2014/05/05

『レディ・ベス』4/19マチネ-2 慈愛に満ちたアスカム先生、るんるんぐー

・育三郎ロビン。初見は育三郎ロビンからとなりました。この時は、いつもの育三郎な感じでチャラくて優雅ねぇと思っていた。そして、翌日加藤ロビンと見比べてみて、自分が加藤ロビンのほうが好みだと気づく。

育三郎ロビンへの不満というか、始まったばかりだし平野さんにテンポをあわせてるように見えたのだけど、ベスがこれまで親しんだ世界の外を見せる役割とすれば、ベスの住む世界の人と近いしい雰囲気じゃないほうが、ロビンの存在がきりっと立ち上がるのだと思う。
その点で、加藤さんの声楽系じゃない歌い方や、男っぽい雰囲気、話し方のほうが今のところ、リード中です。

でも、育三郎くんも深めてくる俳優なので(この点は、信頼してる)、優しくチャラく優雅なロビンでありつつ、ベスに知らなかった世界を見せてくれる役まわりを、素敵に見せてくれるんじゃないかなーと、期待。
しかし、チャラい風なのに筋の通った男ぶりとして見せるのって、加藤ロビンの直球派よりすごく難しいよ。いまはベスのこと愛しててもう恋なんてしない、とか言うけど、そのうち別の子と楽しくやってそうに見えるのだった。

ジャグリングに気をとられているのが、両ロビンともに頑張れ!でしたね。歌うたいさんなのに、ジャグリングまでしなくちゃいけないものなの?

幽閉されてるベスを探してくる、ロミジュリ的な演出。ツタでぶーんぶーんと飛ぶより、どう見ても壁をよじ登ったほうが早いと思います。恋人たちよ、気づいて。

ロミジュりにしか見えなくても、というか、もじっているんですよね? 家に縛られて愛が成就しないということを。ロビンのボーイズたちが、木の枝で二人を隠すのは、マクベスの演出のもじりか。シェイクスピア・イヤー(生誕450周年)だからかもしれない。
形式的な演出ですが、分りやすくロマンティックでわりと好き。女の子の憧れじゃ・・・命がけで自分に会いに来る男って。やーん、いいわねー。

・祐一郎アスカム先生!きゃーーー!
きゃーーー。
きゃーーーー。

ほぼ全編通して、穏やかで辛抱強く、公正さを求め、男女ともにその人間性を見つめる目。静かな眼差しのなかに、ベスへの愛情が広がっています。

冒頭の、ベスの生い立ちを語るシーンや、2幕にもあるベスが国王となるべき、という歌(プログラム買ってないので、タイトル分らないの)が長いシーンでしょうか。
後は、家庭教師としての登場場面。多くはないけれど、ベスの女王となるべき礎を作った人間であることが分ります。
お着替えはないのね・・・あ、髪はチラシより短いのね、などなど。
ツイッターで命名されていた、上着の胸のあたりで両手をグーにしてガウンを掴んでいるおてては、<るんるんぐー> 可愛らしい命名、使わせていただきたいと思います。↓

ベスとともに城にいる祐一郎アスカムは、権力や金にこだわらず、大きな視点で国の将来とベスの背負うべき責任について思慮なさっているようです。

ベスが恋に迷い、自分らしく生きたいと思い悩むとき、アスカムはあなたにしか出来ないことがある、と諭して去っていきます。平野ベスは、<怒ってらっしゃるのね>と言っていたかと思いますが、私は怒っているようには聞こえなかったな。ベスにしか担えない大きな責務を語りたいけれど、ベスが自ら自覚しなければならないことだ、とも分かっていて、そのせめぎあいがあるから、語調が強くなっていった、とった感じ。

言い方によっては、アスカムの希望を押し付けているようにも聞こえてしまいかねないセリフだったと思うのですが、その点では年配者となった祐一郎アスカム先生は、自分の思いを押し付けている感は薄い。葛藤の中で言った言葉です。
未見ですが、石丸さんはココをどう表現しているのか楽しみです。ぎらぎらしやすい場面でもあるから。若い石丸アスカムのほうが、怒ってる、という雰囲気になりやすいかもしれない。

素直にベスの境遇に心痛め、初めての恋にキュンキュンしている私=観客の立場から、この場面を見てみると。
愛を諦めないでと歌う母・アン・ブーリンとの対比でもあるので、アスカムが世間・社会を表現してしまう面もあります。祐一郎は、そのあたりが超越できてて、本当に国の未来を見据えて自分の考えを述べた、という感じ。押し付けないからこそ、ベスも自分の中で、自分にしか出来ないことを考えての結論に至ったという流れでした。恋に燃える相手に、正論を押しつけても逆効果でしょうしね。

それにしても、愛に破れたアン・ブーリンが愛について歌っているのは、なかなか怖かった。

戴冠式のベスを、誇らしげに、かつ尊敬を込めて見つめ、頭を垂れるアスカム先生。美しい場面でした。そして、いままでイスを並べて学んだ先生、愛で育ててくれたキャット、恋した男性と、はっきりと線が引かれました。うわーん、涙。
少し不安さを残した表情の平野ベス、でもこれまで支えてくれた皆が、これからも見守っているわ!などなど、勝手に応援。

表に出ないけれど、これから英国を発展させていくエリザベス女王の賢さを伸ばした教師という役を、存分に演じてました。

禅さん演じるガーディナーと対立してる(側には涼風キャット)のを見ると、数々のクンツェ&リーヴァイ作品が脳裏に浮かびます。お出かけの際に持っているバッグを見れば、あ、トート閣下のドクターコスプレ衣装でも入っているんじゃないか、とか。他にもマキシム祐一郎やら。そしてこの3人が、ヒロインを引き立てる役をしてる贅沢さを、しみじみ。
最近、元気な祐一郎を見るたびに、じーんとしちゃうわ。はー。

いつもの祐一郎(の役)なら、ガーディナー司教くらい一瞥して下がらせるところですが、ちゃんと大司教への態度で禅さんと対峙。
祐一郎だって、いろいろ出来るんだぜーとか思う。すみません、祐一郎に向って子供みたいな扱い・・・ つい、カワイイお方なので<出来たわ!>とか言いたくなるのだった。出来たわね、祐一郎!

バズーカなしの優しく知的な歌も、これまでの祐一郎が担った役とはちょっと違いましたしね。大声対決はベスとメアリの異母姉妹に任せ、アスカム先生はその先を歌うの。低く心地よく響く声に、酔いしれました。美しい、美しい声は健在。細胞が震えるわ。

遊ぶ役でもないので、このままお優しさのなかに芯のあるアスカム先生としてラストまで演じていくのではないかと。

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