内野聖陽/デイヴィッド・コステロ 浦井健治/マイケル・ドイル
明星真由美/エリザベス・ライアン 町田マリー/カレルマ
黒田大輔/トム・ビリー・コイル 小林勝也/フランク・マカードル
成河/ルエリ・オドリスコル
演出:森新太郎
脚本:リチャード・ビーン 翻訳:小田島恒志
@世田谷パブリックシアター
IRA NY支部のリーダー、コステロとその部下たちの1972年3月17日~2001年9月11日までの約30年を、ほぼマイケルの住居を舞台に描く物語。
マチソワ、マチネ。という濃すぎる二日間で見てきました。
1回目、ただただ見入る。
2回目、あれもこれも、伏線すぎてスゲー!と驚きながら見入る。
3回目、伏線を理解したうえで、あまりに特色のないマイケルという役について、一番強い兵士とは・・・ポーン、という冒頭のコステロの言葉の深さに恐れ入る。
コステロは自分たちの行為が<正しい>ことかどうかが最も大事なポイントだと考えていて、イギリスの理不尽な支配からアイルランドを独立へと導きたいと思っている。
彼を軸にしたNY支部のメンバー、アイルランドから偽造パスポートで逃げてきたルエリ。1972年では、相当なアイルランド訛りで話す。
それから、アパートの持ち主の消防士、マイケル。
ついで、差別主義者らしき警官のトム・ビリー。
舞台は以下の時系列で進みます。
1972
1981
1987
1990
2001
世界情勢とあわせて、IRA活動内容も変化し、’72当時は同情的だった世間も、一般市民を巻き添えにした’98オマー爆破事件で、完全にそっぽを向かれている。
年齢の変化やIRA組織のあり方を一番受けて表現していくのが、リーダーのコステロの言説。
各シーンごとに、ターニングポイントとなる事件が共演者から語られ、演じられていきます。
*1972年3月17日 セント・パトリック・デイのパーティでの演説。
血の日曜日事件を受けての演説から始まるが、このウッチーは自信に満ち満ちていて、Big Fellahと呼ばれるにふさわしい大物感が。葉巻をくゆらすウッチー♪
セリフを発さず、立っているだけなのに、ぐいぐい引き付けられる。さすがです。
→
■パーティー客たちの声はあるが、舞台にいるのは内野ただひとり。客席の私たちまでも、コステロの演説を聴いているかのような錯覚をおぼえる。熱き男、頭も良さそう。ユーモアもある(ウケてる) ここで面白い気持ちになるのだが、全くIRAやアイルランドの独立について何も考えたことのない私なのに、コステロの話に引き込まれていって、一緒に活動したいような気にさえなるのだった。
カリスマってこういう事ね! スゴイ。怖い。
次の場面であるマイケルを入隊させるかどうかの話題の場面でも同じような気持ちが起こり、つまり、強固な思想や理論など持たなくとも、政治的活動・・・武装組織に入隊するのだなと。
むしろ多くの隊員は、入り口は単純にアイルランドのために活動したい、という大きくて正義である目的があれば十分であり、ただし活動内容は割り切れないものも多く含まれるのです。
コステロがアイルランドの歴史の話をはじめると、ルエリは歴史の本などお偉いさんしか持ってない、と拒否反応おこしてたっけ。歴史を知らずとも、IRAメンバーである、と。そんなルエリも後半はインテリ系に大変身します。
■マイケルの部屋のキッチンで、Tシャツとトランクス姿で超かわいく訛りまくってコステロに電話してるルエリ。やだー、成河さん可愛い。小柄なんだね。
そこへ前日飲みすぎの二日酔いの体で部屋から出てくるマイケル、浦井くん。
喋り倒してるルエリにウン、ウン、くらいしか返答しない。あまりに喋らないから、アイルランド人ぽくないって言われる。
浦井くんはお酒のまないからきっと二日酔いも未経験、私は良くわかるから、ルエリがうるさいー!のが分かるわ。ちょっと飲みすぎ後悔してたりね。コーコナッツの毛が全部抜けちまったよーう♪・・・すごい歌でしたね。
壁に釘で打ち付けられてるギターを見て、<フランク・マカードルが怒るよ> ね・・・何気ない会話だけど、ルエリが言う溶けるほど殴られて、小便かけられて、また殴られて・・・の話が、本当になるとか、脚本に伏線がどんだけ盛り込んでるのかー。
■さらに、おパンツまぶしく下着姿で出てくるのが、カレルマ。
プエルトリコ系の女性で、警官トム・ビリーの人種差別発言にもフフンと流し、プエルトリコはアメリカに侵略されたのにと言われると、プエルトリコ人はアメリカ人になりたいのだ、と答える。
アイルランド独立を求めるIRAの立場とはまるで反対で、世の中には侵略されたとしてもこのようにする人たちもいるのだな・・・と対照的な立場がひとつ提示された感じ。どちらが正しいということじゃなくて、どちらの立場も存在しているということ。
