2012/01/15

『TDV』-10 欲望こそがわれらの支配者

苦しみに耐えるための 希望すらなく
渇き切った胸は 飢え続ける


がーっと盛り上がったところから、また一転、渇望する体と心にフォーカスが。
まずは、希望すらなく・・・は、弱ってる風で、きれいめに歌って。
飢え続ける・・・! ここが、いいですね、祐一郎さまー。
きれいに歌うだけじゃなくて、ここ。抑えた様子ながら、言い捨てた雰囲気もわずかに匂わせてましたねー。フンフン。

ある者は 人間や愛を信じる 金や名誉 芸術 勇気を 信じる
そして神を信じるのだ ただ素朴に 奇跡や罪や罰を信じる


だれでも、ひとつくらいこの中に<信じる>ものが含まれるでしょう。
<罪や罰>を信じないって、おお、これは悪魔の言葉か。伯爵さまには善悪も意味をなさない、と。

だが違う

↑ひとつひとつ考えるにつけ、祐一郎の「抑えがたい欲望」への取り組みが分かるわ・・・
<だが違う!>さっきまでの弱さを垣間見せたようなところが、吹っ飛ぶいきおいです。自信たっぷりに力強く、はっきりと、おっしゃいます。

真実はひとつだ
そう 卑しく恥ずべき 欲望こそが 


我らの支配者

堂々と言い切る伯爵さま、すてき・・・ 卑しいのか・・・欲望(=全公演見たい、とか?)
神が支配者ではなく、欲望のままに行動してしまうのだーってことですよね。キリスト教的な言い回しだと思いますが、欲望の忠実なしもべな俺ってことで、了解。すがすがしくもある。

と同時に、祐一郎の声の切り替えで上下左右にぶんぶんと振り回されているところです。
オケの音も、クレッシェンド。またまた、たたみかけ戦法。
我らの/支配者~~~~っ!!

ううん、ぶるぶると震えます。何でもいいわ、欲望のままに生きる!とかお勧めのとおりに欲望の支配下にー。だってだってー。

今こそ ここで 予言をしよう

でもって、またすっと静かになる。一瞬前までの強烈な盛り上がりの余韻にまだ心も細胞も震えているのに。
しかも祐一郎の表情が何でってくらい、やさしくなる・・・
トランシルバニアのお城にいるはずの方が、客席にダイレクトに語りかけてくる感じー。伯爵さまの魅力からは、もう逃げられませんっ

尽きない欲望こそが この世で 最後の神になるのだーーーー

↑このラストがどうなるのか、わかっているのに、わかっているからこそ? どきどきするのを止めることが出来ないの。

祐一郎の顔が、またぐっと引き締まる。神は死んだ、欲望に従え、という伯爵さまの唯一の弱点、唯一の逆らえないもの。欲望。

ロングトーン、来たぁ ですね。テンポの緩急のつけ方といい、メロディの美しさといい、いい曲です。
そこに祐一郎の声がドカーンと入るわけですから、もう、何も思い残すことはないっす・・・ポワーン。

私の細胞も死んで、甦ってるんじゃないかしら・・・

大満足のお顔で万雷の拍手を受け取り、祐一郎伯爵さまは墓地を後にします。
なにやら思うところがあるようで、塔の上で苦しみや絶望感、喜びを全身で発散してた化身に目をむけ、バッサーン!と長くドレープたっぷりの素敵マントを翻して。

観たいものすべてがあった・・・死んでもいいっす。などとつぶやきながら見送るのでした。

それなのに、まだまだ祐一郎の素敵ポイントがあるのが、TDVの恐ろしいところよ。これでもかってくらい、見目麗しい伯爵さまを堪能できて、もう最高っ

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