2013/09/08

『二都物語』8/23-25マチネ-6 二人はきっと素晴らしい人生を送るはずだ

友人が言いました。あの二人(ルーシーとチャールズ)、シドニーの死を背負ってこれまでのようにいい関係でいられるかしら?

だいじょうぶ!

というか、大丈夫であってほしいところですね。
シドニーからすれば恩を着せているつもりは毛頭なく、ある意味では自分自身のためにしたことでもあったはず。
天然純粋系のルーシー&チャールズならば、素直に、驚くほど素直に(きっと苦しむ時間もあるだろうけれど)小さなルーシーを慈しみながら、手を取り合って堅実に生きていってくれるでしょう。

見ている側にすれば、芳雄シドニーが命を投げ出す価値があったと思わせてくれなければ、成立しない物語です。
いくらシドニーの自己満足だと言う事が出来たとしても、やはりそれなりに<あの二人ならば>と思いたい。

鵜山演出は、そのあたりにもポイントが置かれていたように思います。
そう、私が初見の日に驚くほどチャールズが天然君だったわけですよ! このくらい天然君でなければ、友人の犠牲で自分が助かって生き延びるとか、辛すぎる人生です。深いわー(初日に気づかなくてさー、ああゴメンなさい)

さて、2幕のシドニーの心の動きの細かさといったら素晴らしいものがありました。

・とにかく心配でパリに駆けつける。
・裁判を見守る。
・チャールズがもし死んだら?と想像する。
・ルーシーの側で力になりたいと思う。けっこう元気。
・助けてほしいと懇願される。
・ルーシーのチャールズを思う気持ちに触れ、おれの入る余地なし、と肩を落として退室しかける。
・行かないで、と言われて「え、おれのこと?」
・でもそれは夢のなかでチャールズへの呼びかけをしてた。ががーん俺じゃない!
・苦しむルーシーを見ていられず、街へふらふら出て行く。俺にできることは何もない。
・バーサッドから牢屋に入れることを聞きつけ、ピカーンとひらめく。嬉しそう。
・ロリー氏としみじみお話。あなたが父親だったら、とか人生の価値について語る。
・活き活きときびきびとチャールズを気絶させて、ミッション完了。
・憑き物が落ちたのかというくらい、静かな心のシドニー。お針子になりたい!人続出。

思い出して書いてるだけで、じわーん泣きたくなります。
自分の命を投げだすだなんて、と思う一方で、この特殊な混乱の時代だからこそ出来てしまうことかもしれません。数万人がギロチンで処刑されたらしいですし。

最後のセリフ、
これは僕が今までしてきた何よりも、ずっとずっといいことなんだ。この先には僕が今まで知らなかった、ずっとずっと素晴らしい安らぎがある。

これが無かったら、ただ犠牲になった人でしかないところですが。いいセリフでした。
これを聞くと、あ、シドニーはむしろ(やり方は究極的すぎるけれど)自分自身も救ったんだと思えるから。

ただし、何と言うか・・・ 英雄的行動、みたいな演出でなかったのが最も良かった点でしょうか。あくまでも、シドニーの個人的な気持ち、ルーシーと、ルーシーの家族との関係性によって起こったことだ、という捉え方が良かったです。聖人化しない視点とでもいいましょうか。

その点でも鵜山さんの物の見方が好ましいなと思いました。これから「ジャンヌ」もあるので、楽しみ。

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