2004/10/13

『星空から来た犬』ダイアナ・ウイン・ジョーンズ

原島文世 訳 早川書房 2004 4-15-250026-3 
DOGSBODY by Diana Wynne Jones 1975

☆☆☆☆

イギリスとアイルランドの紛争がいまより激しかったころに書かれた。イギリスのおじの家に身を寄せているアイルランド人の女の子キャスリーンと、「星人」ながら刑を受け地球へ「犬」に姿をかえられて追放されたシリウスらが、何かを取り戻す・・・とか乗り越える、お話。

犬にされたシリウスが、産まれたばかりの犬の目からまず世の中を見、成長し、少しずつ星人としてのかつての自分を思い出していく過程が細かく描写されていく。さらにそこへ冒頭で言い渡されたシリウスの刑→謎の「ゾイ」を探さねば再び星人には戻れない、というものがあるのに、なかなか<自分は星人のシリウスだ。ゾイとは・・・>という肝心な点を、「犬」になったシリウスが思い出せないもどかしさが加わる。犬としても処分されそうになるし、ゾイを見つけだす期限もある。切羽詰った気分で最後までぐいぐいと引っ張られた。

約30年前、いや、きっともっと前からイギリス人には親子も個々の人間だということが、ひどく明確で事実としてあるんだなぁと良く分かる展開だった。たぶん話の本筋ではないけれど、だからこそ星人とも対等な友情をもてるのね。

訳者の方の、言葉の使い方も毒入りで良かった。もちろん、表紙絵・挿絵は佐竹美保さんでこちらも素敵でした。


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