から素直なキャンディードより、クネゴンデのほうが人物としては面白いな。世の中の汚い面というか、机上の思想でわかった風に片付けられないこともあるんだって、カラダで知ったというか~。この話は女性のほうがとっても魅力的に描かれてます。



劇場で観たかった~ 



0 件のコメント:

コメントを投稿