カレルマの町田マリーさん、だまっているときれい目な方ですが独特すぎるセリフまわしに、私の胸はかき乱されまくり。以前、テレビドラマで見たときも同じ話し方だったので、役づくりっていうより、いつもこうなの!と衝撃でした。
たとえ難いけど、私にとっては黒板を爪で引っかいた音、並に不快指数が高まる話し方で、男性チームにおいての町田さんは、かなりのスパイス感がありました。
違和感といいましょうか。チームコステロさんたちと、かみ合わない感じ。全くの外部の人という意味では、いい配役かもしれない。
前日、酔ってカレルマに自分はIRAメンバーで英国から逃亡してるとルエリに言ったことが判明。どんだけお喋りさ、ルエリちゃん。ぎくり固まって目を見交わすルエリとマイケル。
とっさに、マイケルが<ルエリがそういうなら、真実ではないってこと>と誤魔化します。マイケル冷静沈着である。女性に対しても、なかなか紳士的らしいようだ。
■警官のトム・ビリー。うわぁ・・・嫌い!と理性より気持ちが先に反応させるべく、最低な警官の姿を冒頭場面から見せつけます。実際の黒田さんまで嫌いになりそうな勢いで、ものすごく嫌悪感を呼び込む態度でした。
同性愛者差別、人種差別を一気にまくし立て、精悍とはいえぬダレたボディ。ホームレスを的に銃の練習、などといい、ほんとに最低。
しかし、マイケルはトム・ビリーと知り合い(というか、一緒に旅行するくらいだから友人)なのだ。マイケル、なんで!
黒人の話はステージ(素人参加のお笑いコンテスト)ではするな、と言ってあげてるけど、何で仲良くできるのか謎だわ。と、思うでしょう。それこそが、マイケルのマイケルらしさなのだね。
くるもの拒まずというか、心が広いのかあまり考えないのか、おおらかすぎるのか。のちのち、この性格が恐るべきマイケルの姿となる。
■コステロがやってきて、IRAに入隊したいのは君か、などなどインタビュー。
<君はコミュニストか?ゲイか?>と質問。これも伏線で、いま思い返すと脚本練られてるわと感心しまくりです。
→ジェリー・アダムスがアイルランドを社会主義国家へと武装闘争から政治闘争に場所を移したことで、コステロの存在意義が薄くなっていったから。
女性にぐっと来ます、と答えるマイケル可愛い。ぐっと・・・(と、言いながらメモるコステロも)
ぐっと来た女性が殺されちゃうマイケル、あああ伏線こわい。
コステロとルエリの会話。マイケルはどうなの?と探りを入れるなか、マイケルは<密告者が殺せるか?>というやり取りが。これまた超伏線、1回目は何も気づけなかったなぁ・・・・
そして、最もつよいのはポーン(チェスに例えてる)というコステロ。一番弱い駒だけど、一番たくさんいて、彼らを押さえておけば勝てる、静かに我々を援護してくれる兵士となる、と。
家も隠れ家にぴったりだし、問題ないと思う。何か言いたいことは?と促されて言うマイケルは、
自分の家系はカトリックではなく、<プロテスタント>だと答える。
まさかそんな! コステロも質問しないくらい当たり前の前提だということで、ドヒャーな発言ですが、ここでコステロは長々とルエリに質問コーナー(この後何度も質問ですコーナーは登場)で、18世紀の活動家ウルフ・トーンはプロテスタントだった、とシメてお見事♪
そうだ、浦井くんのインターフォンに出る言い方が、職業柄な感じです。ハイッ(短く、気持ちよく、低めの声で返事)
■コステロは、IRAに入隊すれば結婚できないし、人生終わり(→脱退できないから。それもポーンに似てる。ポーンは後ろに下がれないから)だと言うが、マイケルは彼の中では葛藤は既にないらしく、判っています、ハイ、と回答してます。
マイケルみたいに真面目そうで、浦井くん演じるように爽やかでそれなりにモテそうな青年でも、人生終わり、をすんなり受け入れるものなのかな。というのが疑問だったのですがー。
話が進むにつれ、自分がアイルランド系だったことと、血の日曜日事件があったことがきっかけでIRAへ接近したのだが、一番の理由は自分の居場所、柱になるような拠り所を求めていたのだなと分かってきます。
コステロとマイケルは、たくさんの会話をしてるわけではないし、たまに話すマイケルの言葉は、ちょっと会話からズレています。あのね!これ浦井くん自身がハズしてるんじゃないんだよー(そうに決まってる)。わざと、会話にうまく乗れない人を演じているのです。
マカードルに拷問されてるマイケルをいたわるコステロをみて、この2人は父子関係なんだなぁと。コステロの部下への態度は、父性ですね。
そして素直な若者が、30年後どうなるのか。
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