2014/07/01

『宝塚ファンの社会学 スターは劇場の外で作られる』宮本直美

もう少ししたら、大劇場で星組さんの舞台見るので、読んでみました。先日WOWOWで見た『銀河英雄伝』はマントがバッサバサで、私、もしかして宝塚いけるかも・・・と恐怖。これ以上、興味を広げてはいかん。宝塚の娘役さんたちが高音で歌うのは、男役さんたちと区別できるようになんだねー。
(私、ものすごく宝塚に関しては初心者というか、ほぼ何も知らない)


さてこの本ですが、ご本人もあとがきに書かれていたが、社会学、というところまでは到達せず。ただし、「ファンクラブ」と宝塚のスターとの関係、経営側との関係、ファンクラブ内部の関係を細かく記載してあり、何もしらない私には、ほほーと唸ってばかりの1冊。

「ファンクラブ」とは東京宝塚劇場の前で、おそろいのジャンパーを着て、きっちり並んでいるあの方たちの活動も含まれる組織のことで、ジャンパー(とか、スカーフとか)はスタイリッシュであることよりも、同じファンクラブであることがきちんと分かることが大切とか。あ、この人垣は「ガード」というのか。

劇団主導というか、劇団主催のファンクラブでないというところからして、私は仰天して読んでました。しかし、私設だけれど、劇団に届け出していて、チケットを割り振りしたり、生徒(タカラジェンヌさんたちですね)さんとのお茶会を催したりする。

なので、一般のファンと生徒さんとを区切る人垣をつくるためにも、「ファンクラブ」ですよっていう印が必要なのだという。どんなに先に一般ファンが最前列にいても、「ファンクラブ」さんたちの人垣がそれよりも前に出るそうです。・・・・いい面もあるだろうけど、どうなんですか、これ。早く来たってムダなのですね。ちょっと嫌だ。
まぁ熱狂的なファンにもみくちゃにされる生徒さんを守ろうということで、このような形になってきたと作者は見ているのですけれど、そんなの劇場側がどうにかしないのですか。

ほぼ公認だが、いわゆる劇団運営とはちょっと違う「ファンクラブ」システム。どうなの?って思いつつ、読み進めていくと。

ファンクラブの活動そのものがスターを押し上げる一面があり(全くないとは言い切れない)、だからこそ贔屓の生徒さんがより高みに上れるよう、入り待ち出待ち(ガード)、連日の観劇、お茶会出席、グッズ購入などなどなど。

宝塚内部の、スターシステムについても詳細に説明されていて、スター路線に乗ったからといってそのまま組のスターになるとも限らず、組替えなど、けっこうスリリングな出世システムがあるとのこと。
でもって、今の組内部の序列・・・・というものが、舞台の演出上もきっちり反映されるということで。
ファンのみなさまは、上演が始まると、劇団の意向を演出上の差異から読み取るのだそう。へええ。

これを読んでからWOWOWで宝塚の舞台を観ていると、なるほど!と膝打ちまくりです。登場順、スポットライトの当たり具合、衣装のキラキラ具合、セリフの量、歌の量、歌いだしの順、すべてが序列ー!

そうだったのかー! 眼からウロコですね。常識?

ラストにトップスターが出てくると、出たー(きゃあ)ってなります・・・そういう演出だったのね。

劇団側からすると、この自主的なファンクラブ活動こそがファンを劇団に引きつけるための装置にもなっているのね。まだ駆け出しのころから応援してもらうのは有難いし、目の肥えたファンならば新人さんへアドバイス的なことも伝えられる(指導ってことじゃなくて、ファンの意見、ファンの見方を知る機会になる) 
スター路線となってくる生徒さんへの熱気をファンクラブが醸しだすこともあるでしょう。

生徒を見境ないファンからも守ってくれるファンクラブなんて、有難いわよね・・・そうよね。一般人は少々損した気分だけど、劇団、生徒、ファンクラブにはみなメリットあるのね。

そしてびっくりなことに、ファンクラブ内も、生徒さんのように、貢献度によって序列が発生している。ひいいい。チケット購入額、ガードへの貢献など。確かに、良席が割り当たると思えば頑張るのかもしれないですが。同じ生徒さんが好きならば、当然仲良くしつつ、でも席位置で微妙に思うところが生まれるんだろうなぁ

さらにさらに、生徒さんの組内での位置が、相互のファンクラブの序列に反映される・・・ ひいい。もしくは音楽学校を卒業したときの成績順・・・ひいい。

あんなにキランキランの夢の世界の宝塚が、こんなにも序列社会を築きあげていたとは。

ご贔屓のためなのか、ファンクラブ自体が生きがいなのか、区別するのも大変そうですが、とにかく時間も財産もけっこう必要でしょうね・・・。 楽しく出来るのなら、楽しい活動かもと思います。

が、私は公平に抽選でいいや・・・

今まで何だろうと思っていた「総見」もこれで分かりました。きっと生徒さんからの目線がぐいぐい飛んでくるのですね。
(祐一郎もファンクラブ席に目線飛ばしてくるので、これは嬉しいのが分かる!)

育てるゲームじゃないが、宝塚もトップになった日に卒業の日を思う、去る日がいつか来ることが分かっているからこそ、集中的にのめりこんで応援することも可能なのだと作者の意見でした。

退団後は、それまでのようなガードもないし、応援してた人であっても情熱は落ち着く人がおおいらしい。そうですか。そうですか。

著者の宮本さんは、実際にある時期にあるファンクラブに所属して活動していたとのことで、内部から見た「ファンクラブ」とは、という1冊となっています。私のように、宝塚・・・ファンクラブ?という方は興味深く読めると思います。
ぜひ、「社会学」として読み解く論文もいずれ読みたい。期待しています。

ISBN:978-4-7872-3326-4

青弓社

4 件のコメント:

  1. こんにちは。興味深い本ですね。私もWOWOWでベルばらなどを観るうちに、以前は抵抗があった宝塚にも興味が沸き、この秋のエリザベートに行きたいと思っているところです。

    日生劇場での観劇後、宝塚劇場前でのファンクラブによるチケット配布の光景を見てびっくりし、何が起こっていたのかを後でファンの方に教えてもらったことがあります(笑)そういえば、NHKの特集番組でも入り待ち風景が取り上げられていましたね。

    エリザのチケットが取れることを祈りつつ、この本で予習してみようかと思います。

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    1. ヅカ版エリザはDVDで一路さんのを見たことがあります。
      さすがの演出で、シシィよりトート閣下のほうが主人公になってて驚きました。
      ヅカ版から東宝観た方は、それはびっくりしただろうなぁと・・・

      次回のはどうでしょうね? 無事にチケットが取れますように。

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  2. こんにちは
    いつもおじゃましています。
    宝塚についてはある程度は知っていましたよ。大阪なので。
    でも最近もっと詳しく知ることになりました。ネットに色々でていますよ。
    序列があるのは知っていました。トップスターをつくっているのですね。
    トップになったらお金がいること、チケットのノルマもあることなど。
    商業演劇ですから当たり前のことらしいですが。
    2000万あれば音楽学校に入れるという話もあります。
    トップになって観客が入らないでやめた人もいるとか。
    やはり経済力が大事らしいです。
    「清く正しく美しく・・・」というのはうそらしい。
    劇団内は常に競争で大変らしいですよ。
    女性の軍隊だそうです。
    この本、読んでみようと思います。
    ありがとうございました。

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    1. 学校に入るまでも大変で、入ったら入ったでいろいろとありそうですね。
      軍隊! 体育会系という言葉では足りないのですか。

      軍人さんたちのキラキラしいステージを楽しみたいと思いますー。

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