2012/11/15

『リチャード三世』 かわいそうなリチャード

10/20@新国立劇場・中劇場



雑感。



見終えてプログラムや原作解説に目を通したり、友人から聞いたところによれば、リチャードに身体的障害があることで、<そうならば極悪人でもいたし方ないのだ>という視点だという。おお。そうだったのか!



予備知識なしに、現代の私の視点から感じたリチャードは、愛に包まれず育った皮肉屋で可哀想な男だった



周囲をことごとく不幸に追いやろうとするのも、悪意よりもさみしさを見てしまう



岡本リチャードは見るからに恐ろしい極悪人というよりも、みそっかすの子ども、体のまがった子どものまま、心もまがったまま、大人になってしまった男に見える。



むしろマーガレットのほうが、はるかに悪人らしい論理で周囲を呪って歩きまわっていたし、王の妻もリチャードよりも分かりやすい悪人の論理があるのだった。



リチャードは、権力が欲しいのではなく困らせたいだけに見えたな。



文語調の堅苦しいセリフではなく、やや現代訳といったセリフと振る舞い
衣装が19世紀あたりのものに設定されているのも,王族の威厳よりもみな平等に,人間であることのほうが強調されていたように思う。



リチャードが戴冠したときの椅子は床屋の椅子みたいだし(自分で上下できちゃうって、全く権力とは無縁の・・・)、、赤い衣装も権威などは見えず、わざと堅苦しいコートを着ているロッカーくらいにしか見えないのだった。
(フレディ・マーキュリーの衣装、ビートルズの衣装などを思いおこす)



と言うわけで,親しみやすいリチャードでした。



これはこれで良しなのだと思うのですが、極悪人リチャード、も機会があれば見てみようと思います。とことん手の施しようがなく、同情もできないようなタイプの。



そのなかで、唯一たっぷりと膨らませた他よりもクラシカルな白いドレス(花嫁のようにさえ見える)を着た、呪詛を吐きつづけるマーガレットは、前時代の存在であるということなのでしょうか。うっすら汚れた白いドレスというのも、過去に取りすがる女という感じ。



さて、お目当ての浦井王子はいつ出てくるのかなぁと思っていたら、まずは遺体(人形)
ついで役人? コサキンみたいな風貌になっていました。当然セリフなし。
3幕、しかも最後の最後でフランスからご到着!



明るく公平で爽やかな王子、岡本リチャードと対になる役目なので、それはもう非の打ちどころが無い王子でした。
似合うわ。



浦井くんの周りだけ、うつくしい赤と白の薔薇が咲いているかのよう。すてき。



彼のためなら、立ち上がっても良いと思わせる高潔さと誠実さが全身に溢れていました。



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