2005/12/12

「文楽観賞教室」

第三七回文楽観賞教室@国立劇場 12/6-12/18



初めて文楽を観ました。堅苦しいのかと思ってたら大間違い。笑いあり、涙あり、アクションあり、てんこ盛りの楽しさでした。



しかも休憩はさんで2時間半、たっぷりあるのに大人3600円。私はイープラスの割引だったのでさらにお得。



文楽は観たいと思ってたけど、最近楽しく読んでいるのがポプラビーチで連載の「あやつられ文楽観賞」。またも三浦しをんですが、国文出身者にはたまらん連載なり。



文楽の人形は3人で動かすことと、1番手が裃を着てることだけは知ってました。でもって、黒子はまだしも、裃なんか着てたら邪魔だよと思ってたんです。
ところがどっこい。ま、邪魔は邪魔であっても、気にならないのです。演じている人形たちとも違う世界の裏方に見えます。不思議です。



人形たちがお芝居をしている。というものに見えます。



さて内容ですが・・・



鬼一法眼三略巻 義経と弁慶 五条橋の段
[解説]文楽の楽しみ 義太夫節について 人形の遣い方
新版歌祭文 野崎村の段



●鬼一法眼三略巻 義経と弁慶 五条橋の段
有名な義経と弁慶が出会う場面です。NHK大河ではCGでキラキラになってましたよね。



弁慶のなぎなたを、牛若が(からかってやろうと)すれ違いざまに払います。今まで柳よりも細い腰の女性だ、とオレは法師なのにいかんいかん、と牛若に照れてた弁慶、余計に怒りがこみ上げてなぎなたをぶんぶん振り回します。



ところが牛若様、ひらひらひらとかわし、ついに橋の欄干に一本足でバランス! すごい!ついでにそのまま扇をひらいて見得を切ったぁ~ すてき!
と思ったら、次は弁慶のなぎなたを扇の柄でカンカンと切り結ぶ。おっと、ついに弁慶の武器が取り払われました。観念する弁慶。



この弁慶に大汗かかす汝は何者
ホホ我こそは源の牛若丸
シタリ道理で大抵の人でないと思ふた。今より後はご家来、コレ可愛がって下んせ



今までオレ様だった弁慶が、牛若の武芸やら魅力に参って(というように見えた)「可愛がって下んせ」ってさ、すごいセリフだよなぁ この時、弁慶は頭を地面にすりつけて、さらに足に取りすがるみたいにして頼むんですヨ。はぁぁラブだね!







[解説]文楽の楽しみ 義太夫節について 人形の遣い方
若手出演者による解説だそうで、義太夫節は太夫と三味線の二人が漫才のように説明してくれました。



武家の笑い方と町人の笑い方が違うとか、武家の娘=お姫様と、町娘の歩き方を三味線で引き分けていることとか。笑い方、独特で面白かったです。
ムーフ、フーハ、フーハ!(武士)と聞こえました・・・ 実際に聞くべし!



人形遣いについては、足に10年、左手に10年だそう。頭と右手を担当する人形遣いになるまでに20年かかるのか! 
時間がかかる理由に、人形の動きは1番手の人形遣い(裃つけてる人です)が指示を出すので、その指示の出し方をマスターするのに時間がかかるのだとか。



そう、足に10年。足だけひたすら動かす役の人がいるのです。屈んで客席もあまり見えない状態で。その3人が息を合わせて人形を動かしてるというのって、びっくりです。



最後に「お越しくださってありがとう」と娘の人形で挨拶してくれたのですが、動きが滑らかで美しい~ 
女性の時は、直線的な動きはせずに、曲線でうごく・・・しなを作る感じね。



あ、人形は想像よりも大きかったです。150センチくらいのもあるそうなので、ほとんど私と一緒の大きさ。小劇場で観る限り、オペラグラスも必要ない見易さです。



●新版歌祭文 野崎村の段
歌舞伎でも人気のものだとか。



大阪の油屋の丁稚・久松は養父である野崎村の百姓・久作の娘と結婚の約束をしているにもかかわらず、奉公先のお嬢さん・お染と恋仲に。主人の娘と丁稚の恋は許されるはずもない。お染お嬢さんの縁談が決まったうえに、久松は悪いヤツに店の金を騙し取られて野崎村に返されてきた。



アナタは縁談相手と結婚し、私のことは忘れなさいという手紙を久松からもらったお染お嬢さんだったが、諦めきれずに野崎村まで追いかけてきたのでした・・・ベベベン!



