2016/12/12

『貴婦人の訪問』11/26.27 4 ゆるせるか?

SCENE9 警察署~通り
♪永遠の友達
靴がぴかぴかになった署長、クレアを逮捕してくれ!と駆け込んできたアルフと対面。ここも秀逸すぎて素晴らしい。

若いときのゲルハルトとアルフ、ゲルハルトは若いころの自分といまだに一体感がある、目を合わせるし手も握る。アルフはちゃんと見つめて笑顔も出るけれど、がっちり手を組みはしない。その辺が思い出との距離感なのね。
絆は~えいーえーん ずっとーしぬまーでー♪ 
ほんとの友達、お互いにその意味がズレていく2幕。

マチルデも言います、この絆は死ぬまで、と。のちにクレアとアルフは死んでも愛は残る、と歌ってますね。

10代の自分を満点の笑顔でハグできるかというと、私はアルフ派かな。赤面するようなことが山盛り、恥ずかしい。
まっすぐ前を向ける面の皮の厚さ、それがゲルハルト。

若きゲルハルトの俵さん、アルフは寺元さん、で、今さんと祐一郎。
まだアルフはゲルハルトのこと友よ!って思ってるし、さわやかだし。
二人の間の思い出はひたすら美化されて、いい四重唱よね・・・

今さんと祐一郎が並んで立つと嬉しくて、涙出そうになるんですが。これって年ですか。

SCENE10-11 警察署・市庁舎~通り・教会
♪奴を追え
ゲルハルトが電話に出ると、クロヒョウが逃げ出したから捕まえると銃とガスマスクで楽しそうに武装する。怖い。
正義のなのもとに害獣を殺すんだ、という市民たち。アルフにはそれが自分へ近く自分へ向けられるものだと直感で分かっているのだよね。

市庁舎。
クレアを逮捕させろ! と市長へ訴える。彼も銃を持つ。
すると、法廷でのお前はひどい、となじられるアルフ。市長も偽証して同じく罪を持つせに! なんという・・・キィー

なおも銃とガスマスクの市民から逃げるアルフレッド。

教会。
銃をもつ牧師。
祈るがいい! 自分の魂を救え、と助言するそばで“新しい鐘の音”が。葬送曲のようなフレーズが入って、音楽も盛り上がってくる。こわいこわい。
中山牧師の叫び、逃げろ!信じる者も信じぬ者も救いたまえ、って言ってたよ、ね。

牧師は、金に目がくらみ鐘を新調したことを罪だと思っているからこそ、祈りをささげてるのかと思われ。この叫び怖い。赦されるだろうか。

ガスマスクの市民ら、通路にも降りてくるし、見てる側にも銃口が向くので怖いのです。

銃声。ダーンダーン!

SCENE12 ホテル“黄金の天使”の前の広場
ここで最も偽善者らしくなってしまうのが、校長先生。殺すしかなかったのです!とクレアに叫ぶのを、市長が制止。

市長は結果がすべてだし、市民が守られたことが最も大事な現実主義なんだけど、校長は自分のことをヒューマニストだと言う分、言えば言うほど偽善的に聞こえてくる悲劇。ここまで熱くなるのは、その殺意がアルフレッドに向けられる恐怖を感じていたからこそよね。

弔いの歌をなぜ歌う! だいぶ荒れてるアルフ。自分の時もそうやって歌うのだろう、と叫んで、銃を振り回しながら通路降りて駆けていく。

SCENE13 コンラーツヴァイラーの森
♪愛の嵐
今の俺ならなんだってできる!
と言って銃の弾を送るアルフレッドの手つきが慣れた感じで美しく見惚れているのは内緒
銃の扱いができる・・・猟をするのか、この国には徴兵制度があるのか。

殺すんじゃないかっていう怖い顔でクレアに銃口を向けてます。どきどきする。
でも出来ないよ。銃をおろすと、

やって、撃ってよ!と銃を取って死のうとするクレアが哀しくて健気で痛々しいの。
ホテルでアルフに「死んでよ~♪」って高みから歌い上げた強いクレアじゃない。それはやっぱりオフィシャルなクレアというか、必死に作り上げた強い女のクレアだったのね。

心はもうアルフレッドに殺されたのだから、身体もあなたが始末すればいい、とでもいいたげ。書いててつらい。それが望みなの・・・? どちらかが死ぬしかないって思ってたのかな。

もみ合う二人、全身で殺して!と叫ぶ。そのあまりの激しさに、やっとどれだけ彼女を傷つけたのかを知るアルフ。ガーンって感じだ(ニブイな)

愛とは命そのもの~支える絶望さえも 信じあい許し合う~強い絆~♪(若い二人)
なぜよみがえる (今のクレア)
消えた愛の(なかから?)(今のアルフ)
心躍らせ心奪う 愛は胸を乱す嵐 (今のクレア)
友情は消えても残る愛は 背負った罪を癒してくれる(今のアルフ)

無くした翼 取り戻して 恨みもなく支え合えたら (今の二人)
たとえ地獄の底にいても~♪  “続き、なんだっけなー 

並んで飛び立つ鳥のように寄り添いあえたら~♪
羽ばたけもう一度 いつかみた青空を目指して♪

記憶もここまでじゃ。出会った頃を思い出して、あの頃のようになれたら、とデュエットします。自由~♪っていう綺麗なとこもありますよね。超絶に美しい四重唱をずっと堪能したいのよう~、だからCD出して!

「♪愛の嵐」美しすぎて言葉もないや。こんなに美しい音楽が生まれる二人なのに、道が分かれてしまったなんて。
たおやかで美しい音楽の最後、頑なな心溶かし憎しみも消せるきっと♪
愛は許す(若いクレアだったかな) 赦せるか?(今のアルフ)

アルフが「赦せるか~♪」と尋ねる。「聞いてみたら~♪」すごい会話だなって毎回思います。もしかして、自分の心に聞いてみたら?ってこと? 深い・・・?

過ぎたことよ~♪ (今のクレア)
「赦してくれるのか」
「死んでも、赦さない!」

ぎゃあああああ。
「過ぎたことよ」っていうのが、遠い過去だからもう良いのよって意味じゃなくて、決定的に取り返しがつかないのって意味になるのね。

見てたとき、「死んでも赦さない」っていうクレアが本当に今にも倒れそうなくらいギリギリの場所に立ってるように思えてました。
クレアの命・尊厳を取り戻すことは赦したところで不可能で、赦すと言ってしまうとこれまでの彼女の歩みがすべて否定されてしまうかのように感じていたんじゃないかなって。

私、祐一郎LOVEだから・・・うっかり赦してもらえないのかなって思ってしまうんだけど、事情だけ聴いてたら「赦さない」って当然だもんねー。
赦すかどうかは被害者側が自分の気持ちをどうしたいかってだけの問題であって、加害者は赦される/されないにかかわらず、罪は消えないのです。甘えるな、です。

で、1幕終わり。
なんという緊迫した状態での幕間。お手洗いへ駆け込む元気もすぐに出てこず、しばし席で放心してました。つらい。つらすぎる。はぁぁぁ(すごい作品、カンパニー)

0 件のコメント:

コメントを投稿