2014/06/30

『ビッグ・フェラー』5/31-6/1 6 マイケルが一番恐ろしい

大千秋楽(7/5 びわ湖ホール)まで、あと少し。少しずつ時間をあけつつの公演ってどんな感じなんでしょうか。
東京公演とは、きっとまた深みが増しているのでしょうね。見てみたかったー。

さて、私のビッグ・フェラー思い出しメモも、シメておかねば。うまく総括できずに、だらだら書いているのですが、最後の場面について書いておこうとおもいます。

■2001年9月11日、朝、マイケルの部屋。
アメリカ同時多発テロ、もしくは<911>と呼ばれるテロ事件です。お若い方には少し遠い話かもしれないですが、私にとってはつい最近の出来事のように感じます。ニュースを見ていたら、いきなり速報、わけが分からないままライブ映像が流れてくる。
事件後、アメリカは報復行動に出ましたが、それも間違いが多く、相手国の民間人もたくさん犠牲になりました。

なんてことを思い出しながら、おだやかな9月の良く晴れた朝。マイケルの部屋が舞台です。登場人物はマイケル1人、セリフはありません。ラジオが流れ、<ルエリコーナー>についてちょっと出てくるあたり、地続きの話だなぁと思わせます。もはや、なぜルエリコーナーなのかを知る人も減っているのかもしれない。

日常の考えなくても出来るくらいの毎日の行動、部屋着でコーヒーを飲み、シリアルを食べる。歯を磨く。制服に着替える(正装ではなくて、消防士のキャップ、ジャンパー) 車の鍵をじゃらっと掴んで、消防車のサイレンの音をBGMに出て行くマイケル。何も考えなくても出来ます。

ここの視点としては、
1、観客はこの日が何の日か知っているが、マイケルはありふれた日常のヒトコマを過ごしている。

イスラムのテロリストは何を考えているのか分からない、と散々話していたマイケルが、その現場に向う直前の風景です。
イスラム教徒でもなく、アイルランド人でもなく、アメリカ人でもない、平和ボケなどと言われる日本人の私には(そして過去は水に流しちゃう日本人)、暴力でうったえれば必ず報復が起こり、収拾つかない泥沼になるとしか思えないけれど、マイケルの日常には暴力の応酬が大なり小なり、常にあるのですね。

2、観客は直前のシーンでコステロがマイケルの浴室で死んだことを見ているので。
ま、まだこの部屋に住んでいるのか!

↑私の感想ですけどね。良く住めるな・・・ お風呂入るんでしょ? それよりトイレも同じだものね。こう思うと、ここまで特徴がなくて全然前に出てこなかったマイケルという役について、ゾワゾワした気持ちになります。
この人、本物なんだ。ホントに、ホントに、虚無がすごすぎて穴が深すぎて、奥底なんか見えない!

コステロやルエリには、越えられない一線がありました。メキシコ行き、に手を貸してはいても、各自のなかにどうしても、それは受け入れられない、というラインがあったのです。
怒っても、悲しんでも、ここから逃げ出さす、仕事をこなし、むしろ良識ある市民として生きているマイケルが、最も何もかもを受け入れて(拒否するラインがないのかもしれない)、父親のように慕った人物を殺した(と、いうことで書きます)浴室で、部屋で生活し続ける。

こえええよー。

崇高な理想を日々唱えて、いかにも戦士のような生活を送らず、善良な市民として生きつつテロ組織を支援する活動をする。
こういう<テロリスト>もあるのだ、いや、こういうテロリストのほうが実際は沢山いるのかも。

人間の生き方として、マイケルのような人こそ恐ろしい人と言えるのかもしれません。暴力に訴える人も、やはり恐ろしい人ですし、私は受け入れがたいと思っているけれど、当事者なのに傍観者のようにそこに居る、マイケルも恐ろしい人です。

思い出した、二都物語の浦井くん。
私のニブチンぶりの話ですが、『二都物語』初見時、芳雄くんの演技が輝きまくっていて、浦井くん大丈夫?って思ったことを思い出しました(リンク先)

結論からいえば、大丈夫だった。
私の目が、アタマがニブいだけだったのよね。

特徴がなく、覇気もあまりなく、言われるがままとチクリ言われる男の、怖さですよー。

主演の内野さんあたりは、お若い頃からそりゃもう素敵だったし、演技します俳優という居住まいで、漫画のキャラ越えした(→宗方仁)時には、さすがウッチー役者魂などと感動。
こういう方向で大きな役者さんになっていくのだろう、と道が見える感じでした。スケール大きい役者ってあたりでしょうか。主役も食いかねないが、脇もできます。

浦井くんファン(わりと好き、くらいのファンだといい続けてるけど、最近違うかもしれない気が)として、食い入るように見つめているのに、演技うまい!という感じもないのに(大変失礼な書き方でどうしていいか分かりませんが、浦井くんは<芝居上手>ってくくれる感じじゃないんだよなぁ) それなのに、どこまで伸びるのか見極めきれない。
キラキラも出るのに、オーラも消せるんだな・・・健治、これからも楽しみにしてるわー!

あまりに発展途上の浦井健治から目が話せないよ。伸びしろが見えなくて、楽しみすぎて、きっとオファーがたくさん来てるところじゃないかと推察します。
天性とか魔性っていう役者さんもいますが、浦井くんは努力のあとだったり、格闘が垣間見えるように思えるのが、魅力なのかも。

ちなみに、マイラブ祐一郎も努力(垣間見せないけど)タイプだと思ってます。毎公演、レベルアップしてるのが愛おしいという・・・

大千秋楽をご覧になる皆さま、私の代わりに進化しているビッグ・フェラーをご堪能くださいませ。

2 件のコメント:

  1. あいらぶけろちゃん2014/08/05 23:45

    コメントしたい記事がたくさんあるのですが まずはこれから。
    セルゲイさんのブログを改めて読みなおしながら これは深い戯曲だなぁとこのお芝居に出会えた幸せを今さらながらに感じています。
    あの部屋に住み続けてるマイケルって怖ろしいですよね・・・

    そして 演技うまい!という感じもしないのに というのにうんうんと頷いてしまいました(笑)
    それでもいろいろな面をみたいと思わせてくれるんですよね 健ちゃんって。
    豊橋で観た時は 最初の方のバタンバタンが抑えられて二人のふざけっこよりはラブシーンらしくなってました♪それでも上半身裸でいるときよりシャツをはおった方がそこはかとなく色気がでるのは変わらなかったです(笑)

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    1. 失礼を承知で言ってしまいますが、本当に浦井くんは演技巧者というタイプではないし、降りてくる系でもないのに、でも惹きつけられる俳優さんだなぁと感心しきりです。

      しかしウッチーの上手さや引きつけ力がすさまじかったですね。
      舞台を観られた幸せを思わせてくれる方でした。

      そっか・・・(笑)ちょっとはいちゃついてる感が出るように!
      運動?って感じだったものネ。
      裸は可愛さ満点でしたっけ。

      テレビ放送も楽しみです。

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