2011/02/08

『モーツァルト!』-4 姉弟、自由になりたい

■「終わりのない音楽」 男だったら、



少女時代のナンネール、ぶりぶりの子どもっぷりだったのが衝撃でしたけれど(役と高橋由美子の実年齢との乖離がそうさせると思われます
しかし、成長してからのナンネールの暗黒面が素晴らしかった。



永久に大人にならない子どもはいるかしら? ・・・もし私が男なら音楽を続けた 家でピアノをただ弾くだけ 私に自由はない



息子に、全てを託して 彼を通し生きよう



『M!』主役以外のキャスト、それぞれがヴォルフとの関係を持っていて、彼と同じ大きさで舞台で表現されています。



姉ナンネールは、基本的には父にも従順であり、優しいヴォルフの味方です。その心の底には、「男だったら」自分にも、自由に生きることができたのに、というダークサイドがあるんですね。
だからと言って、腐るわけじゃないのが、長女っぽいなぁ。そういうとこ、あるある、です(私も長女~)



ヴォルフの自由奔放さは彼女にはないから。羨ましくて、ねたみもあって、でも家族として応援してるのも確かです。
このあたりの複雑な心境、すでに手を離れた息子にすがる父を切なく思っていても、優しくそうね、そうねって言ってあげるのが、この場面は印象深いわ。



また、父も、ナンネールに言いながらも、もはや息子が自分の手を離れていくことは止められないと分かっているのに、諦めきれない。
息子をこれからも支配したい気持ちと、大きく巣立ってほしい気持ちの混在した感じ、というのも絡み合います。ただの自分勝手な父親では決してないんだよね、それが分かるのよね。



本心は半分隠した歌詞、でも二人の歌の中には、言葉にだせない暗いものが見え隠れ。うーん、いいデュエットでしたーっ



■影を逃れて



そして、ヴォルフはヴォルフで、愛する家族からも、大司教からも、自分にまとわりつく「影」、自分を利用しようとする者たちから、逃げ出そうと模索始めますね。



育三郎くんのヴォルフを見ていると、音楽の才能というのは第一の問題ではなくて、自分の手で人生を切り開くことへの望みが強いんだなと感じました。
彼の武器は「音楽」であっただけで、恋して、友達と遊んで、そして才能を認められて愛されたい欲求。



青年の主張、1幕最後のこの歌はなかなか色気もありましたっけ。・・・女の肌のように 響きのひだに触れて 僕はふるえる。とかね。
この歌詞について、そうか、官能について歌ってもいたんだねと発見でした(今ごろ・・・ごめーん)



女性の肌と自分の音楽を重ねるって、「生」というか、心臓の拍動というか。



うん、育三郎くんのヴォルフの素敵な点って、こういう歌詞に立体感がある、血肉がついたものとして聴けるんですよね。特別な人っていうより、青年らしい葛藤がすごくリアルに迫ってきます。





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