2010/08/08

『インセプション』movie

INCEPTION 2010年 アメリカ
クリストファー・ノーラン(Christopher Nolan)監督
ハンス・ジマー(Hans Zimmer)音楽



レオナルド・ディカプリオ 渡辺謙 ジョセフ・ゴードン=レヴィット
マリオン・コティヤール エレン・ペイジ キリアン・マーフィー
トム・ハーディ ディリープ・ラオ



☆☆☆☆☆



物語のアイデア自体は斬新すぎないのに、それを納得させる展開のスムースさと、すっきりキレのある映像と音楽の一致で、こんなにも面白くなるのか!という5点満点。



*****以下ネタバレ*****



■SFなんだけど、SFっぽくしない感覚。リアルさと夢の不安定さが同居。この微妙さがたまらない。



予告編の映像は本筋と切り離された状態で使われているので、意外とストーリーのネタバレになっていなかったです。
街がめくれ上がるとか、人がゆっくり飛んでいるなどの映像的な不思議さ自体は、夢の世界を表現する手段に徹しているところに好感。



他人の夢=深層意識にあるものを盗んだり、または他人の考えを植えつけたりする・・・かなりの犯罪なんですが、その是非については焦点は当たりません。



サイトー(渡辺謙)もライバル社を潰そうとしてるだけなのに、戻ってこれて良かったとか思えます。キリアン・マーフィーも、それ嘘なんだよと思うけれど、いい嘘かもと思えたり。



とにかく、コブ(ディカプリオ)がこの仕事を遂行できるのか・・・ドキドキ、で魅せてしまうんですねー。だって、ディカプリオが好きだし。



■分かりにくいかと思いきや、分かりやすい展開。
夢の中へ入ること、がどういうことなのかを2回も教えてくれてから、本題に入る周到さ。鈍い私にも親切な。ありがとうございます・・・



1、サイトーを騙そうとする最初の場面。夢から醒めたのに、まだ夢で、そこからどうやった目覚めるかの手順を示す。まだ夢の中にいることを、なぜサイトーに悟られたかの理由も明確。


2、夢の設計士を新人にすることで、彼女が練習していく過程を見せる。観客も一緒に練習。うまい、うまい。なるほどー。


さらに1と2で、いずれもコブの仕事を邪魔するモル=妻(コティヤール)の謎だけが小骨のように残る。それは、コブの心の奥に仕舞い込んでいる秘密である。


表のストーリーがサイトーの依頼による植え付け=インセプション、裏のストーリーがコブの抱えている妻との問題。
深層意識はコントロールできない分、これら二つの問題が絡みあってきます。うまい、うまい。


■夢の持つ特性。
夢のなかでは不条理なことでも受け入れられる。深層意識が反映される。


目覚め方がナイスです。「キック」されて、落ちると重力の変化で目覚めるというもの。眠りかけのとき、落下感で目覚めることってあります。あれだぁ!


■夢の中で死んでも、目覚められない。
浅い夢なら、キックなどのきっかけ以外では、夢の中で死ねば目覚める。けれども深くもぐってしまったら・・・死んでも目覚められない。


その夢からどうやって醒めるかという大問題について、二通りの展開を用意するのは、脚本のうまさでした。一部メンバーしか知らなかった後半に明かされる大問題!


もし死んだら「虚無」に落ちる、と訳されていたけど、セリフは「limbo」。私は日本人なので、リンボについて実感がなく、妙に可笑しかったです。キリスト教の概念ですよね、悪人でもないが天国に行けない、狭間。


■ハンス・ジマーの音楽
時間感覚が夢の階層によって変わっていくのを、ドーンドーンと時計の鐘のような繰り返しによって喚起させていて、うますぎです!
これ以上の音楽なかったのではというくらいに、ぴったりでした。スケールが壮大で、見るものに緊迫感を誘う音楽を作らせたら、最高ですね。


■キリアン・マーフィー
が、出てたのねー。ディカプリオ&ケンワタナベばかりで知らなかった。好きなので、嬉しかったわ。


全体的に、俺様(スーパーヒーロー)映画じゃないのが監督の節度ある美意識なのでしょう。主役と脇役、という図式ではなく、主役のディカプリオとの関係のバランスが良いです。
『ダークナイト』も良かったので、他のノーラン作品も見てみたいものです。きっと私と相性がいい。


しかし、ディカプリオは追い詰められた時の表情が最高だわ・・・ キューン。




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