急に帰ってきた久松に嬉しさ爆発のいいなずけ・おみつ。いそいそと鏡をだして髪を整え、お化粧をし、「なます」作りに精を出す。・・・明日は自分たちの祝言なのでなますを作ってるのかしら。
で、びっくり仰天です。

本物の大根が舞台に登場! 
しかもおみつちゃん、きゃーっ帰ってきて嬉しいわ、という風に大根をぶっつり切ります。本物の包丁だ~



で、軒先にキレイな格好のゴージャスで美人の女が「久松さんに会わせて」と来たもんだから、まぁ久松さんの恋人なんだわ、と悟ったおみつちゃん、大根を切るのも怒りにまかせてバンバンバン! 田舎の女だからってバカにしないでよ~!



養父の肩をもんであげてる久松の動きといい、お怒りモードのおみつちゃんのもぐさといい(煙がもくもく出てるもぐさを使うんです)、三里のツボは頭にはないんだよとアチチの養父も、も、可笑しい!



お嬢さんが覗けないように戸を閉めるんだけど、またお嬢さんが開ける、また閉める、開ける・・・ 煙の出てるもぐさで追い払うのも笑ったわー。



久松がお染お嬢さんに再度、言い含めるんですが、お嬢さんはアナタと一緒でなきゃ死ぬ、とカミソリを出して暴れます。必死で止める久松、泣き崩れるお嬢さん。そこまで思ってくれるなら、とほだされて一緒になれなきゃ死のう、という久松。



それを見ていた養父が、恩に背いてはいけないと聞かせます。表面上は分かりましたという二人だけど、叶わぬ時は心中しようと決めるのだった・・・



この話の落ち着く先は、これまたびっくりの展開で。



一部始終を聞いていたおみつちゃん、婚礼の綿帽子の下は髪を切った尼の姿! 自分と久松が結婚したら、この二人は死んでしまうわと思い、二人のために自分の結婚を諦めたのでした。



結婚やめてもいいけど、尼になることないのに!



このお礼は観音様にしましょう、とお嬢さんの母まで登場して、久松も大阪に連れて行くことに。川を母娘が、その川の堤を籠に乗った久松が一緒にゆくところでラスト。



離れていく二人から見た、野崎村の養父とおみつのいる家がだんだん遠くなるという演出にまたまた驚く私(何だか今日は驚きすぎだと思う)
ぐいぐいっと舞台奥に家が引っ込み、川が舞台前にばーんと登場、堤も出てきて・・・という演出でした。
この場面で演奏された三味線が、テンポが速い曲でして、ぼっーっと聴いてるとジャズみたいにも聴こえました。モダンな感じがしたな。



最後に笑わせてくれるのは、籠を担ぐ人と、船の船頭さん。ある程度走って汗だく。てぬぐいでパーンと体を拭いて、汗をぬぐう仕草・・・ 芸が細かいです。



船頭さんは竿を川岸に差したと思ったら、抜けなくなってそのまま川におちちゃった!必死で泳いで船に戻ってました。やれやれ大変だった~ 





まずは暗い話じゃなくて、楽しそうな演目を選んでじっくり観てみたいかな。義太夫の語りのリズムが何となく大阪弁風なのも、面白かったですね。



人形の表情までも、客の脳内では表現されていくのが摩訶不思議です。わざわざ人形で演じるとも言えるし、人では難しいから人形なのかもしれないし。



また観にいこうと思います。文楽観賞教室の目的、私には達成されてたな。
すごく興味がわいてきた~



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