2016/07/28

『BENT』7/17 いい演技でした、そしてお腹痛かった

@世田谷パブリックシアター

演出/森新太郎
作/マーティン・シャーマン

マックス/佐々木蔵之介 ホルスト/北村有起哉
グレタ/新納慎也 ルディ/中島歩
ウルフ・護送列車の囚人・伍長/小柳友
収容所の大尉・隊員・護送兵/石井英明
親衛隊の中尉・カポ/三輪学
護送列車の将校・隊員/駒井健介
フレディ・護送列車の囚人/藤木孝
声の出演:武田浩二、藤家剛

ゲイの男性二人がナチスの収容所で出会う。
わずかな希望を捨てずにいれたのは、お互いがいたからかもしれない。
少しずつ状況が悪化していく構成、毎日「死」へ向かっている怖さ。お互いを見てはいけない、目を合わせてはいけない。でも、感じることはできる! 抱きしめられるし、愛し合える!
こんなにまっすぐに、生きてるぞ、この心は全く自由だ、という叫びが人の心の強さを見せてくれた。

そして、ナチス側にだってゲイはいるし、ひとりひとりはごく普通の市民だったはず。システムのなかにいると、弾圧すればするほど、反撃が怖くてさらに弾圧していってしまう弱い心。監獄実験とか思い出した。役割を進んで演じてしまうっていうやつ。そのほうが楽だものね。こわい。

こういうことが起こったのだということが、そもそも恐ろしいうえに、でもこのシステムに組み込まれてしまったら、自分が生き残るため虐殺やリンチにかかわってしまう可能性はゼロと言い切れない怖さが浮かぶ。

遠い昔の話ではなく、今まさに起こりつつあるのでは? 最近の社会状況を思えば自然に感じられるのも、また、上演すべき時に演じるべき俳優がいてくれたのも何だかぴったりすぎだ。

佐々木蔵之介ファンの友人に相乗りで日帰り観劇してきたのですが、価値はあったわ。
蔵之介ってこんなに上手かったんだね・・・(忘れがち) ああ、もっと蔵之介にいい脚本出してよ!(たぶんなまじ顔がいいし硬軟行けるから重宝されちゃうんだ。疲れた刑事とか正義感あふれるハンチョウも殿も好きだけど、うわぁって圧倒されるような役もいいでしょ?)

演技的ハイライトな直立不動で二人が言葉でセックスするシーン、哀しいし素敵だった・・・・
快楽じゃなく、抗議というか、俺の心も体も全くすべて自分だけのものだ!と。
ちなみに蔵之介のほうがよりセクシーだった。ふふ。セリフのなかでも「おれ、セクシーだから」みたいなのあったっけ。可愛い。

北村有起哉はイケボイスもほっそり絞った体も堪能しました。
あまり感情的にならない落ち着いた人なんだけど、心に秘めたものは実は熱くて、それがマックスを動かしていく。と同時に、冷静に収容所内で生き抜こうと思っていたホルストは、自分以外の人を思う気持ちを思い出し、マックスのために生きようと変化していく。

もし、以前のように冷静でいられたらあの時に死ぬことはなかったろうと思う。でも死期は早まったが濃く生きたのかも。

世を斜めに見て恋人ともきちんと向き合わなかったドラ息子のマックスが、日々生死を綱渡りする収容所で出会ったホルストから、「お前は誰だ」「自分を偽るな」と言われ続けたラストのあの行動、うわああん!
マックスはゲイとして収容されるのではなく、ユダヤ人として収容されることにしたのだ。もちろんユダヤ人などではない。そして☆印の囚人服を着ている。

ホルストは感電死か銃で撃たれるかのどっちも死、の選択で、収容所の人間に立ち向かって銃殺されるほうを選んで死亡。死体穴に入れろって言われて一度は無表情にホルストを放ったマックスが、ついに自分はどう「生きる」のかを選択し、ホルストの遺体から“同性愛者のピンクの三角”印の服を取って、着替えて高圧電線に突進していたのだった。あああ。

現象としては自殺、になるのだけれど、他人に生死を決められることを拒否した、生を表現する(結果としての)死である。

・藤木さんいつも素敵すてき。ゲイのおじさん役でした。いい声。

・新納慎也さん。
数日前に大河ドラマ「真田丸」の秀次役で見ていたので、女装グレタは あ、通常営業にお帰りなさいという感じ。歌があったのは知らなかったのでうれしかった。
とても美しかったです。かくまったマックスとルディを追い立てる目がさみし気でした。いい声。

・中島歩
ああー朝ドラ「花子とアン」で駆け落ちする大学生のひと・・・? すごく上手になった。リンチ死するまで、おしゃべりで健気なダンサー君。あの時はイケメンだけしか取柄がなさそうだったが、人は変化するものですね。普通のかわいい子が死んでしまった・・という悲しみあふれました。

森慎太郎演出、まだ二つめ(前回は「ビッグ・フェラー」)だけど過剰になりそうな題材をもってくるけれど、過剰過ぎないところで勝負してる感じがします。スーパーマンじゃなく普通の人たちと歴史の大きなうねりの関係性というか。
また森演出のものを見てみたいなと思います。

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